No3.ワクワクはドキドキへ、そして。

12月のどんよりした曇り空で、
前日から北風が吹き続くとても寒い日だった。

車の中にはいつでも海へ行けるよう道具は積みっぱなし。
いつでも準備OKだ。
だけど、日の出が遅い冬は、仕事前の早朝サーフィンは難しい。
サーフィン欲は絶頂、サーフィンに行きたくてウズウズしていた。

その日は午前中まで仕事だった。
久しぶりに海へ行こうと、午後から友人を誘っていた。
朝からワクワクが止まらない。
北風が吹き続ければ波があるのは間違いないからだ。

仕事が終わると一目散に車に乗り込んだ。
途中友人と合流し、大好きな音楽をかけながら海へ向かう。

潮風香る車窓から海が見え始めるとワクワクはドキドキへ。
’’今日は、どんな波なんだろう’’
前日から吹き続く強めの北風は、遠く沖の方から波をウネリにしてくれる。
’’やった!ウネリになっている!’’
’’最高だ!絶対波はある!’’

僕たちの期待は絶好調。
いつものポイント、はやる気持ちを抑えつつ
波チェックもそこそこにウェットスーツに袖を通す。
ココナッツ香る滑り止めのワックスを適当に塗り、急いで浜辺へダッシュ!

そこは西日が海へ落ちる日本海。
夕暮れ時は波に夕日が映り込み、淡いオレンジ色。
まるで黄金の波。

僕たちは、黄金の波に身を任せ
はるか遠い沖から生まれる自然のパワー、地球のパワーを全身に感じ
日頃のうっぷんを晴らします。

と、次の瞬間・・・一瞬目の前が真っ暗になりました。
サイズの大きくなった波が、急にカール状に巻き始め
同時に前方に投げ出され、頭から海に真っ逆さま。

ドン!!!!!!!!!とても鈍い音が聞こえた。

受け身をとる間もなく、投げ出された場所は、水深がとても浅い場所。
膝くらいしかなく、思いっきり頭を海底に打ち付けていました。
打ち付けた瞬間、肩から手の指先まで電流が走るような痺れを感じた。

何が起こったのか分からないけど水の中。
起き上がらないと溺れてしまう。よし、痛みは感じるけど体は動く。

ボクはフラフラと海から上がり、痛みを我慢しながら
友人へ大きく両手でバツサインを送った。
何かあった時のサインです。
サインに気づいた友人に
「頭を海底に強く打って痛みがある」といい海を後にした。

痛みはあったがムチ打ちくらい程度だと思い
ビールで痛みを紛らわし床についた。
朝、目が覚めると起き上がることができないくらい
痛みがひどくなっていた。ヤバい。。仕事どころではない。

雨が降っているその日は、
風にあおられる傘をまともに持つことさえできません。
病院に着き、診断を受けると
「今すぐ緊急入院です。首の骨が2箇所折れています」
絶対安静3ヶ月の入院生活が始まりました。

実は、入院した次の日は彼女とボクが楽しみにしていた
両家の顔合わせの日だった。

両家が揃ったのは病室。御見舞の時でした。
ボクは運良く、首の骨が2箇所折れていたが
後遺症が残ることはありませんでした。

この時、彼女がハッキリとボクの両親に向かって
「私が彼を看病します」と答えた言葉は力強く嬉しかった。
毎日仕事終わりに病院へお見舞いに来てくれる
彼女の姿は聖母マリア様のようだった。


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