見出し画像

【微ホラー】七不思議、靴

あれは、わたしが小学生の頃でした。当時の小学校では七不思議が流行っていました。よくあるやつですよ。二階の女子トイレに花子さんが出るとか、桜の木の下には死体が埋まっているとか。なんのオリジナリティもないものばかりでした。ある一つを除いては。
その、7つ目の不思議は、明らかに異質なものでした。
「屋上で靴を脱いでから自殺すると、死体は跡形もなく消え去り、靴しか残らない。」
こんなそこはかとなく不気味な不思議、小学生に考えつけるでしょうか?
わたしは、先生たちが自殺を防ぐために創り出した不思議なんじゃないかなって思っていました。子供の頃は、自分が消えてしまったら…とか考えたら妙に怖かったのです。
しかし、今は、というより小5に起こった出来事以来は、そうは思えていません。

-------

その当時、わたしには友達があまりいませんでした。絵を描くのが大好きで、いつも絵仲間と下手っぴな絵を描き連ねていました。
そんな中でも一人、特に仲が良かった子がいました。名前を美奈子ちゃんと言います。
美奈子ちゃんは、いつもお母さんの絵を描いていました。他の子が好きなアニメだったり、風景だったりを描いている中、常にお母さん一辺倒でした。
一回、そのことについて質問してみたことがあります。
彼女の返答は、
「お母さんが好きだから。」
でした。いくら好きでも、そんなにずっと描き続けられるのでしょうか。いつか飽きが来るのでは。そう思ってわたしは美奈子ちゃんの絵を見続けました。 
お母さんの法則が崩れたのは、ある夏の日でした。その日、いつものようにみんなで額を合わせて絵を見せ合っていたところ、美奈子ちゃんの絵がなにか不思議でした。赤く塗れた服を着た女の人。しかし、顔はお母さんではありませんでした。
わたしは、今話題になっている花子さんだなと思いました。
「花子さん、上手だね。」
「うん!」
いつになく嬉しそうな美奈子ちゃん。わたしも、美奈子ちゃんが嬉しそうで嬉しかったです。
しかし、昼ご飯を食べたあと、トイレに行ったとき、個室の中から奇妙な声が聞こえました。美奈子ちゃんが何者かに話しかける声でした。
「花子さん、わたし、死にたいの……うん……いい…別に………」
何やら深刻そうでした。わたしは怖くなって、トイレから飛び出しました。
そして、美奈子ちゃんを待って、さりげなく聞いてみようと思い、トイレの入口で待つことにしました。
しかし、いくら待っても美奈子ちゃんは出てきませんでした。いくらなんでもおかしい。わたしはトイレに戻り、個室を覗いてみるも…そこに美奈子ちゃんはいませんでした。
すぐに先生に報告し、総出で捜索しましたが、美奈子ちゃんは見つかりませんでした。
次の日、清掃員さんが屋上に行ったとき、美奈子ちゃんの上履きがぽつんと柵際に置かれていたそうです。

------

これが何を意味するのかはわたしにはわかりません。美奈子ちゃんは今も行方不明のままです。
あなたも、屋上の靴には気をつけてくださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?