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タイガー&ドラゴン 宮藤官九郎✖️長瀬智也 その2

あらすじ

子供の頃に両親が借金を苦に自殺し、「笑い」を忘れてしまったヤクザの山崎虎児(長瀬智也)は、ひょんなことから浅草で借金の取り立て相手落語家の林屋亭どん兵衛(西田敏行)の高座を聞いて感動し、「俺を粋でオツな男にしてくれ!」と拝み倒し必死の思いで弟子入りを志願する。
どん兵衛は虎児が属する新宿流星会の組長から400万円の借金をしていた。
そこで虎児は、噺をひとつ習得するごとに10万円の「授業料」(ドラマの途中から20万円に値上げ)をどん兵衛に支払い、それをそのまま「返済金」として虎児に支払うという奇妙な契約をどん兵衛と交わすことになる。
こうして林屋亭門下「林屋亭小虎」として、落語の修業を積んでゆくこととなった虎児。
ヤクザと落語家という二足のわらじを履く生活を始めたが、根っからのヤクザである虎児に笑いの才能が無く困っているところに、かつて「落語の天才」だったが、過去のとある事件で廃業し、現在は裏原宿でダサくて売れない洋服店「ドラゴンソーダ」を立ち上げて店主となっているどん兵衛の次男・谷中竜二(岡田准一)と出会うことに。
彼らの周囲で起こる大騒動を糧に、虎児は「粋でオツな男」を目指していく。

解説と感想

ストーリーは毎回、古典落語の演目をベースにした一話完結の形式で進行する。
まず前半部分で本編ストーリーの題材となる演目をどん兵衛が寄席の高座で演じ、更に長瀬智也などが寸劇形式で噺を再現して内容を分かりやすくし、後半部分で小虎が同じ演目をストーリーで起こる出来事を元に本編とリンクした形にアレンジして演じる。
この古典落語とドラマで起きた出来事をリンクさせるという天才的な構成が、落語を知らなかった若者に落語の面白さを教えるきっかけになり、落語ブームを起こすきっかけになった大ヒットドラマ。
竜二のファッションストアの店員で酒豪だが男運の悪いリサ(蒼井優)と虎児の舎弟銀次郎(塚本高史)が付き合うきっかけになったエピソード「芝浜」、虎児の兄貴分の日向が組長に逆らって一般人女性と結婚することになりどん兵衛師匠の弟子でリアクション芸人のどん太を巻き込んで「組長の機嫌を損ねずつつがなく結婚式を執り行う」ミッションを虎児が実行するエピソード「饅頭怖い」、虎児が自分なりの笑いを追求することを決意するエピソード「茶の湯」、どん兵衛師匠と組長が学生時代に愛した女をめぐる男のやきもちと見栄が引き起こす騒動のエピソード「権助提灯」、どつき漫才を十八番にした夫婦漫才師の夫婦愛のエピソード「厩火事」、竜二がかつて天才と言われながら落語を辞めた理由が明らかになるエピソード「猫の皿」、西田敏行がインチキフランス語で「フランシーヌの場合は」を熱唱し笑福亭鶴瓶が高座に上がるお宝エピソード「出来心」、絶妙なアレンジに唸らされる「粗忽長屋」「品川心中」、怒涛のハッピーエンドに雪崩れ込む「子別れ」まで、古典落語とドラマの絶妙なリンクに爆笑しながら唸らされる。ヤクザ社会のしがらみに縛られながら落語に熱中する虎児がはまっている長瀬智也、ツンデレで落語の天才の竜二を演じる岡田准一、蒼井優や塚本高史や西田敏行や宮藤官九郎作品常連の阿部サダヲや荒川良々、笑福亭鶴瓶や春風亭昇太ら現役の落語家、ゲスト出演の薬師丸ひろ子や清水ミチコや古田新太や小日向文世の絶妙なアンサンブルが、見事。
大笑いの連続の展開の中で、虎児とどん兵衛師匠一門との擬似家族的な絆がしっかり描かれている。
宮藤官九郎作品の中で、「流星の絆」と並んで笑いとドラマのバランスが上手く取れている傑作ヒューマンコメディドラマ。
「タイガー、タイガー、じれっタイガー」

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