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広島県のデジタル人材育成の取り組み③ 学生編 パート1

◆ 就業意識・広島県在勤を意識したデジタル人材育成の取組み


 
広島県では社会人・学生含め幅広くデジタル人材育成の施策を講じています。例えば、後述する「ひろしまサンドボックス事業」においては、デジタルネイティブ世代のAI人材育成プログラム”ひろしまQuest”という取り組みを実施し、Eラーニングやデータ分析コンペティションおよびハンズオン勉強会などを駆使して、産官学連携で課題解決型演習を実施している事例です。いわゆる先端デジタル・IT人材育成の一つの事例と言えるでしょう。
 
このような先端デジタル・IT人材のスキルや経験を習得するデジタル人材育成の取り組みに加え、就業意識の向上を目指したいわゆる裾野を広げるキャリア教育にも県として取り組んでいるのが、広島県の産官学連携のデジタル人材育成の特徴です。
 
今回広島県のデジタル人材育成を調査・研究する中で広島県および一般社団法人広島県情報産業協会が育成のアクターとして活動されており、行政(広島県)や産業・企業(広島県内の企業)およびコミュニティ(広島県情報産業協会)と連携した取り組み「パッケージ型インターンシップ」についてインタビューをさせて頂く機会をいただきました。本節では「就業意識の向上」と「県在住・在勤」を意識したデジタル人材分野のキャリア教育の取り組みを紹介したいと思います。
 
 

◆ DX・ITも進路の選択肢となりうるパッケージ型インターンシップ


 
広島県では、雇用労働政策課主導にて、学生を対象とした広島県内の民間企業への就職活動をサポートしています。「ひろしま就活応援サイト Go!ひろしま」のポータルではひろしまの企業で働きたい生徒・学生を対象として、広島県へのUターン、Iターンなどでの就活や地元での就活を進める上での情報を発信。また、2021年(令和3年度)から新たなサポート施策として「パッケージ型インターンシップ」が開始されました。
 
皆さんがイメージされる企業に赴き就業体験を積むインターシップとは一味違い、業界の魅力・広島県で働く就業意識を向上することを目的として、地域振興や業界・企業研究をテーマに、基本的には1社当たり1日の実習を県内3社程度(3日)と、広島県インターンシップ促進協議会が提供する事前学習(1日)+事後学習(1日)を組み合わせた(=パッケージングした)インターンシッププログラムとして設計されています。県としては、新型コロナ禍で民間企業サイドがなかなか複数日程学生をインターンとして受け入れることが難しいという課題、一方で学生も企業名だけでなく仕事の中身で会社を選んでほしいという思いもあり、企業と大学・学生の橋渡し役を県が担い、プログラム設置に至ったとのことです。
 
前述したとおり、このパッケージ型インターンシップは「インターンシップ」と掲げているものの、いわゆる企業で仕事体験をするインターシップ(採用と大学教育の未来に関する産学協議会で合意したタイプ3「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」)ではなく、タイプ2「キャリア教育」に類型されることも県庁は理解をしていますが、「就業意識の向上」「広島で働く」という目的で、学生に挑戦をしてもらえるように、あえて「インターンシップ」という言葉を使っていることも考え抜かれた制度と言えると思います。「社会を知る」「仕事を知る」「広島で働くことをイメージする」という観点で、大学1・2年生を主とし、IT業界に関わらず県内の食品製造業や住宅・建設業界含めBtoBの幅広い業界を理解ができるプログラムになっています。本稿ではデジタル人材育成という視点での取組内容の紹介をしたいと思います。
 

◆ パッケージ型インターンシップによるデジタル人材育成事例


 
デジタル人材育成という観点では、下記をテーマに広島県として学生にキャリア教育コンテンツを提供しています。素晴らしいのはいわゆるIT企業(システム開発・保守会社、ソフトウェア、ハードウェア会社など)だけがデジタル人材活躍の場ではなく、いわゆるユーザー企業(事業会社)にも活躍の場があることを伝える場を提供していることです。例えば、下記の「実施事例①:DX時代、ますます拡がりをみせるIT人材の活動領域をリサーチする」では建設業界のIT職種に焦点を充てて、事業会社でできるIT人材の活躍を理解できるコンテンツを提供しています。デジタル人材育成学会の角田教授の著書「ユーザーシフト」の中でも、IT人材の量と質の課題解決の方策として、「ユーザー企業におけるIT人材の総数を増やすという観点では、この新卒採用が中心的な施策」と述べていますが、学生自身がユーザー企業でもデジタル・ITを作る・活用する仕事があることを「知る/理解する機会」つまり認知する機会がなければ、学生の選択肢になりえません。
 
県庁職員の皆さんや広島県インターンシップ促進協議会が、単にいわゆるIT業界を紹介するだけでなく、ユーザー企業のITの仕事を紹介する教育の取り組みをされていることにデジタル人材育成の本質を理解されていると感じています。
 
 
【デジタル人材育成に関連する広島県パッケージ型インターンシップ】
 
実施事例① DX時代、ますます拡がりをみせるIT人材の活動領域をリサーチする
キミのITスキルが発揮できるのは大手IT企業ばかりじゃないはず。DX時代、県内では幅広い業界でIT人材の活躍の場が拡がっています。意外な業界と出会えるチャンスです。
[参加企業] 株式会社広島情報シンフォニー,復建調査設計株式会社,大興グループ(株式会社ダイコーIWS)
 
実施事例② 広島で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)を考えよう!~IT業界研究~
IT業界に関する講義と,複数社の若手社員(入社3年目程度)との座談会で、実際にIT業界で働くことをイメージする業界研究を行いました。
[参加企業]広島県情報産業協会会員企業
 
 
[参考]ひろしま就活応援サイトGo!ひろしま「パッケージ型インターンシップ情報」

 
 
実施事例②「広島で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)を考えよう!~IT業界研究~」に関しては、広島県情報産業協会が主担当となって進めたパッケージ型インターンシップです。本編の実習ではIT職のプロフェッショナル・専門家の方々が直接講師となってIT業界やDXの概要とともに、広島の産業構造とITの仕事との関係など地元就職を意識した講義もあるなど県とコミュニティがタッグを組んだ”広島らしい”プログラムを提供しています。
 
また実際産業協会側で担当した方にお話を伺うと、講義に加え、社会人3年程度の若い社員の方々と受講生の懇談会も非常に好評だったとのことでした。本プログラムには県外の学生の参加者もおり、業界や職種を知るだけでなく、広島で働くことの魅力を感じたなどの声もあったとのこと。地域×デジタルの人材育成という観点でも非常に魅力を感じるプログラムであると思います。
 
参考資料:
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/458015.pdf
 
 文責:デジタル人材育成学会副会長 中村
 

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