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No7.ガンだった・・・ガーン

2016年3月15日 朝から気分が悪かった。

最悪手術をしなければいけないこと、ここ半年続く血便は
日を追うごとに悪くなっていたからだ。

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今思えば体調は最悪だった。便は細く出にくいこともあった。
それにティッシュに血しかついていない
下血(消化管から出た血が肛門から排出されること)のみの時もあった。
だけど、お腹が痛かったわけではなかったから
自覚症状と言えばこれぐらいだった。
こんな状況でも僕の頭の中には、癌という言葉は全くなかった。

再検査ため午前の仕事を休み、一人で病院へ向かった。
受付に紹介状と預かったCDロムを渡して問診票を書く。
何故かその手は震えている。
無理もない、最悪手術を考えて病院へ受診しているから不安でしょうがなかった。一通り問診を書き終え、受付に手渡すと直ぐにCT検査へ案内された。

週明けということもあり、多くの患者で病院は一杯だった。
紹介状を持っていなかったらあまりの多さに諦めて帰ってもいいくらいだった。

あまりに長いので看護師に様子を伺うと、CT画像についてドクターたちが話し合ってるようだった。少し不安になった。
ドクター数人が集まって検討する内容なのか?
待合室にたくさんいたはずの患者は次々と呼ばれ帰っていく。
お昼ごはんの時間のタイミングも重なって病院は落ち着いてきていた。
「藤井さん、こちらの診察室へ、どうぞ」優しく看護師に呼ばれた。

部屋に入ってすぐ、パソコンに映し出されたあの忌々しい大腸カメラの炎症の写真と、さっき撮ったばかりのCT画像が目に飛び込んできた。
「こちらへどうぞ」イスに座るよう促され、医者は続けた。

「あなたの大腸、直腸から約20cmのところにある炎症は、癌です」

ま、まさか・・・
「CT検査の結果、大腸のS上結腸に腫瘍が一つ、リンパ節にも転移している。
あと肝臓にも2〜3箇所腫瘍があります」「・・・・」「・・・・・」

・・・いつから話を聞いていないか、もう分からない。
あれ、今、先生なんて言ったっけ?
・・・癌っていった?・・・ん?

自分自身が置かれている状況が飲み込めなかった。
「ご家族はいらっしゃいますか?」ドクターの声が聞こえる。
「明日もう一度ご家族と一緒に来て下さい」
力なくうつむいたまま診察室をあとにした。たった今知った事実を
多恵子に伝えなければならない。少しでも明るく振る舞おうと、震える手で
仕事中の彼女にメールを送った。

「癌だった・・・ガーン」

ハンドルを握る指の感覚が薄れていくなか、
ひどく落ち込んだことを思い出す。

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