リハビリテーションの現状に思うこと①~リハにおける選別~

すっかり朝晩涼しくなり寒いくらいになってきました。
体調管理に気をつけていきましょう。


私は急性期病院でOT(作業療法士)というリハ職をしています。
(OTについては過去記事をご参照ください)
作業療法(OT)とは


今回は日頃からリハビリテーション(以下リハ)の現場で感じていることを書きたいと思います。
今日のテーマは「リハにおける選別」です。
私は脳外科病棟を担当しています。
患者さんの症状は軽微の方から意識不明の重篤な方まで様々です。
軽微な方は家に帰れますが重篤な方はどうなるのでしょうか。


その話の前に病院の役割分担について話したいと思います。
病院は大きく分けると①急性期病院、②回復期病院(リハ病院)、③療養病院の3つに分けられます。
(他にもありますがここでは割愛します)

病気になってまず入院するのが急性期病院です。
改善の見込みがある方で今のままでは自宅に帰れない、もっとリハをした方が良いという方はリハ病院へ行きます。
療養病院は改善の見込みが無く医療処置が必要な方が入ります。


話を戻します。
病気の状態が落ち着いてくると(だいたい1~2週間)、次にどこへ行くか選択を迫られます。
入院期間が長くなると診療報酬(収入)が下がる仕組みになっているためで病院が冷たい訳ではなく仕組みに原因があるの
です。
選択肢は概ね①自宅、②リハ病院、③施設、④療養病院、のいずれかになります。

その仕組みの中でリハからこぼれ落ちていく人が出てきます。
具体例を挙げて説明します。


ケース①
60歳代の方。
脳出血で入院。
長く意識が戻らず、状態も不安定でリハも進まず。
3週間ほどで意識が戻りはじめ、なんとかリハ病院への転院が決まる。

3週間意識が戻らないと療養病院方向となりやすいのが現状です。
この方も療養病院転院が決まりそうでしたが、なんとか粘ってリハ病院へ行くことができました。
療養病院では寝たきりとなる可能性が濃厚でリハも非常に限られます。
60歳代で療養病院へ行くと10年以上寝たきりとなる可能性が非常に高くなるだけあって、リハ病院転院が決まって本当に良かったと思います。
しかしこういったケースは稀で、機械的に療養病院転院が決まることがかなり多いと思います。
その方が病院経営的に望ましいからです。

ケース②
60歳代の方。
脳出血でそれなりの片麻痺が生じていました。
客観的にはリハ病院へ行くことが望ましいと思われたのですが、本人は自宅退院を強く希望。
なんとか自宅で生活できそうな動作能力があったのですが、自宅に帰ると受けられるリハの時間は極端に少なくなってしまいます。
なかなか納得できないままリハ病院へ移られました。

この方の場合、自宅で生活しながら十分なリハが受けられればより充実した生活を送ることができたと考えます。
しかし自宅へ退院すると病院外来で週数回のリハを受ける程度となってしまいます。
リハ病院へ行くことがリハ量を確保する唯一の条件となっているのです。


このように十分なリハを受けられるには条件があるということです。
そして急性期病院に長く入院していられない状況下でこぼれ落ちていく方が多数存在します。
さらに急性期病院によってはリハスタッフが少なく十分なリハを受けられないということも多々あります。
いわばリハにおける患者の選別が間接的に行われている状況です。
こんな記事があったので載せておきます。
「 急性期病棟にもリハビリ専門職を配置し、ADL改善効果を正面から評価せよ」
(この記事にもいろいろ突っ込みどころはあるんですが…)


重篤な症状での入院、高齢の方の入院ではリハの有無や質で人生が大きく左右されます。
それにもかかわらず十分なリハを受けられないケースが多々みられます。
それどころかリハは制限される方向にあります。
超高齢社会に向けた医療費削減の流れの中で医師・看護師に比べてリハの政治力の弱さが一因と考えられます。

リハの量を十分確保し、その質を上げることが非常に重要だと思うのですが、現状は厳しい。
現状を変えるには私たち1人1人がどのような医療・リハを受けたいかについて考え、発信することが重要だと考えます。
それは「自分がどう生きたいか」という本質のテーマに直結します。


次回はリハの質について書きたいと思います。
いかにリハから自立していくか、という観点も非常に重要ですがそれはその次に書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?