国交省は「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する中間とりまとめ(案)」に関する意見募集を行なっています(2024年1月24日18:00締め切り)。いわゆるパブコメです。
「中間とりまとめ(案)」の全体的な内容としては、単身高齢者の増加や、コロナ禍で顕在化した不安定居住の問題を念頭に、賃貸市場の環境整備を軸にしつつ入居後の支援や地域とのつながり、空き家活用などの方向性が示されています。
個人的に継続的に関心のあるテーマなので、意見を提出しました。このnote更新時点ではまだ締め切りまで1日あるので、みなさんぜひ意見を提出しましょう!私が提出した意見と補足コメント(雑感や参考情報など)を記載しておきますので、何かの参考になれば幸いです。
▼ここから、私がが提出した意見と補足コメントです。以下では、グレーの網かけ部分が提出した意見で、地の文が補足コメントです。
(補足コメント)
そもそも住宅確保要配慮者がどれほどいるのか?というのはけっこう難しい問題です。ざっくり言えば住民税非課税世帯なら1200万世帯程度ですし、相対的貧困なら2000万人程度です。もちろんこの中には持ち家があったり、住宅に困っていない人もいるでしょう。
ちなみに、国土交通省国土技術政策総合研究所が「住宅確保要配慮者世帯数推計支援プログラム」というのを開発し、自治体に配布しており、各自治体はこれを活用しながら種々の計画を立てている(はず)。
ところで、これは平山洋介先生が2017年の住宅セーフティネット法改正にあたって指摘されていたのですが(※)、住宅確保要配慮者数の試算は「異常といってよいほどの圧縮」がなされているということです。当時国交省が示した試算では約28万世帯とされていますが、要するにこれは低額所得者世帯などのうち低レベルの居住水準「かつ」高家賃負担の世帯のみを対象とするもので、「かつ」ではなく「または」で計算すると12倍以上にのぼったそうです。
こうした条件の操作でこれだけ違いが出てくるわけですから、どの範囲を住宅確保要配慮者として捉えるかをまず示すことは重要だと思います。加えて、いろいろな属性の人をごちゃ混ぜにして「住宅確保要配慮者」としているので、それぞれの規模やニーズ把握も重要でしょう。
(一方で、※の論考の中で平山先生は、住宅困窮者をカテゴリーで分類することで対象を狭めたり、特殊化したり、脱政治化する弊害も指摘していました。私の場合、ホームレスや不安定居住などに視点を絞って意見を書いているので、留意しないといけないと思いました。)
※「住宅保障政策を問い直す」平山洋介『世界』第897号(2017年)
(補足コメント)
例えば「OECD Affordable Housing Database」を見てみてください。Social Rental Housing Stockの日本の値は低水準です。ドイツも日本と同じくらい低水準ですが、ドイツの場合はPublic Spending on Housing Allowancesはトップレベルです。日本の場合は公営住宅も多くない上に、公的な家賃補助も生活保護の住宅扶助か住居確保給付金くらいなので、どちらも弱い。公営住宅は基本的には今後増えないですが、そのことを所与の条件とは考えない方が良いと思います。
(補足コメント)
いわゆるネットカフェ生活者は行政用語的には「住居喪失不安定就労者」と言いますが、過去に厚労省や東京都が調査を行なっています。ただし法的な根拠もないので、単発的な調査にとどまりました。住宅セーフティネット法の2017年改正時には、参議院の附帯決議にて、「〜、適宜調査を行うなど…」と調査についても一言書かれましたが、その後特別な調査は行なわれていないと思われます(私の知る限り)。
可視化されにくい、広義のホームレス状態の把握については、後藤広史先生の解説「『見えない』生活困窮者-どこに居て、なぜ可視化されないのか?」や、そこで引用元されている「不安定な居住状態にある生活困窮者の把握手法 及び支援の在り方に関する調査研究事業 報告書」なども参考になるかと思います。
(補足コメント)この存在感の薄い家賃低廉化制度について、2020年度の実績についてはこの記事を参照しました。「令和2年度セーフティネット住宅 家賃低廉化補助=全国で僅か208戸の実績=」(全国借地借家人組合連合会ウェブサイトより)
最近の利用実績(金額)は見つけられず…わかる人がいましたら教えていただきたいです。
(補足コメント)
いわゆる穴埋め屋についてはこのあたりの記事を参照ください。「空き物件、困窮者で穴埋めして転売…「新たな貧困ビジネス」弁護士ら、生活保護の悪用に警鐘」東京新聞(2023年2月17日)