見出し画像

ゲラとは何か、なんなのか。懐かしの版下

出版や編集の仕事をしている人間にとっては当たり前の「ゲラ」というやつ。

デジタルコンテンツの世界ではこんな「変な言葉」は存在しないが、紙の本の世界ではVIPクラスの存在感をはなっている。

今、僕の手元には編集・校正に追われている他社さまの書籍ゲラがあり、近いうちに弊社のゲラもやってくる。

ちなみにこれが弊社・代官山ブックスから来年早々に出る予定の大村ドクターのゲラの見本サンプル。

で、本題。

ダイニングテーブルの上にゲラを置いておいたら5歳息子が「なにー、それ?」と指さして言ってきた。

それに対して僕は「んー、これはゲラって言って本のデザインが入った見開きの原稿だよ」的な感じで適当に答えた。

息子は「へー、そうなんだ」と言った後、「あ、これ絵本になるんだね。折ったらそうなるもんね」と、全く絵本のゲラではない、文字だらけのゲラを指してそう言っていたが、僕の脳みそはもう疲労困憊だったので「んー、そうだね」と適当に答えた。息子は正解を言い当てて満足そうだった。

それを傍で見ていた妻が言った。

「なんでゲラって言うの?」

と聞いてきた。・・・え、知らんと思った。

長年、もう20年ぐらいゲラに関わって生きてきたけど、「ゲラの語源」なんてこれまで一度も調べたことがなかった。これもまた「無意識の習慣」ってやつだ。思考停止だ。老化だ。これはよくない。

そこで早速調べてみた。

作家・平野啓一郎さんへのインタビュー(日本製紙連合会)にも、その話が冒頭に出てきた。
👇
https://www.jpa.gr.jp/about/pr/pdf/202001_hiranokeiichiro.pdf

あと、こんなものも他にもいろいろある。

要は、活版印刷の活字を入れる(「活字拾い」と呼ばれる)「木箱」を「gally(ギャリー、ガレー)」と呼び、それがもとになって校正刷りのことを「ゲラ」と呼ぶようになったそうだ。なんでそんな訛り方をしたのかはわからない。

まぁこんなことを書いても出版界以外の人、または今の若い人は「そもそも活字拾いってなに?」と、ゲラとおんなじぐらいわけのわからない言葉だと思う。

僕自身も生でそれは見たことがない。椎名誠さんの本に出てきたいたので、子どもの頃からそれは気になっていた。それでだいぶ昔に調べたのだが、こういう感じだ。ほぼ日さんのYouTube。

そしてこちらも。

昔はこんな風にして、本当に活字を1個1個拾って、箱にはめて、整えて、印刷をしていたのだ。デジタル全盛の今となっては信じられないことだ。今はデータで入稿して、ゲラは紙で確認するものの、基本的にデジタルの世界でつくられていく。

ちなみに、僕が前に働いていた小さな出版社は「紙の版下」で最終チェックをしていた。「ひえー」だ。デジタルの現代においてこういうことをやっているところはほぼないと思う。ここで気づけばまた出てきた新たな「版下(はんした、と読む)」という言葉。

版下については大正10年創業の京都の印刷屋さん「からふね屋」さんのサイトに詳しく載っているので興味ある方は見ていただきたい。一部引用する。

アナログ製版時代、紙台紙に写植や図版の紙焼き(印画紙)を貼付けてトンボや罫線などをレイアウトしたものの名称でした。この版下台紙を製版カメラで撮影し、印刷用のフィルムを作成していたのです。

https://karafuneya.com/blog/words/hanshita

注目ポイントは「版下を製版カメラで撮影する」というところだ。

これつまり、最終チェックする紙の版下に「汚れ」がついていたり、文字が「かすれ」ていたりすると、本を1,000部刷ったら1,000部全てにその「汚れ」や「かすれ」が現れることを意味する。だって、その版下を写真にとって印刷しているのだから、それはそうなる。

そうなのだけど、だから版下の最終チェックの緊張感といったら半端なかった。それがB5判で300ページ以上ある本だったりすると、もう逃げ出したくなるレベルだ。嫌な汗をかく。

あぁ、今はなんて良い時代になったんだろう、紙の本のDX化。

・・・また脳みそがバグるぐらい疲れているのに、まただらだらとnoteを書いてしまった。ほんとにライターって仕事をしてる人間の性だ。いやだ。

というわけで、またまた「無意識の習慣」から学んだ今日の自分。そんな気づきをともに感じながら最高の1冊をつくる、丸ごと本づくりサービスやってますので興味ある方はぜひ!

ーー
代官山ブックスでは「話すだけ」であなたの本ができる、「丸ごとお任せ本づくり」サービスを行っています! WEBサイトはこちら



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?