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深海よりもずっと奥深く切ない究極の片想い映画 

一言で感想をどうぞと言われたら今回のnoteのタイトル通りです。
※こちらはネタバレあり。感動したところをひたすら語ってます。元々吹き替え派ではないわたしだが予告を見てこれは是非観に行きたいと思い、公開された翌日に吹き替え観賞した。

リトルマーメイドとは一瞬別の話題にはなってしまうのだが。
人魚、に因んで是非一度セイレーンの伝説について調べてみてほしい、セイレーンはギリシャ神話に出てくる海の怪物である。人魚というロマンティックなイメージからは程遠く恐ろしいもので、船乗りの男らを甘美な歌で魅惑し、その影響で彼らを溺れ死させる気持ちにさせてしまったり、海へ引きずり込まれ難破に遭わせてしまうなど危険な存在である。いったいどれだけの魔力がその歌に備わっているのか、あまりにもその歌の誘惑に負けてしまうほど命を投げ出したくなるのか…。時代と共に破滅へと導く存在から、現在でいう神秘的で美しきマーメイドへと言い伝えが変わっていったそうだ。

パートオブユアワールド (リプライズ)

映画の序盤で、船乗りの男らがセイレーンの伝説を信じて疑わず、人魚らしき影を海で見つけ槍で捕えようとするシーンがある。それをエリックに注意されつつ、セイレーンは実在すると訴える船員。人魚の神話が一般的に知られている設定なのか~となんとなく思いながら観ていた。

人生で初めて地上の世界を目の当たりにするアリエル。船を見つけてこっそり様子見をする。その船の上で誕生日を迎えて気持ちが昂っている王子に調子乗りすぎだと諭すグリムズビーに、エリックはもっと世の中を見たい、知りたいと願うその好奇心を元に国のリーダーを目指していると話す。そんなエリックを見て、人間界を知りたい自分と同じだ、と共感し、型にはまらない生き方を自ら切り開こうとする彼に惚れるアリエル。その後船は嵐の被害を受け難破し、エリックはアリエルに救い出される。
アリエルが海辺でエリックに歌う『パートオブユアワールド(リプライズ)』。「近くに、ずっとそばにいたい、いさせて」という歌詞を私自身の視点から分析すると、恋愛対象が人間であっても関係なく好きになってしまったアリエルが歌の中で彼に自分を見てほしいと強く願っている。それがあまりにもド直球なピュアさで、想い人へ抱く欲望が分かるからこそ、わたしはこのシーンを見て学生時代の片想いを思い出し共感したのである。

わたしを見てほしい。
あなたに振り向いてほしい。
どうか、あなたと一緒にいさせて。

まるで、そんな言葉たちが溢れ出るように感じられどこまでも一途なアリエルに感情移入してしまい涙を堪えることができなかった。それと同時に豊原江理佳さんの歌声に圧倒されてまた泣いた。

まだ見ぬ世界へ / Wild Unchartered Waters


なんとか助けられ、城に戻ってから介抱された後自分の命の恩人とあの歌声のことしか考えられなくなるレベルにまで至るエリック。彼の精神状態がとうとうあそこまで行ってしまってる。アリエルの歌声自体を例のセイレーンが持つ強力で魅惑的な歌の特徴を設定として取り込んでいたのかなと。
アリエルはあくまでも彼の意識を少しずつ取り戻す為に歌ったわけだが、これはもうすっかり歌の魔力に憑りつかれた様子半端ない(笑)女王にはこれ以上危険を冒さないよう航海を禁じられ、存在もしない女性を探し出すことさえ諦めろと説教される。自分を助けた相手が分からず、なのに歌声の主は幻に思えないくらい実在していたと認識しているエリック。

そんなの簡単に諦めが付くはずがなくその心の内をさらけ出して歌うのは、『まだ見ぬ世界へ / Wild Unchartered Waters』。自分の望むものを、周りから理解されず何も出来ないこのもどかしさに苦しめられ、未知の海域へ行ってまでも自分を魅了した相手とまた巡り逢いたいと懇願する。てかコレが自分を救ってくれた相手の歌に対して(しかもそれがマーメイド)へのラブソングだと思うと、歌詞を読んでて内容が激アツすぎてズッキュンってなったし、どんだけアリエルの歌に憑りつかれたんだ、とも思った(笑)この曲、アリエルの「アア、ァァァァ~(伝われ)」が入っているのがまた味出ていてすっごい好きなんだよね。

アニメの中では【ザ・ハンサムなディズニープリンス✨】的なキャラだったけど、実写だと彼が幼い頃に難破事故で両親を亡くし国王夫妻のもとで育てられ、成長していくうちに見たことない世界への関心を持つようになり、さらに自分の暮らす島国への愛国心を持ちつつもっと他の国との取引や自国の国際競争力への意識を高く持っている人物であるというバックストーリーが加わり、かつソロ曲があるのがまためちゃくちゃ良いキャラ像に仕上がっていて拍手喝采である。

何もかも初めて / For The First Time

映画の数多い変更点の一つになるが、アニメ映画では浜辺で偶然エリックに再会後助け出されるが、実写だと漁師の網にたまたま引っかかったところで海から救い出され、エリックとは城で再開を果たす。もうね、ここからの、人間になったアリエルのシーンが一番好き…。
ついに、とうとう人間界降臨してしまった。ついに手に入れた足、またその足で踏み込んだ大地。夢が現実としてようやく叶い、今まで憧れていたものがすべて目の前にあることに興奮が止まらないアリエルの心情が溢れる『何もかも初めて / For The First Time』。城で保護されることになり、召使いに着替えを手伝ってもらいつつエリック王子が謎の命の恩人を探し続けている噂を耳にした途端、アリエルは動揺を隠せずにはいられない。その表情をキャッチした召使い、(もしかすると、彼女が王子の探し求めている子だとしたら?)とピンときてすぐさまエリックを読んで会わせることに。
そう!!もうここからが最高すぎる!知らせを聞いた王子、自分がまさに会いたかった美しい歌声の持ち主だという可能性への期待で彼女がいる部屋へと駆け上がる場面、そして早く彼に会って胸の内を伝えなきゃ!とワクワクするアリエルの心の動きが最高潮に上がっていって、それと同時進行して大胆になっていくこのメロディーと相まって高まっていくテンションよ…。

それなのに!!!!!声を出すことが出来ないという無力さヾ(:3ノシヾ)ノシ(ジタバタ)ムズキュンにも程がある。
「この子は話すことが出来ないのです」と王子に説明する召使い。落胆するエリックの表情に胸が痛くなった。思い通りに声を発することも出来ず絶望するアリエルに感情移入し心臓エグられて泣いた(2回目)。ガッガリした表情だがそれでも身寄りのない彼女を気に掛け、好きなだけ城に居てもいいと伝えてから部屋を後にする(イイ人すぎる)。ひとり部屋でポツンとなって現実を突き付けられたアリエルがまた切ない…。
この曲の歌詞の内容で絶賛したのは、人間界のモノへの関心と恐れをよく描かれていて(初めて火に触れて火傷したりとか、吹替歌詞にはなかったけど英語の方だと女性が着る服の窮屈さについても取り上げている)元人魚としてのカルチャーショックみたいなものを上手く表現していると思ったこと、
声を足と引き換えにした為に思いを伝えることがままならない、それでも自分が人間になるという決断をした責任と同時に孤独感を表していると感じたことだった。

感想

アニメ映画ではお馴染みの曲もストーリーも今回どのように演出されているのかを大いに期待して行った。でも予想してなかったのは、映画で描かれていた、人へ抱く一方的な恋愛感情の辛さ、どう足掻いても自分の思い通りにならないもどかしさ。アニメでは描き切れない片思いのリアルさといいその儚さを表現したストーリーに仕上がっていたこと。それと、神話のセイレーンの要素も含まれてまたストーリーに深みを出しているところ。オリジナル曲に込められたアリエルとエリック、それぞれの感情の揺れ動きと自分の意志に従うと決めた強い精神で想いを果たそうとするのが心にギュインときた。

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