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【DCM Atlas 体験記 vol.2】 Public 代表取締役 松本 拓也氏 (第1期 '23 採択)

DCMベンチャーズ(以下、DCM)は、2023年1月からスタートしたシード投資プログラム DCM Atlas の第1期を、2023年6月に無事修了しました。
本連載では、DCM Atlas第1期('23)に採択され、5ヶ月間のプログラム期間を終えた3社のDCM投資先へのインタビューを掲載していきます。
第2弾は、ステルスのため詳しい事業内容は伏せますが、toC向けのコマースアプリを提供しているPublic株式会社の代表取締役 松本拓也氏です。

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応募のきっかけ:事業に対する考え方と起業家との向き合い方に共感

Public株式会社 代表取締役 松本 拓也
株式会社ブラケット(現STORES株式会社)に新卒入社し、STORES.jpの開発に従事。その後、株式会社バンクにて、買取アプリ「CASH」、後払い専用旅行EC「TravelNow」を開発。2021年2月、Public株式会社を創業。

Public株式会社サービス資料より抜粋

💬 DCM: Publicの創業理由について教えてください。
💬 松本さん:ソーシャルネットワークという映画で表現されているインターネットの世界に感化されて、『インターネットを用いてより多くの人々に利用されるtoCサービスを作りたい』とずっと考えていました。STORES.jpやCASHの開発を通じて、コマースの業界に大きな興味を持ったのと同時に、実際の現場を見て販売者が抱えている課題感に着目して、現サービスの提供を決意しました。実は今私たちが提供しているサービスは、Publicとしては5つ目のサービスになり、過去には2日で閉じたものもあれば、3か月やって閉じたものもありました。

💬 DCM:過去にローンチしたプロダクトと比べて、今のプロダクトでアクセルを踏めそう、と感じた決め手はありましたか?
💬 松本さん:
MVPをリリースした時の反応が明らかに違いました。月次GMVが少しずつ伸びてきて、販売者を中心にユーザーからのポジティブな声もいただくようになり、事業として次のステップに行けるのではないかと考えるようになりました。自分がその未来を強く信じられたかどうか、というところが一番大きかったかなって思います。

💬 DCM:Atlasの応募時には既に今のプロダクトに初期ユーザーがついている状況でしたが、どういった経緯でDCM Atlasに応募したんですか?
💬 松本さん:
事業を進めるにあたってさらなるグロースを求めていく中で、資金調達を考えるようになり、その中でたまたまDCM Atlasに関する本多さんと原さんのDIAMOND SIGNALさんの取材記事を拝見して、直感的にDCMさんにご出資いただきたいと強く感じたのを覚えています。そこから過去の本多さんのNewsPicksの記事などを拝見して、事業に対する考え方や起業家に対する向き合い方に共感して応募させていただきました。

DCM Atlasのウェルカムディナー+決起会

DCM Atlasの位置づけ:自分自身で気づきを得る場所

💬 DCM:応募時はDCM Atlasのプログラムに対してどういったイメージを持っていましたか?
💬 松本さん:シード期のプログラムではY Combinatorを一番最初に想起しました。インタビューで本多さん、原さん共に『アクセラレーター』ではなくあくまで『シード投資プログラム』と表現していましたが、プログラムの内容自体はYCのように、採択企業各社が決まったセオリーやレールに沿って、コミットメントに忠実に事業を進める形を想像していました。

💬 DCM:YCでは3か月のプログラム中、週次で5-7%の成長率のコミットメントを求められることは有名ですよね。DCM Atlasのプログラムは応募時と比べて印象は変わりましたか?
💬 松本さん:そういう意味だと、私自身がYCに参加したわけではないので認識が正しいかはわかりませんが、当初想像していたYC的なインテンシブさや数値に対するコミットメントの部分よりは、Value propをしっかり見定めることに重点を置き、隔週(時には週次)のミーティングでいただいたアドバイスから自分自身で気づきを得ることが多かったです。結果的にValue Propを明確化する事がその後のサービス成長に大きく影響すると認識しているので、グロースを追い求める前の段階で Atlas に参加できたことは大きな意味があったと感じています。

中長期的な成長を見据えたValue propの再定義

💬 DCM:振り返って、Atlasに参加して1番良かったことって何ですか?
💬 松本さん:プログラムに応募した際のサービス資料とプログラム終了時の資料とを見比べていたのですが、良い意味で内容が大きく異なっていました。半年前の、サービスに対する解像度が低いまま事業を進めていたら、短期的なグロースは見込めていたと思いますが、長期的な部分で成長に曇りが出てきたのではないかと改めて感じています。『中長期的にサービスが成長していくうえで何にフォーカスすべきか』、という部分が自分たちの思考から抜けていた中で、ユーザーへの価値(Value prop)を改めて再定義するいい機会になりましたし、Value Prop は常にアップデートしていくもの、だという視点を得られた事で、Atlas 終了後も常にユーザーに対する価値を研ぎ澄まし続けることができています。

💬 DCM:プログラムの序盤は特に、『松本さん自身は今のプロダクトを誰のためのどういう場所にしたいのか』という議論をメインで話してましたよね。
💬 松本さん:そうですね。具体的にここをこうしたほうがいい、という『指摘』を受けるのではなく、私自身が持っていなかった角度からの『問い』をいただくことが多かったように思います。ここでの議論は最短でPMFにたどり着くための大きな役割になっていますね。

プロダクトエキスパートワカマツによるプロダクトセッション

実際のValue propの変化:販売者目線から購入者目線へ

💬 DCM:プログラムを通して、実際にPublicのValue propはどのように変化しましたか?
💬 松本さん:一番大きな変化は購入者側の価値を大きく意識するようになったことです。初期のタイミングでは、販売者目線でのプロダクト作りにフォーカスをしておりましたが、1番初めの原さんとのミーティングで、『購入者に対する Value Prop をより研ぎ澄ますべき』、とアドバイスをいただき、思考の方向性に大きな変化があったことを覚えています。

💬 DCM:こうした議論の内容を、実際の事業進捗にどのように反映していましたか?
💬 松本さん:まず、販売者から購入者への視点のシフトとして、ユーザーインタビューの内容にすぐに反映しました。元々はユーザーインタビューの8割は販売者向けでしたが、DCM Atlasを通じて購入者への価値に向き合う時間は圧倒的に増えましたね。プロダクト自体もユーザーがしっかりとサービスの価値を感じられるよう、再設計を行いました。

💬 DCM:1月、2月は購入者の中のコアユーザーに関する解像度を高めることに時間を使っていましたよね。
💬 松本さん:
そうですね。具体的に、元々『なぜユーザーが我々のプロダクトを通じて購入するのか』、という部分を深く理解できておらず、解像度がかなり低い部分でしか考えられていませんでした。ユーザーインタビューを通じてより突き詰めて利用者の声を聴くことで、アイテムを購入しなくてもサービスに留まる人々が見えてきたり、よりユーザーを理解することで、長期的にサービスを利用いただける"新たな価値"の発見につながりました。

💬 DCM:視点が変わったことにより、元々追っていたKPI等にも変化はありましたか?
💬 松本さん:
元々はGMVやオーダー数のようなコマース事業において一般的なKPIのみを追っておりました。Atlas 以降はよりサービスの価値が反映される KPI に着目して、現在の状態がしっかりと価値を感じられる状態になっているのかを常にチェックしています。当時は数値を見ながら事業/プロダクトの意思決定に反映する、という視点を持てていませんでしたので、こうした数値に対する考え方というのもAtlasを通じて学んだことの1つでした。

既存サービス運営とValue prop見直しの両立の難しさ

💬 DCM:逆にDCM Atlasのプログラムを通じて苦労したことはありますか?
💬 松本さん:私たちのプロダクトはプログラム期間中も稼働しており、多くの決済が行われている状態をたった2名のチームで運営をしておりました。提供しているプロダクトの価値を担保しつつ、Value propを含む事業戦略を考えていくことに難しさを感じました。プログラムを通じて『Value propを研ぎ澄ます』というのが一つの目標でもあったので、1度運営中のサービスに関しては、プログラムが始まるタイミングでしっかりペースダウンしてもよかったかもしれません。

💬 DCM:プロダクト運営をストップせずに続けていた理由はありましたか?
💬 松本さん:Value propを再定義しながらサービスの運営をする中で、とある分野のユーザーからお問合せが増え、彼らをオンボーディングさせることに多くの時間を割いたことがありました。サービスとしては、まだまだ Value Prop が明確ではない状態で大きなチャンスだと思い、グロースに目を向けサービスの拡大を行ったのですが、後の1on1 で原さんから、『長期的に勝つためには今それをやるべきか、もう一度考えたほうがいい』と言われたのを鮮明に覚えています。振り返ると、『長期的な価値』という部分を明確化するのであれば、プロダクト運用は一旦止めてでも、Value propをしっかり研ぎ澄ますために時間を使うべきだったな、という反省があります。

代表取締役CEO 松本さん(右)と創業エンジニア 大竹さん(左)

今になって効いているプロダクト設計の意義

💬 DCM:松本さん自身がすごく開発力のあるエンジニアで、『この機能を実装する』と決めたら翌週にはプロダクトに反映されていて、いつも驚いていました。もう1名のチームメンバーのエンジニアとは、開発時にどのように連携していたんですか?
💬 松本さん:役割自体はかなり明確に分担されていたように思います。技術面で絶大な信頼がありまして、事業やプロダクトの方向性に関する意思決定は私が行い、技術面は彼がバックアップする、というような考え方を互いに持っているので、開発自体はスムーズに連携が取れていました。Atlas を通じて、今後チームが拡大した際の開発体制やプロダクト開発に関するアドバイスを多くいただけたのも、大変大きな学びになりました。

💬 DCM:『既存プロダクトの運用を継続する』という意思決定のもと、長期的なプロダクト開発コストを減らすために、プロダクトエキスパートのワカマツとのワークショップを定期的に開催していましたよね。
💬 松本さん:はい、特にワカマツさんにはプロダクト開発の部分で、よりスムーズに開発を進めるための優先順位づけや、将来的な開発体制の面で多くを教えていただきました。プログラム期間中にすぐに反映するものもありましたが、事業が拡大するにつれて、『あぁ。あの時のこれか!』というような気づきを得ることが多いです。

ワカマツ主導でプロダクトワークショップを実施

最後に、Atlasへのリクエスト・第2期応募者へのアドバイス

💬 DCM: 今後、DCM Atlasに対して、もっとこうすべきみたいなことってありますか?
💬 松本さん:特にプロダクトローンチ済みの起業家向けには、議論の時間に加えてもう少しプロダクトに集中する時間があるといいのかな、と思います。色々なアドバイスをいただく中で自身で考えを研ぎ澄ます時間も大切ですが、(toC向けのサービスは特に)とにかくユーザーの声を聴いてスピーディーにプロダクトに反映することは軸としてブラさずに事業を進めるべきかな思います。これはDCM Atlasのプログラムに限ったことではないですが、手を動かしてみないとわからないこともあるので。

💬 DCM:第2期の応募企業にアドバイスをするとしたら、何を伝えますか?
💬 松本さん:
Value propの概念やPMFへの判断軸など、事業を進めていく上で考えておくべきことは全てこのプログラムを通じて学べたので、初期のタイミングだからこそ参加する意義があったと思います。また、DCMのみなさんの知見を元に、さまざまな角度から事業成長につながる客観的な視点をもらえたことがすごくありがたかったです。

最終プレゼン後のディナーにて、採択企業とDCMメンバーで集合写真

松本さん、インタビューありがとうございました!
第3弾の採択企業は、株式会社WE UPの代表取締役CEO 伊藤宏志氏の予定です。次回もお楽しみに!

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