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小さな冒険の始まり

コロナ前、仕事に疲れた時、私はよく旅行をしました。旅の始まりはいつも勢い。有給休暇を申請し、休暇期間に応じて行けそうな場所をざっくり決め、最も安い航空券が予約できたら準備OK。宿泊先は空港に向かう電車の中で決めて予約します。スマホ決済の時代、すごく便利になりましたね。コロナ後、どこに行こうか、いろいろ考えていました。


最初の冒険は病院

最初の冒険は病院でした。コロナ後、全く予想していませんでした。体に不調を感じ、近所のクリニックで見てもらったところ病気が見つかり、外科専門の病院で手術を受けることになったのです。

この冒険にパスポートは不要。手術後の痛さをまだ知らなかった私は、初めての入院という冒険になぜかわくわくしました。3泊の予定で、ほとんど着替えができない状態だったにもかかわらず、気分だけは盛り上がり、海外旅行で使ったスーツケースの中に、3日分の衣類と洗面用具、病室で読むための本を数冊入れました。

病院が交通機関の不便な場所だったため、スーツケースを自家用車に詰め込み出発です。初めての手術、どんな感じになるのか全く想像がつかず、でもなぜか不安はなく(主治医がテキパキした女性で頼れる感じの人だったおかげかもしれません)、運転もスムーズでした。

入院、そして手術

入院手続きを済ませ、パジャマに着替えたら入院患者の完成です。手首に着けられたネームプレートを見ると、何となく気分が下がってきました。

私が受けた手術は腹腔鏡手術です。お腹の3か所に穴をあける手術で、開腹手術と違って回復が早い、と言われました。おなかに小さな穴が3か所、あまり痛くなさそうな印象も受けました。

手術当日は、絶食の後、点滴を持ちながら手術室に行き、いよいよ冒険の始まり、と思いきや、麻酔のおかげで一瞬で手術は終わり、おなかの痛みとの闘いが始まりました。後で、手術は大変だったそうで、5時間近くかかったといわれました。

人によって症状が違う患者に対し、時間がかかっても仕事に集中して手術ができるお医者さんてすごいなぁ、と感心しました。また、毎日変わる看護師さんチームのテキパキとした仕事ぶりも久しぶりにチームワークという言葉の意味を感じた瞬間でした。医療チームはチームワークが大事だから、お互い尊重しあって仕事をするんだろうなぁ、と勝手ながら思っていました。

痛みとの闘い

今回の冒険は麻酔が切れた後が最も大変でした。痛みがじわじわ襲ってきます。穴3つで想像していた痛さのレベルが違います。10段階で10がMAXの痛みとすると8か9くらいあります。手術前、2くらいの痛さレベルで考えていたので、差がありすぎます。加えて、手術後次の日は「動きましょう」リハビリの始まりです。

おなかの痛さが全身に回った感じで、痛さと関係ない腕を動かすのもつらい状態です。腹筋を使ったり咳で感じる痛みは、自然現象を恨みたいくらいの衝撃です。寝返りも打てません(通常、寝返りは痛くて無理だと思うよ、と主治医は言っていました。)寝ていても、痛さを表情に出していたらしく、寝ていても看護師さんが「だいじょうぶ?」と声をかけるほどでした。

リハビリの痛みをこらえ、よろよろ動いているときに、ふと思い出すことがありました。明日退院ですが、自分で運転して帰らなければならないことです。自動車でわくわくしながら入院を開始した一昨日が遠い昔のような気がしました。知人に運転を頼もうかとは思いましたが、平日のため、急に頼むのは気が引けます。

そこで、主治医に相談したところ「そうですか。それなら痛み止めを多めに打っておくので、気を付けて帰ってください」と言われました。「はい」としか言いようがなかったですが、主治医この対応、本当に助かりました。

帰宅も冒険

退院の日。帰宅という冒険に出発です。リハビリ初日より、体を動かせることを実感しつつも、おなかの痛みはかなりある状態です。鎮痛剤のおかげでかなり緩和されていますが、腹筋を使うと痛みが押し寄せてきます。でも、初日に比べたら元気な自分に、無事帰れる自信が湧いてきました。

当日は、混まない時間帯を選んで出発。痛くなったら迷わず、駐車スペースに移動して休憩しよう、と自分ルールを誓って運転しました。

運転は意外と腹筋を使うことが多く、途中で何度も「いてて」と言いながら無事帰路に着くことができました。次回、入院することがあったら、運転手を頼むか、タクシーを使うでしょう。術後は帰路が大きな冒険でした。痛みを軽く考えていたことの反省です。

冒険を終えて

今回の冒険は、いろいろな気付きをもたらしてくれました。自分の体力のなさ、入院ベットで動けないつらさ、入院している患者さんそれぞれの思い、手術後の症状と自分の認識の甘さ、病院で働く人たちの専門性、病気を治してくれた主治医の手際の良さなどです。

このような冒険はできれば避けたいところですが、ここで得た気づきがいつか何かで役に立つといいなぁ、と思いながら綴ってみました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


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