良い上司って何だ?-私が出会った良い上司列伝・目標面談編-

私が勤めていた会社には、年一度の目標管理面談というものがありました。
いわゆる"MBO"と呼ばれるヤツです。会社の設定している各レベルごとの人材定義の内容を参考に、自分で設定しろってヤツです。
目標設定や評価制度として、ここまでスタンダードになる前から、取り入れていたんじゃないかと思われます。

私はこれが、超絶苦手でした。本当に本当に本当に嫌だった。
だって、しっくり来る目標なんて立てられないし、会社から求められる事項に照らし合わせたらなおのことだし、そもそも、私がやりたいと思うことと、会社が設定している標準的な内容が違いすぎる。

そんな状態だったにも関わらず、人事曰く、会社の評価制度の平準化のためにも目標は3つ設定してほしい、とのこと。
もうね、地獄です。たったひとつですら絞り出すのが苦痛なのに、3つとは?3つとは??

そんなんされるくらいなら評価なんてされなくっていい。心底そう思うくらいでした。(思うだけでなく、上司に言ったこともある。)

そんな目標面談ですが、私の中で形骸化させないでいてくれた上司が2人います。

ひとり目のKさん。
私にとっては、この人がいなかったら今の私はいない、くらいの恩師でもありますが。

年次で言えば、まだ2~3年目くらいの頃。それこそ会社からしたら、
『ウダウダ言ってる時間あるなら、基礎的なことを目標として、とっとと面談済ませろ』
くらいの時期だと思うのですが、私はそれがどうしてもどうしてもできなくて。

ずっと悶々としてました。先輩や同僚やいろんな人に相談もしました。でも、全然目標書けませんでした。
そうこうしているうちに、否が応でも面談の日が近づいてきて。仕方がないから、会社が設定する目標通りに書いたんです。
そして迎えた面談の日、Kさんからのコメントは、

『これ絶対、お前の言葉じゃないだろ』

・・・はい、もうおっしゃる通りです、反論もないです。
でも、会社が求めてるんだから良いじゃないですか。私も目標絞り出せないんだから良いじゃないですか。自分でいうのも何ですが、それなりに及第点の目標設定だと思いますが。

『書き直せ』

・・・え?????
こんなにこんなにツラいことを、あれだけ悩んでもできなかったことを、しかも、もう1回やってもできるかどうかわからないかもしれないことを、もう一度やれと?????

私 :『嫌です無理です、書けません』
Kさん:『そう決め込んでるのはお前だから、書いてみろ』
私 :『本当にできないんです。やりたいことがないんです』
Kさん:『やりたいことが何もないなんて、そんなことは絶対にないだろ?』
私 :『ないですよ、今の仕事に関係することだったら』
Kさん:『今の仕事に関係することを書けなんて、誰が言った?』
私 :『え、だって、人事がそう言ってるじゃないですか』
Kさん:『そんなことするからお前の言葉じゃなくなるんだ。出発点はそこじゃなくて、お前がどうしたいかだろ?』
私 :『そうですが、でも全然関係ないことを書いても』
Kさん:『これはお前の目標だろ?お前が納得できる内容じゃないんなら、こんな面談やる意味がない』
私 :『・・・・・』
Kさん:『時間かかっても良いから、全然関係なくても良いから、とにかくお前が思うことを書いてみろ』

あの頃からだいぶ年数が経過しているので、一語一句とまではいかないものの、大よその言葉は間違えてないはずです。
何となく私は、『なんやかんやで、会社が会社のためにやってるんだろうな』くらいに思ってたんですね。実際にそうやって言っている人たちもいたし。無難に切り抜ける人たちの方が多かったんだろうし。

でもKさんは、それを許してくれなかった。
それを面倒がる人もいたみたいですが、私にとっては、Kさんのその言葉と、私と真剣に向き合ってくれているその様が、素直にものすごく嬉しかった。

2回目の面談のとき、私の面談シートには、『〇〇をやりたい』という小学生の作文レベル以下のコメントしか載せられませんでした。
それでもKさんは、『書けたじゃないか』と褒めてくれました。

その後、何度も何度も面談を繰り返し、完成までに費やした面談は実に8回。
"書けない"・”できない”・”わからない”を連発する私を、決して見放さず、絶対忙しかっただろうに嫌な顔ひとつ見せず、ずっと付き合ってくれたKさん。
その甲斐あり、自分自身が納得する形で、Kさんも認めてくれる形で、目標を設定することができました。
(ちなみにKさんの中で、私以上に手の掛かる人間もいなかったと、後々語ってくれました。そりゃそうだ。。)

これだけ時間かけてもらったんだから、次回からは自分の力で目標設定できるようになってるはず。

・・・なんて、そんな上手くいく話があるわけもなく。
数年後の目標面談では、今度は上司Sさんに助けてもらうことになるのですが、それはまた別の話。

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