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公園の白昼夢

​​本日、仕事の休憩中に公園でアンダーグラウンドのパンフレット内の淀川長治さんのレビューを見ながら【ははーっ】と膝を打っていた
​​公園では、小学生と思しき子供達が大勢でサッカーをしていた
​​(うぜー、きめー、わっきゃー)など奇声を発しながらサッカーをする彼らに【楽しんでいるな】と聞いていた
​​パンフレットを堪能した私は休憩終了15分前になり、公園から施設に戻ろうかと思っていた
​​その時、彼らのうちの一人のボーダーの長袖の少年が座り込み膝を抱えて俯いていた
​​周辺の友達が声をかけるが微動だにしない
​​怪我はしていなさそうだ
​​おそらく、サッカー中になんらかのことが起きたのだろう
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​​彼は膝を抱えながら、青と透明な緑色の沸き立つオーラを発しているように見えた
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​​私がボーダー長袖少年の横を通り過ぎ道路を歩きながら様子を伺っていた時に、ボーダー長袖少年は突如立ち上がった
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​​ボーダー長袖少年は、己より背の高い帽子を被った少年に突進し、両手を交互に振り回すようにスイングしながら帽子少年に無言で殴りかかっていった
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​​周りがざわつき、二人を注視していく
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​​帽子少年は身長を活かして、手を伸ばし彼の頭を押さえて余裕ぶって【低学年がなめんなよ】といった様子でボーダー長袖少年の頭を押さえ続ける
​​ボーダー長袖少年は構わず、左右のスイングを繰り出し続ける
​​右の殊更大きく振り回したスイングが帽子少年の顎の下、首と顔の中間あたりにクリーンヒットした
​​【パバチャ】という音が響いた
​​あたりは静まると共にボーダー長袖少年は公園を去ろうと、帽子少年に背を向けて歩き出した
​​帽子少年はおぼつかない歩行で彼を追おうとするが途中で立ち止まり、立ち尽くす
​​ボーダー長袖少年の後ろを、一人の友達が追いかける

​​周囲の友達は少し時間をおいて、再度ざわつきながらブランコや自転車にと、それぞれの遊びを再開し始める
​​一部始終を公園の外から見ていた私は、【ほほーっ】と言ってから施設へと歩を進めた

映画を見ていたような気分だった
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​​私自身はケンカは嫌いだが、人間の本気で怒ったときのマグマのようなエネルギーによるヒリヒリした空気と、それにぶつかって予期せぬ何かか起きる前の張り詰めた時間を輪の外側から見るのが好きだ
​​その独特の雰囲気を味あわせてもらったボーダー長袖少年には礼を言いたい
​​YouTubeやゲームで遊び、露骨に大人に気を使い、言葉遣いも丁寧すぎるほど丁寧で、愛想笑いするのが今の子供達なのだと思っていたのだが、青空の下で本気と書いてマジのケンカをして、空気を読まず思いっきり千堂武士ばりの右のスイングでぶん殴ったボーダー長袖少年のような子がいるのを見て【世の中捨てたもんじゃない】と思った
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​​また、帽子少年にはもっと頑張ってもらいたい
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