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ブランディングで大切なことは「価値を発見すること」。だとして、そもそも価値ってなんだ?

ブランディングを仕事にしています。ゴールは、企業や商品がターゲットとして設定する方たちに価値を伝え、選ばれるようになること(商品であれば買ってもらうこと)。その過程で「価値の発見」が求められる。以前の記事でも書いたのだが、「発見」というと画期的で、オリジナリティがあって、唯一無二のニュースでなければならないという印象を持つかもしれないが、そうではない。たとえ凡庸な価値であったとしても、それが他社やライバル商品と比べて、魅力的に伝われば“勝ち”なのだ。

価値は「機能的価値」「情緒的価値」「社会的価値」の3つのレイヤーに分けられる。ブランディングの方法は世の中に多くあるので、このレイヤーがすべてに通用するものではないのだが、比較的スタンダードな手法だと思う。それぞれについて、具体的な事例とともに解説・紹介をしてみようと思う。

例として、世界一売れているプロダクト『iPhone』を題材にしてみよう。まずは第一段階の価値である「機能的価値」とはなにかを具体的にいくつか。
・電話ができる
・WEBが閲覧できる
・写真を撮影できる
・おサイフ代わりになる

たしかに機能的な価値ではある。…が、誰もがスマホを持っている現代においては、価値にならない。もちろん他社のスマホでもかなえることができる機能であるし、消費者の魅力にはならないからだ。昨今のスマホの広告を見ても、このあたりを謳っているものは皆無だ。

では機能的価値では勝負できないのかと言えば、そんなことはない。もうすこし深掘りをすれば可能だ。
・高性能チップでサクサク動く
・セキュリティ機能がすごい
・高精細(4Kや8K)で写真・動画が撮影できる
・一度の充電で〇日もつ

など。最近のiPhoneの広告ではセキュリティ機能を訴求することが多いような気がするが、時代性なのだろう。また、このあたりの訴求だと他社のスマホとも差別化できる可能性が高いため、選ばれる理由になりうる(実際はiPhoneという時点で差別化になっているのだが)。ちなみにデザイン性やカラーバリエーションも機能的価値に入るため、訴求のポイントとして謳われることも多い。

iPhone12のCMより

つぎに「情緒的価値」。情緒=ココロなのだが、英語ではEmotinal Benefitとなる。「エモ」で勝負するというレイヤーだ。コモディティ化(一般化/同質化)したスマホのなかでの差別化を考える場合、心をどう動かすかを価値にすることもある。ふたたびiPhoneで例を挙げてみる。
・ワクワクする気分になる
・持っているだけでおしゃれな気分になる
・高いセキュリティによって安心できる

など。iPhoneを所有することで、その人の気持ちがどう変わるかということだ。

最後に社会的価値。こちらはさらに上位概念を伝えるときに有効だ。商品というよりも、企業ブラディングのときに採用される場合が多いのだが、さきほど同様にiPhoneの場合で想像してみる。
・あらゆる情報にアクセスでき、情報格差がなくなる
・未来のソリューションが生まれるきっかけをつくる
・人種や国を超えてコミュニケーションできる

ほかにもたくさん考えられるのだが、わかりやすいところではこんな感じだろうか。社会的価値にもなると、すぐに“売り”にはつながりづらいこともあるが、いわゆる一流企業が世の中において社会的役割を果たしていることをアピールする際にはとても有効だ。昨今ではSDGsへの取り組みなどが社会的価値を伝える方法として利用される。

最後に、私の好きな事例をひとつ紹介しておく。ノンアルコールビールというカテゴリーは、今でこそ一般的になったが、『キリンフリー』という商品が発売されたときの事例。『飲酒運転を、0.00%に。』というコピーが、高速道路沿いのOOHに掲げられていた。商品の特性を伝えながら、同時に社会問題を解決するアプローチが取られていて上手だな、と思った記憶がある。

https://www.hit-ad.co.jp/

企業や商品の置かれた環境、競合商品が何を言っているか、業界全体が抱える課題、さまざまな要因を鑑みながら、どんな価値を伝えていくかを考えることもブランディングには欠かせない。かならずしも画期的でオリジナリティにあふれている必要はない。逆に画期的すぎる価値を訴求してしまうと、消費者の想像の域を超えてしまって、魅力が伝わらない可能性もある。あらゆる可能性を検討し、A/Bテストなどを行いながら、最適な価値へと着地させていくという方法も検討してよいと思う。

ブランディングやブランドメッセージ開発を検討されている方はお気軽にご相談ください。

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