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プロミシング・ヤング・ウーマン 性暴力という魂の殺人に対する過激な復讐劇

あらすじ

「プロミシング・ヤング・ウーマン(将来を嘱望される若い女性)」でありながら、ある事件が原因で医大を中退してしまったキャシー(キャリー・マリガン)は、30歳近くなった現在も両親と同居中の身の上でコーヒーショップでバイト生活中。
ぱっとしない感じの彼女だが、実は夜な夜な派手なメイクと服装でバーやクラブへ出向き、泥酔したふりをして、送るフリをして一夜を共にしようと近づいてくる性差別主義者たちに制裁を加えている。
そんなある日、医大生時代のクラスメートだったライアン(ボー・バーナム)が、キャシーの勤めるコーヒーショップを訪れ、ふたりはデートをする仲に。
だが、「アル・モンロー」というかつての同級生の名を聞いたのをきっかけに、キャシーの行動はさらに過激に爆走しはじめる……!
タイトルは、アメリカのスタンフォード大学などでの性犯罪加害者が無罪放免されるための常套句から。

感想

70年代に、「レイプリベンジムービー」が流行り、「テルマ&ルイーズ」「キルビル」のように性差別的クソ男に痛快なリベンジをぶちかます映画が、作られた。
性犯罪の加害者や傍観者の罪を問うテーマでは、ジョディ・フォスター主演のアカデミー賞受賞作「告発の行方」がある。
昨年アカデミー賞脚本賞受賞作のこの映画も、今回数々のリベンジムービーに加わった。
だけど、今までのリベンジムービーとは、かなり毛色が違う。
医大を中退したキャシーは、夜な夜な胸元を開けたワイシャツや太腿が見える露出度が高い派手な服装をしてバーで酔ったフリをして、酔っぱらい女性を家に送るフリをして家に連れ込むデートレイプ野郎に制裁を加えていた。
その復讐劇とキャシーが医大を中退したのには、キャシーの幼馴染のニーナが医大で遭遇した性犯罪に関係があり、その性犯罪に関係あるとされたアル・モンローが同級生と結婚すると聞き、キャシーの復讐劇はさらに過激化していくというストーリーで、酔ったフリをして家に連れ込む男にシラフに帰ったキャシーが「アンタ何やっているんだよ」など問い詰めるリベンジシーンをブラックコメディ風に描いていたり、キャシーの復讐のターゲットがニーナを暴行した医大の同級生だけでなく学内でのニーナの噂を鵜呑みにして優秀な学生である加害者学生を無罪放免した医大の学長やニーナの噂を広げる同級生や傍観者にも及び「被害者が愛する人だと見方が変わるでしょう?」と被害者ニーナの痛みを追体験させる復讐劇が性犯罪の罪を観る者に追体験させるストーリーの構成が秀逸。
乱れた服装で酔った女性につけ込み送るフリをして家に連れ込む男や性と酒に奔放な女性が性犯罪被害者だと自業自得と切り捨てる女性や傍観者の性差別的な意識のバイアスなどを問いつつも、キャシーが復讐心のため囮捜査的な送り狼男への制裁やキャシーの親友ニーナの事件を隠蔽した医大の学長に対して精神的な攻撃を与える知能的な攻撃からエスカレートしていく狂気を描くことで性犯罪被害者の「事件から時が止まってしまった」癒されない苦しみが観る者に伝わりほろ苦い後味。
カラフルでガーリーな衣装やインテリアとパリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズやチャーリーXCXなどのBGMも楽しく、キャリー・マリガンの鬼気迫る熱演もあって、単なるリベンジムービーというだけでなく「ジョーカー」のようなサイコサスペンス映画の域に達しているサスペンス映画。
「じゃあ女にとって地獄の悪夢は何?」

#プロミシング・ヤング・ウーマン #性暴力
#キャリー・マリガン #アカデミー賞受賞

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