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<期間限定公開>第7章:さらなる事業の展望を描く

良いものを作っても、儲からない?

事業を運営していると、顧客に価値ある製品・サービスを提供できているのに、低収益に悩まされることがあります。こうした時には、会社をめぐる内外の状況に、「利益を減らされたり取りこぼしている原因」が潜んでいるかもしれません。例えば、顧客の値下げ要求や、原材料費の高騰、代わりになる製品・サービスの登場といった利益圧迫要因があります。一方で、会社の内側でも、人材の技能が十分に育っていなかったり、社内の情報システムが未整備であったり、新技術を活かされてなかったり、狙った事業活動を実現できていなかったかもしれません。これらの社内外の要因があるゆえに、ビジネスモデルとして問題がない場合でも、利益が残らない可能性があります。
要するに、ビジネスはキレイゴトだけでうまくいかないということです。各社が利益を争って繰り広げる「競争」に勝ち抜かなければ、企業は生き残っっていけません。しかし、そうして各社が競争を繰り広げるからこそ、新しい製品・サービスが生み出され、経済と社会は発展していきます。
競争の中で、いかに生き延び、勝ち抜き、利益を得るか。これを考えることが経営戦略です。事業の持続的成功に責任を持つ人物として、経営者は、会社をめぐる内外の状況を冷静に分析した上で、目の前にある脅威を解決し、未来を開く機会を掴むために長期的な方針を定め、実行します。長期的な成功の可能性を高めるために、企業内部をよく観察し、どこを克服し、どこを改善すべきかを考えることは、まさしく会社の方針となる経営戦略の重要な構成要素なのです。本章では、企業外部に目を向けて分析する手法を紹介します。

外部の脅威をどう知覚するか

外部要因の分析における一番有名な理論は、マイケル・ポーターの5要因分析でしょう。彼は、事業の儲かりやすさを左右する外部要因は、大きく5つに分類しました。競争企業との競争の激しさ、新規参入の脅威、代替え品の脅威、買い手との価値の取り合い、売り手との価値の取り合い、というのが5要因です。ポーターは、企業がどのくらいの利益を得られる可能性があるかは、大枠では、これら5つの要因になって決まるとしました。

顧客を取り合う3要因

この3つの要因は、中央の縦3つと左右の2つに分けて考え右ことができます。まず縦の3つから考えていきましょう。「競合他社」「新規参入」「代替品」は、自社と同じ顧客と取り合っています。競合他社は文字通り、自社と同種の製品・サービスを扱い、直接に同じ顧客を取り合っています。新規参入は、その市場にこれから参入しようとしている別の業界の企業やスタートアップ企業です。代替品とは、結果として自社の顧客を奪っている別種の製品・サービスです。短期的には潜在的な顧客人数は一定だと考えるならば、会社が売上を伸ばせないのは、これらの競合・新規参入・代替品に顧客を取られているからだと考えるのです。
ここで大切なのは、会社の利益を最も圧迫しているのは何かという観点から、3要因を概観することです。利益に深刻なダメージを与えている要因にこそ集中すべきで、限られた経営資源をこの一点に集中すべきです。

価値を取り合う2要因

ポーターの5要因分析がユニークなのは、顧客や、部品・材料・設備を提供してくれる取引先ですら、自社が儲かりにくくなっている原因である可能性がある、と分析する点です。この分析では、顧客と協力者を、安知を自社から奪っているかもしれない交渉相手として見て、自社が過剰に安く商品を売ったり、過剰に高く材料や設備を買っていないかを分析します。事業の収益性が悪い時には、あえて、顧客関係や取引先関係を見つめ直してみるべきなのです。
買い手の対しても売り手も対しても、自社の利益をより得られるようになるかどうかのポイントは、どちらも主導権を握っているかという「パワーバランス」であることが知られています。まずは、顧客との取引関係を見てみましょう。自社が相手の生活や仕事にとって重要な製品・サービスを扱っていれば、顧客に対して強気の価格設定ができたり、あまり広告・宣伝をおこなわくても顧客の方から「買いたい」と接近してきます。反対に、自社の製品が顧客にとってあまり大切なものでなかったり、他社の商品で代用することができるときは、自社の立場が弱くなり、値下げしたり、多額の広告宣伝費を投じなければならなくなります。これは部品の供給業者(売り手)にも同じことが言えるでしょう。
仮に、取引先の主導権を握れたからと言って、いくらでも買い叩いて良いわけではありません。適切な価格水準を見つけ出し、互いに利益のある持続可能な取引関係を構築することこそが、事業を継続していくポイントとなります。

外部にある機会

PEST分析

企業の外部環境にあるのは、差し迫った脅威だけではありません。新たな事業機会が生まれることもあります。経営者の役割が自社の未来を切り拓くことであるならば、経営者は、時代を読み、機会をつかんで、さらに成長をを遂げていく方策を考える必要があります。
社会や産業の変化を分析する方法の一つとして、PEST分析があリます。
policy(政策)、economy(経済)、society(社会)、technology(技術)という観点から、世の中がどう変わりつつあるのかを分析し、そこから機会を探すというものです。

ペルソナ分析

事業機会につながる変化は、顧客その人の思考や行動みの見出すことができます。こうした顧客の変化を探る方法として、ペルソナ分析と呼ばれるものがあります。具体的な顧客像を自由記述でたくさん書き出してみて、顧客がどういう人であるかを、なるべくリアリティを持って把握しようとする方法です。そこに見られる大小様々な生活・思考様式の変化から、新しい機会を見つけ出すわけです。

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