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第10回:第75回全国カレンダー展上位賞である大臣賞を独占受賞!~ その裏側を匠とともにひもときます~

私たちは、DNPグループ企画部門の中でも長い歴史を持つ「カレンダー」を企画制作しているチームです。

紙メディアの減少傾向に伴い、カレンダーをステークホルダーに対して“企業らしさ”を伝えるためのコミュニケーションツールとしての役割を変化させることはできないだろうか、と考え、衰退淘汰(とうた)されていく古き印刷メディアという固定概念を、ブランド価値を発信できる“もらってうれしい”価値あるメディアに啓発転換していきたいとチャレンジしております。

カレンダーを通して、企業のコーポレートブランディングを365日にわたって展開するためには、世の中のこと、つまり「世界情勢」や「社会」に常に意識を向け、カレンダーのコンテンツに企業の特徴やアイデンティティをどのように訴求するか、さらに、この変化に対応するために、ESG、SDGs、多様性理解といった視点をいかに取り入れ企画立案するかが課題となってきました。

カレンダーに対して企業が求めるのは、経済成長だけでなく社会や環境の持続可能性を担保しながら成長する姿をビジュアルとして描きだすことで、ブランドイメージの醸成に重要な役割を果たす可能性に、特に注力しながら日々企画制作を行っています。

今回は、そうして生み出されたカレンダーの中から、アワードとして歴史ある「第75回全国カレンダー展」において、上位賞を独占した作品のデザインを解説したいと思います。

【匠が語るデザインの解剖~上位賞作品のデザインはこうして生まれた~】

「企業らしさ」を伝えることにこだわった力作がそろいました。

■経済産業大臣賞


第1部門 
株式会社ニッスイ様「Nissui Calendar 2024」

戦前に制作され今日まで継承されてきた「日本水産魚譜」の魅力を最大限活かすため、ごく淡い地色に暦を上げて、白い紙地を“水の中”に見立て、そこに泳ぐ魚の重力を感じさせる演出です。
あくまで自然に“引き算”するように、清廉潔白な潔さを試みたもので、何より“美味しそうな”色みから「旬」を届けるカレンダーです。


第2部門 
ミサワホーム株式会社様「アンリ・マティスの生涯と筆跡カレンダー」

眺めるだけで心地よい、踊るような美しい文字。20世紀の美術を代表する巨匠・マティスの手書き文字によるカレンダーです。没後70年を数え、2023年・2024年に展覧会が続く画家の生涯と筆跡を楽しめるほか、インテリアとしての装飾性と機能性を兼ね備えています。


第3部門 
株式会社DNPコミュニケーションデザイン「ennui イワクチコトハ作品集」

アーティストとして独立したばかりの才能の芽を育む当社DCDの活動「若手支援プロジェクト」です。紙面をあたかもギャラリーでの展覧会として捉え、縦、横、作品に対応できるようグリッドシステムのデザイン設計を用いました。
現代的な感性の中にどこかノスタルジーも漂う素敵な作品が魅力で、これからの活躍が楽しみな作家さんです。


■文部科学大臣賞


第1部門 
横浜ゴム株式会社様「All Roads Lead to Home」

“すべての道はローマに通ず”という有名なことわざを一文字もじり、国境・文化を超えて「すべての道は家路へと通ず」といった平和へのメッセージを込めています。
地球規模の大きなスケールで撮影した“道”を、コーポレートカラーの“赤いクルマ”が颯爽と走るシリーズ作品。印刷を重ねてシャドーを締め、焦点を絞って魅せたいところをフォーカスしています。
まるで映像を観ているかのようなドラマティックな仕上がりですが、実はタイヤ製品のパフォーマンスも語っています。


第2部門 
株式会社シグマ様「2024 SIGMAカレンダー」

参加型のコンテンツとして、同社製品カメラ・レンズを使用して撮影された、国内外の写真家による優秀作品を厳選編集しています。4色に加えて銀インキを部分的に効かせる印刷テクニックから独特のコクを生みだし、アート写真の魅力を最大限再現するよう心掛けました。
銀塩プリントのような仕上がりは印刷物であることを忘れさせる珠玉の逸品です。


第3部門 
株式会社DNPコミュニケーションデザイン「Rebone Calendar 三橋雄太作品集」

手書き文字によるカリグラフィーが触覚的にも指で楽しめるように盛り重ねた作品集です。骨格標本からデフォルメした干支(えと)の動物をテーマとして、漆黒の紙に白インキの重ね刷りで印刷し、筆致(筆の趣)の美しさを丁寧に再現することで、知性と品格を感じるインテリアアートとして昇華しました。


■全国カレンダー展について


1950年に始まり、第75回を迎えた全国カレンダー展は、「企業の文化的メッセージを伝えるコミュニケーション手段」「人々の生活空間に潤いを与える印刷媒体」としてのカレンダーについて、印刷技術や企画・デザイン力、機能性や実用性に優れた作品を顕彰するものです。

今回DNPグループは、独自性の高いコンテンツと意匠性の高いデザイン、印刷の再現性などの強みを活かして*1、カレンダーの発行元である各企業の魅力を表現しました。また、若手アーティストの発掘や支援の活動を通して生み出した作品も評価され、多数の受賞に至りました。

募集部門は以下の3つです。第1部門:BtoB向け企業カレンダー(企業・団体等に配布)、第2部門:BtoC向け企業カレンダー(生活者に配布)、第3部門:出版・小売販売・既成カレンダー

第75回全国カレンダー展において、受賞対象全体の4割強にあたる29の賞で受賞しました。
また、上位賞である経済産業大臣賞(該当3作品)と文部科学大臣賞(該当3作品)のすべてを、DNPグループで制作した作品が受賞しました。詳細はこちらをご覧ください。


■今後のカレンダー創りへの思い


私たちはカレンダーを通じ、1年365日ブランド価値を発信できる“もらって嬉しい”価値あるコンテンツとは何だろう?といつもあれこれ考え、コミュニケーションデザインしています。

その中でも、以下4つのプロフェッショナルな視点と姿勢で日々研鑽を重ねています。

① クリエイティブのプロとして、旬なトレンドや鮮度を見極める「目利き」であること

② 続けて観たくなるヒットシリーズを生む「シナリオライター」であること

③ 妥協を許さぬ細部までこだわる「工芸職人」であること

④ 厳しく自身の成果物に対してレビューできる「鑑定人」でもあること

20代のフレッシュな若手から60代の益々ジューシーなベテランまで、全世代それぞれに個性豊かな才能と多様な趣味嗜好・専門性・推しを活かし、未来に向けて継承と革新にチャレンジを続けていきたいと思います。


匠デザイン室 川口佐久良


■今後の展開

DNPは引き続き、カレンダーを通じた企業のコミュニケーションの活性化などに努めていきます。社会貢献やソーシャルの視点、多様な関係者による参加型の企画・制作手法など、新たな価値を持ったコンテンツの開発を行うとともに、若手アーティストの発掘・支援を積極的に推進していきます。

*1 DNPのカレンダー制作支援ソリューション

※記載されている会社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。


カレンダー制作についての問い合わせはこちらよりお願いします。