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第4回:プロジェクトを成功に導くためのコツとは? ~企画担当者のためのプロジェクトマネジメント研修について Vol.2~

前回投稿した社内のプロジェクトマネジメント研修ですが、第2回は主任企画員の相馬さんから、実務を行う際の注意点をプロジェクトマネジメント管理ツールの使い方も交えて説明してもらいました。

参加者は前回同様、社内にてこれからプロジェクトマネジメントを行ってもらう中堅ディレクターのメンバーです。前回登壇してもらった高橋講師にも聴講いただきながら研修を始めていきます。


プロジェクトを定義するプロジェクト憲章(計画書)とは?


プロジェクト案件が進行する際は、クライアントから“お客さまが使用している帳票を使いやすくしてCX向上してほしい”といったテーマをもらい「わかりました!」とすぐに案件を進行していきたくなりますが、ちょっと待った!そのプロジェクトの定義は何ですか?「定義?そんなこと言われても…」と思うかもしれませんが、これを最初に定めておくことが実務では非常に重要です。

「プロジェクトの定義=プロジェクト憲章」では、プロジェクトの目的目標、スコープ、責任関係者の3要素を記載しておくことが重要です。そうすることで何かがあった際にも、これを再度確認すればプロジェクトが脱線したり迷走したりが起こらなくなり、プロジェクトの目標達成に向けて軌道修正していくことができるわけです。


プロジェクト憲章に記載する3要素

PMBOK(「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」A Guide to the Project Management Body of Knowledgeの略語。PMBOKガイドは、プロジェクトマネジメント協会 (PMI) により発行されている。)によるとプロジェクト憲章は 「プロジェクト・マネージャー、が母体組織の資源をプロジェクト活動のために使用する権限を与える」ために「プロジェクトの存在を正式に認可する文書」と定義されています。

プロジェクトに何度も参画しているけど憲章なんて聞いたことがないという人も中にはいることでしょう。実務ではプロジェクト憲章をもとに作成されたプロジェクト計画書で進行管理していくことが多いので、プロジェクト憲章はあまり見たことが無いのかもしれません。

続いてプロジェクト計画書を見ていきましょう。プロジェクト計画書とはプロジェクト憲章を」もとにプロジェクト関連の重要事項をより詳細に記したもので、そこに記載すべき内容は下記の7つとされています。

1.目標:プロジェクトの達成すべき目標
2.関係者と役割:参画する関係者とその役割
3.成功の評価指標:達成すべき評価の指標、数値化しておくとよい
4.スコープと予算:前回説明の通り非常に重要
5.スケジュール:納期はいつまでなのかを記す
6.マイルストーンと成果物:スケジュール通りに進行するためにいつまで    に何をするかを定める
7.コミュニケーション計画:プロジェクト進行のために必要な会議体等の計画を記す

研修では実際の案件である「クリエイティブガイドライン作成」で使用したプロジェクト計画書について相馬さんから紹介してもらいました。そして、7つの中でポイントになってくるものを解説してもらいました。まず1つ目はスコープです。これは前回の研修でも説明のあった通りプロジェクトの範囲を特定するものです。実務でもこれは非常に重要です。例示していたクリエイティブガイドラインの件では得意先からスコープの特定がされず、「いろいろ見ながらやってください」とあいまいなオーダーでしたが、「○○商品の○○フローに関わるツール類についてPJTマイルストーンに沿ってガイドライン化します。」と提示することでプロジェクトの範囲を明確にすることができました。

2つ目のポイントが時間軸です。それをアウトプットの成果物とあわせてプロットしたものがマイルストーンとなります。ここでも各工程がスコープのどこにあたるのかがわかるようにしておく必要があります。

最後に3つ目のポイントがコミュニケーション計画です。プロジェクトを進行するためのコミュニケーション計画を計画書の中に記載し、プロジェクトメンバーに認知してもらい承認を得ることが大切です。


プロマネに必要不可欠な管理ツールとは?


実務ではスケジュール管理と予算管理が大切です。この2つはルーティンワークよりも厳しくチェックする必要があります。その確認を行うために管理ツールがあります。それをコミュニケーション計画で定めた定例会で確認していくようにするのです。定例会については相馬さんからアドバイスがあり、あまり高頻度で行うと会議だらけで準備と整理で時間に追われてしまいがちに・・・。おすすめは2週間に1度程度がいいとのことでした。そして必要に応じて分科会で詳細を確認していくことで会議体の参加者も適切に絞られて、うまく進行できるそうなのでぜひ参考にしてください。

そして会議体の計画と合わせて運営ルールについても説明をしてもらいました。運営ルールは通常の案件では定めていないケースが多いですが、プロジェクト案件ではできるだけ定めてから進めた方がルールの明確化につながります。長期で範囲も広いプロジェクトでは“木を見て森を見ず”になりがちです。プロジェクトの各種管理方法・連絡方法を決めておくのが運用ルールです。具体的には品質・コスト・進捗・リクエスト・変更時のルール・ドキュメント管理・連絡方法等の項目を定めておくということです。

実務においてはプロジェクトの中であとから納品物が増えたりするケースがあります。そういう時のためにも会議の議事録が大事になってきます。きちんと議事録を残し双方でその内容を確認していくことで、「それは初耳ですよ!」と言えるようになります。

またプロジェクトの進行においてタスクとリクエストの管理が非常に重要です。タスクについてはWBSで、リクエストについてはリクエスト管理表で進捗確認していきます。WBSはマイルストーンと連動するスケジュール確認のツールで、プロジェクトのスコープ内のすべての工程を記載しておくことが大切です。リクエスト管理表はリクエストしたのが誰で、いつまでに誰が回答するのか、を記載していきます。そして回答済みのものと未回答の物がわかりやすく識別できるようにしておくことが大切です。

以上、3つのプロジェクト管理ツールである、議事録、WBS、リクエスト管理表はプロジェクト管理の3種の神器ともいうべき大切なツールなのです。それらの制定をもってようやくプロジェクトがスタートとなります。もし合意に至らなければ、時間をとってでもここで確認をしておくことが大切です。なぜなら最初のボタンの掛け違いが後々大きな問題になることが多いからです。


一番もめるところ?スケジュール管理のポイントとは?


講師の相馬さんいわく、ここが本日の研修で一番言いたかったところ!とのことです。プロジェクト管理ではとにかくスケジュールでもめることが大いにあります。それをさばきながらプロジェクトの目標達成までどの様にたどり着かせるかがプロマネの手腕の見せ所となるわけです。そのために必要なスケジュール管理のポイントを解説してもらいました。

まずプロジェクト計画書で合意したマイルストーンを元とします。マイルストーンとは元は1マイルごとの要所要所におかれた石のことを指したもので、ここからずれずに進めばゴールまでたどり着けるというものです。それをもとに各工程を示したマスタースケジュールを引いていきます。粒度でいうとWBSの大項目くらいのスケジュールを示したものがマスタースケジュールと言ってよいでしょう。そして粒度を細かくしたWBSに落とし込んでいくことになります。

WBSでは各作業を誰がいつまでに行うのかという、タスクの特定をすることが大切です。工程は抜け漏れが無いようにしましょう。タスクとスケジュールの管理はコストに直結するからです。したがって見積の詳細項目とWBSの縦軸がそろっているとわかりやすくて良いと思います。WBSはガントチャート化すると日程が分かりやすいのでお勧めです。またWBSには自社内の作業工程だけでなく、クライアント内で必要となる承認日程や対外的な発表・説明会等のイベントをプロットすることがポイントです。それを明示しておくことで関係者全員がそこを目標に作業を進めることができるようになるからです。


マスタースケジュールは変更しない!


そしていよいよ相馬さんが今回の最も説明したかったのがこの部分になります。プロジェクト全体の進行を俯瞰してみるための大枠のスケジュールがマスタースケジュールなのですが、プロジェクトによってはそれを何度となく変更するケースがあるそうです・・・。プロジェクトの背骨ともいうべきマスタースケジュールですが、それをことあるごと変更すると予定通り進んでいるのか遅延しているのかが分からなくなってしまうため、基本的にはマスタースケジュールは大きく変更しないようにしましょう。どうしても変更する際にはプロジェクトメンバーと責任者に承認をもらってから行うようにします。

それくらいマスタースケジュールは重要なものなのです。一方細かい作業ベースのWBSは実作業にあわせて調整していって構いません。WBSとマスタースケジュールは双方を補完しあうため、どちらも欠かせないものなのです。

研修では相馬さんから実際の案件のマイルストーンの例を示してもらいました。マイルストーンは成果物までイメージしながら作成するようにします。なぜなら成果物は予算に直結するからです。各種のイベントもいれて、長い期間を俯瞰して見ながら管理できるようにします。プロジェクトタスクの可視化のシートではWBSと同じ番号が割り振られているとあわせて確認しやすくなるのでお勧めです。

さらに、WBS作成における細かいコツを2つ解説してもらいました。1つは、スケジュールは後ろから引くと作りやすいことです。ゴールを見据えてバックキャストしやすいためにもマイルストーン上で可視化しておくことが大切です。それをもとにWBSを作成していきます。そしてその中でのデッドラインを引いておきます。デッドラインとはここだけは絶対に譲れない期限のことです。

スケジュール作成の際は作業負荷の大きいタスクからプロットしていきます。高リスクなタスクも優先的にプロットして作成したいところです。プロジェクトオーナーの部署だけでなく、他部署に関連するタスクがあればそれもあわせて記載しておきましょう。

また、もう1つは、クリティカルパスを意識するということです。前の工程が完了していなければ、次の工程を進められない関連タスクのこと。タスク同士の依存関係をクリティカルパスといい、スケジュール作成では非常に重要なポイントです。

ここで参加者から、マイルストーンはどれくらいの粒度で設定すべきか?という質問がありました。それについては相馬さんから「一カ月単位くらいで大丈夫です。複雑なプロジェクトになってくると相関図があった方がわかりやすくなってきます。それをもとにマイルストーン、WBSへスケジュール化していくようにしてください。」と説明がありました。マイストーンが設定できない時は、要件が固まっていない場合が多いので注意が必要です。



プロジェクト全体を通して必要なのはワンチーム


最後に聴講してもらった本部長の松川に総評を依頼したところ追加講義をしてもらいました(笑)。相馬さんの講義についてはリアルな現場のノウハウが濃縮されていてすごくよかった!とのお声をいただきました。

そしてここからが追加講義です。
クライアントからのオーダーが目的と合致していればいいですが、そうではないケースがあります。その場合はプロマネが率先して、クライアントに「目的は何ですか?」と問わなければなりません。それを聞く際には、注意が必要で「どうしましょうか?」と聞く委託型では進まなくなってしまうことが多いです。ですので「我々はこうすべきだと思います!」というコンサル型で聞くようにしましょう。この方がクライアントからの信頼も獲得しやすくなります。

プロマネの役割についてですが、関係者間の役割をクロスしていくことが大切です。そうすることでワンチームになることができます。人間なので議論して意見をぶつけ合ってでも一つになってやらないとうまくいかないのです。また成果物について決まってないケースが多いので、逃げずに決めることが重要です。

そしてモック、プロトタイプは早い段階でできるだけリアルに作るようにしましょう。ラフなものだけでは最終のイメージができません。リアルに明確なものを作っていかないと役に立たないのです。そのためには時間を使っても構いません。リアルなプロトタイプがないと合意形成ができないので逆に後々時間がかかってしまうことになります。長いプロジェクトこそ早くプロトタイプを作ることが大切です。最終ゴールをイメージして精緻なモック、プロトタイプを作成しましょう。

スケジューリングについては、マイルストーンにもWBSにもクリエイティブ性が求められます。その通りやればいいというものではありません。作業内容を見越してクリエイティブにスケジュール化する。大きな負荷がかかる作業は優先的にスケジュール化していきます。これは夏休みの宿題と一緒ですね。自由研究のようなものを最後に残すと時間が足りなくなってうまくいきません。

全体を通してはやはりワンチームが重要。仲良くやることがいいことではなく、議論してぶつかってでも目的にむかってワンチームになることが重要です。そのためにも言語の共通化や定義のまとめが大切になります。ここで高橋講師からも、ワンチームはクライアントも含めてワンチームになると良いというアドバイスをもらいました。なぜなら利害関係があるのでだんだん仲が悪くなりがち(汗)だからとのことでした。


以上で2日間にわたって開催されたプロジェクトマネジメント研修が終了となりました。参加したメンバーもこれらの知識やスキルを活用して、どんどん大きなプロジェクトを推進していってもらいたいです。


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