見出し画像

【日本語学】「は」・「が」の違い――「ゾウは鼻が長い」を例に――

2024/05/15 訂正・変更・追加アリ


【はじめに】

放送大学に入学する前に在籍していた大学で日本語学を主に学んでいた。

そしてたまたまこの前、お世話になっている習字教室の先生からこんな話題を振られた。

「は」と「が」の違いってわかる?

私がパッと浮かんだ違いは「格助詞か否か」のみだったのでうまく説明できずもやもやしてしまった。

ので、今回は自分なり考察をしてみる。

前の大学でのゼミ以降、こういったことはしていないので楽しみ。

ぜひご覧ください。


【調査】

残念ながら、今現在日本語学や日本語文法の参考書を持っていない。
実家から遠く離れた四国のほうに一時滞在しているので、持ってこなかった(いっぱいあって選べなかったから全部おいてきてしまった)。

なのでネットでの調査が多くなるが、参考にするサイトなどはなるべくわかりやすく根拠があるもの・出典元がはっきりしているものを選ぶ。ご容赦願いたい。

また辞書に関しては日本国語大辞典ではなくデジタル大辞泉をメインにしようと思う。
今回のような比較的ラフな記事で日本国語大辞典を引用するとほかの語の説明とか引用方法がめんどくさいと思ってしまった。ごめんなさい。
ただ日本国語大辞典も参考に使っていくので興味がある方は辞書についても調べてみてほしい。

「ゾウは鼻が長い」について


今回、例として「ゾウは鼻が長い」という文章を使う予定だ。

この文章でよく問題になるのが、主語がどれにあたるかというものである。

ゾウのほうが主語っぽく感じるが、「ゾウが長い」という文章の主述関係をおかしく感じる人は多くいるだろう。
でも動詞「長い」が述語だとしたら、「長い」につながる主語は「鼻」になる。
ただそうすると「ゾウ」は何にあたるか?

こういった問題がある文章を、今回私なりになるべくわかりやすく説明していこうと思う。

「は」・「が」について


日本国語大辞典 第二版を参考に助詞としての「は」・「が」の区別についてざっとまとめると、

「は」:係助詞・終助詞 
「が」:格助詞・接続助詞・終助詞

となる。

補足として係助詞と格助詞についても記載を入れる。

かかり‐じょし【係(り)助詞】
助詞の分類の一。文中にあって、述語と関係し合っている語に付属して、その陳述に影響を及ぼし、また、文末について、文の成立を助ける働きをする助詞。口語には、「は」「も」「こそ」「さえ」「しか」「しも」「でも」などがあり、文語には、「は」「も」「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」がある。かかりことば。けいじょし。→係り結び

デジタル大辞泉

かく‐じょし【格助詞】
助詞の種類の一。体言または体言に準ずるものに付いて、それが文中で他の語とどんな関係にあるかを示す助詞。現代語では、「が」「の」「を」「に」「へ」「と」「より」「から」「で」など。古語では、「が」「の」「を」「に」「へ」「と」「より」「から」「にて」など。

デジタル大辞泉

まとめると、

「は」
述語に関する語についている

「が」
体言(活用しない語・名詞とか)につく
 またその体言が文の中でほかの言葉とどんな関係があるかを示している

となるであろう。

体言と述語について



述語と体言についても調査を入れてみる。


述語になりうるものは主語に対してそれがどうであるか、の部分である。

「鳥が鳴く」「山が高い」「彼は学生だ」の「鳴く」「高い」「学生だ」の類。

デジタル大辞泉


「鳴く」は動詞・「鳥」がどうであるか
「高い」は形容詞・「山」がどうであるか
「学生だ」は名詞(+断定の助動詞「だ」)・「彼」がどうであるか

といったものだ。


体言については、端的に言えば自立語(その単語だけで文が成り立つ言葉)の中で活用しないものである。

主に名詞である(代名詞や数詞がはいったりもする)。

【考察】


「ゾウは鼻が長い」

この文章の言葉ひとつひとつを、先ほど調査したものに当てはめていく。

ゾウ(名詞・体言) /  は(係助詞) /  鼻 (名詞・体言)/ が(格助詞) /  長い(動詞・述語)

調査したものをそのまま埋め込んだやつ

これだけだとなんにもわからん。となるかたもいると思われるので、ここですこし違う考え方をしていく。

ゾウは / 鼻が / 長い

多分みんなこうやって分けていると思う

「ゾウは」が主部(主語にあたるものが含まれていて2文節以上)だとしたら、述部(述語に当たるものがが含まれていて2文節以上)に当たる部分はどこの文章になるか。

ゾウは(主部) / 鼻が長い(述部)

文節をくっつけるとこうなる

格助詞「が」の関わりについて、
格助詞が「体言が文の中でほかの言葉とどんな関係があるか」を指すものなので、
「鼻」というものが「長い」という性質を持つこととして述部となると考えている。

次に「ゾウ」と「鼻が長い」の関係に入る。

係助詞は「述語と関係し合っている語に付属」するので、

「ゾウ」というものは「鼻が長い」
(「ゾウは」まで入れると主部になる)

というようなつながり方をする。


係助詞は「述語と関連している単語」につき、格助詞は「後ろにつく体言がほかの文とどのような関係があるかを示す」ものとすれば、

  • 「ゾウ」は名詞になる

  • 「鼻」は名詞でほかの語との関係がある格助詞「が」がくっつく

  • 「長い」は述語になる

  • 「鼻」そのものの単語は「長い」に関係するので格助詞「が」が使われる

  • 「鼻が」は、述語「長い」につく(文章として「鼻が長い」が完成する)

  • 「鼻が長い」は係助詞「は」によって主語「ゾウ」と結び付けられる

「ゾウ」という名詞(主語?)があり、「長い」という述語に「鼻が」という名詞+格助詞の文節修飾的にくっついていると考えた。

ただやはり主語という概念がどうしても薄くなってしまう。

この言語学的未解決問題を考えるとき、たまに主語と主題といった言葉を使うことがある(使う人がいる?)。

また放送大学「日本語アカデミックライティング('22)」p.182 補足からの引用で、

助詞「は」の示すものが「主語」ではなく「主題」であって、文法的なつながりに関係なく後ろに情報を展開しやすいことに起因する。

放送大学テキスト「日本語アカデミックライティング('22)」p.182 補足

それに当てはめるなら、「ゾウ」は主語で「鼻が長い」が主題(2024/05/15 訂正)
「ゾウは」主題を表し、「鼻が」が主語になるということらしい。

でもなんかこれは納得できないかも……。(ここの意見も2024/05/15の訂正で意見変更)

係助詞が述語に関係する語につくなら「ゾウ」は主語であると思うし、格助詞がほかの言葉についてどんな関係があるかというはたらきを持つなら「鼻」は「長い」につくと思うからだ。

【まとめ】


むっず!!!!!

ネットの知恵袋的サイトを見ると、この例文自体が「日本語には主語がない」といった主張の例としてだされたものだと出てきたりもする。

大正時代辺りから同様な問題の議論もされているらしいともある……。

個人的な考察の結果としては、

「ゾウ」という名詞(主語?)があり、「長い」という述語に「鼻が」という名詞+格助詞の文節修飾的にくっついている

考察からの引用

となった。

日本語学に興味がある人はぜひこの謎を解いて世に発信してほしい。

また日本語学が面白いと感じた人はこのような本を読んでみるといい刺激になると思う。


普段使う日本語がさらに身近になる本なのでおすすめ。


【最後に】


ここまで読んでくださりありがとうございます。

ぜひ今後もどうぞよろしくお願いします。


※Amazonのアソシエイトとして、村上 耽美は適格販売により収入を得ています。


ここまで見てくださりありがとうございます。もしよろしければサポートのほうもよろしくお願いいたします。とても励みになります。