白黒テレビ時代 無敵のハンガリーvsイングランド 《MM・WMフォーメーション 偽9番 プスカシュ賞 ほか》

イングランド (3-6) ハンガリー
1953年11月25日 @ウェンブリースタジアム
得点者:
>HUN 1m Hidegkuti (9番)
>ENG 15m Sewell (10番)
>HUN 20m Hidegkuti (9番)
>HUN 24m Puskas (10番)
>HUN 27m Puskas (10番)
>ENG 38m Mortensen (9番)
>HUN 50m Bozsik (5番)
>HUN 53m Hidegkuti (9番)
>ENG 57m Ramsey (2番)


※赤ハンガリー ※白イングランド (上ユニ白がENG)

画像1


【1953 イングランドvsハンガリー】
2人制オフサイドとなった1925年以降の主流のWMフォーメーションは、文献や出典ではマンツーマンディフェンスだとあるが、このイングランドとハンガリーの試合においてはゾーンディフェンスであるように見える。
3-2のユニットで、3のあいだ抜け封じを2が、2の脇受け封じを3が行う立ち回り。攻撃側のポジションチェンジも多くなく、5vs5で噛み合うディフェンスセット体形。

オフサイドコントロールにおいては・・・最後方のGKの前方、最終ライン全体を2人目として、3枚のラインを意識した立ち回り。
比較対象としてマンツーマン&リベロのディフェンスでは。最後方のGKの前方、リベロが後方2人目とした2人制ルールのオフサイドコントロール。

3-2のゾーンが"面"の集合体のディフェンスとしたなら、マンツーマンとリベロでは"点"の集合体のディフェンス。どちらもカバー等補完関係もありつつボールや人を捉える。

この時代は5vs5風合いの同数マッチング。のちの4-2-4のブラジルや4-1-2-3or4-3-3のイングランド等では、後方数的優位性の、後方から戦略を組み立てる守備と攻撃へ。ほか攻守切替の速さ、攻守10人一体へ若干の改良。

ハンガリー代表の通称"マジックマジャール"からも来ているとされるMMフォーメーション。文献や出典では9番のヒデクチが下がったM・Mの形とされているが、このイングランドvsハンガリーの試合がハンガリー代表の姿かは不明だが、WMのセット体形を基本に9番ヒデクチが偽9番扱いでオフェンスを司る引いてボールを受けるプレーが多い。
このハンガリー代表では、10番・9番・8番のプスカシュ・ヒデクチ・コチシュが得点を量産する陣容で、中でもプスカシュとコチシュが量産。ヒデクチはややチャンス演出に回るタイプ。
イングランドとハンガリー共に11番・7番の両サイドは、基本タッチライン際が主軸でボールを引き出す。

フィールドプレーヤー10人一体の風合いも時折あるが、90分構成の7-8割は5人5人の分業制の風合いが強い。全体的に間延びの大きいセット体形である。
試合の流れを読んで90分をコントロールしたり、労を惜しむようなスタンスの芽生えはもっと先の時代というのが伺え、ボトムアップ・トップダウンの適切なコンパクト性の風合いはまだ弱い。こういう時代から、医科学の進歩や情報媒体の進歩によって、近代サッカーに至る運動量やスピードの向上やメソッドの確率が生まれてきたのでしょう。

何かと否定されるポゼッションという概念ですが、このイングランドvsハンガリーでは、11人一体の、タメや追い越し、ディフェンスセット・オフェンスセットの切替が不足しており、すぐシュートやドリブルを互いのゴール前で仕掛け、すぐ奪われ、攻め合うサッカーになっています。
一旦落ち着かせ、帰陣し帰陣させ、適切な距離感のセット体形をつくり、11人全体でジワジワ攻める・ジワジワ守るものが足りなく、結果として休む時間がつくれず疲れるサッカーのように見えます。
テニスのスマッシュを狙うときのように、爆発的なスピードやパワーを相手に仕掛けたいならば、なおさら体力コントロールで優位性に立てなければ、必要なタイミングでパワーやスピードが不足しがちになるでしょう。特に戦力差が5分5分の相手や弱者相手でなければなおさら。
体力コントロールの優位性などの試合巧者になれれば、速攻や擬似カウンターの威力も高まるはずです。

>ハンガリー代表は、ほぼ国内2チームセレクションの陣容。ブダペスト・ホンヴェードFCとMTKブダペスト。プスカシュはのちにレアルマドリードへ、コチシュとチボルはのちにバルセロナへとハンガリーカラー伝承。

>試合映像の選手特徴。互いの4番が金髪テイスト。172cm小兵の左利きがプスカシュ。

【大まかなサッカー史】
→前方パス不可から前方パス可へ ラグビーサッカーから脱ラグビーへ
→3人制オフサイド 守備側有利の時代
 →1-2-3-5フォーメーション 主流
 →1-2-2-6/1-1-1-8/1-1-2-7フォーメーション ENGLAND & SCOTLAND
→2人制オフサイド
 →マンツーマンシステム WMフォーメーション
→偽9番 ディステファノ & ヒデクチ
→マンツーマン&リベロシステム
 →1954W杯のスイス代表がリベロシステムを採用 (リベロが後方2人目オフサイドコントロール)
 →リベロシステムがイタリア・オランダ・スペイン・フランス・西ドイツらへ伝承
→ペレ ブラジル代表 4-2-4 ゾーン
→ボビーチャールトン イングランド代表 4-3-3 ゾーン
→西ドイツ・オランダ・イタリア 1-1-3-3-3 or 1-1-4-2-3 マンツーマン&リベロ


【大まかなナショナルチーム史】
初回のW杯でウルグアイが優勝 (開催国)
戦後の1950W杯でブラジルが初優勝 (開催国)
ハンガリー代表がワールドカップ1954の決勝西ドイツ戦まで32戦28勝4分無敗
1954W杯で西ドイツが初優勝
1958W杯でペレ擁するブラジルが優勝
1962W杯でペレ怪我のブラジルが優勝
1966W杯でイングランドが初優勝 (開催国)
1970W杯でペレ擁するブラジルが優勝
1974W杯で西ドイツが優勝 (開催国)
70年代 アルゼンチン・イタリア・オランダ・西ドイツらが隆盛の時代。
70年代 イングランドが低迷の時代。(リヴァプールらクラブは躍進)
90年にかけて アルゼンチン・西ドイツが隆盛の時代。プラティニのフランスが台頭。記録よりも記憶に残った黄金ブラジル。


【関連】
┗ WMフォーメーション Wikipedia
┗ マジック・マジャール Wikipedia
┗ カール・ラパン (リベロシステム) Wikipedia
┗ フェレンツ・プスカシュ Wikipedia
┗ ヒデクチ・ナーンドル Wikipedia
┗ シャーンドル・コチシュ Wikipedia
┗ スタンリー・マシューズ Wikipedia

【プスカシュ】

【コチシュ】

【ヒデクチ】


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