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び~とも通信小説 ビートルズとともに始まる 第6話予告編「第2部 キャヴァーン・クラブ復帰編 奇蹟の再会! ジョンとピート!」by Terry Holiday

依然として生還に謎が残るジョン・レノンは30年振りに、地元リヴァプールののマシュー・ストリートにあるキャヴァーン・クラブを訪れ鑑賞していた。しかし出演しているバンドはビートルズの曲を演奏するコピーバンドばかりのため、ジョンにとっては退屈だった。

「う~ん、クラブ自体も客層も以前と違うなぁ」

そしてビートルズの元メンバーでドラマーであるピート・ベストの率いるピート・ベスト・バンドが登場して演奏したが、こちらも1950年代からのロックンロール曲のカバー演奏ばかりだった。堪えられなくなったジョンは席を立ち、ステージ裏に引き上げたピートを訪ねた。ピートは自分の在籍していたビートルズのメンバーだったジョンと突然の再会に驚きながらも、ジョンに嫌味を交えて挨拶した。

「これはこれは、大スターのミスター・ジョン・レノンではありませんか。こんな田舎に何の御用ですかな?」

「なあピート、君たちにオリジナル曲はないのかい? 僕たちビートルズが他人の既成曲をコピーしていたのは、自分たちのオリジナル曲を作るためだったはずだろう? 忘れたのか?」

ジョンはピートを問い詰めた。ピートは途端に怒りながら反論する。

「おいおいジョン、何を言っているんだ? 僕たちビートルズは、人にビートルズを聴いてもらうためにコピーを一生懸命していたんだよ。君のほうが忘れているぞ。ここは君のような、自己満足しているアーティストの発散の場所ではないんだよ!」

ジョンは何も言い返すことなく、ピートの発言を聞いている。

「ビートルズもライブをやらなくなってからは自己満足だよ。定期的にアルバムを作るだけでファンを引き留めようなんて卑怯だよ。まあ、その時に僕はいなかったから事情は知らないけどね」

旧友からの意見はジョンにとって、事実だと受け止めるのに充分だった。そして音楽界の現実を思い知らされた。

「そうかいピート、解ったよ。これからビートルズは、ここのキャヴァーン・クラブからライブ活動を再開するぞ!」

ジョンはまるで、1962年当時の自分に戻っていた。

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