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人的資源管理の特徴

ヒトの管理は他の資源と違って、どのような特徴を持っているのでしょうか。

人が他の資源を動かす

第一の特徴は、人的資源それ自体が、モノやカネ、情報等の他の諸資源を動かす原動力になっているということです。同様に、どれほどの大金を稼いだところで、それを実際に使うのは人間です。データから何を読み取るかは、人間の価値判断次第で変わってきます。

人間は学習し、成長する

人的資源は人間であることから、学習を繰り返しながら成長していく主体的な存在です。他の経営資源にはこの特徴はありません。
こうした特徴から、人的資源は時間と共にどんどん質が高まっていき、企業にとって大きな貢献をなすことができるようになっていく可能性を秘めていると言えます。そのため、企業は人的資が持つ潜在力を最大限に活用できるようにすることが、収益向上には極めて重要になっています

マネージャーの好きには使えない

従業員は人である以上、マネージャーのいうことを100%聞くわけではありません。このことがある以上、マネージャーは従業員に対して十分な配慮が必要となります。つまり、企業が業績向上を狙って従業員を管理する際、管理されるべき対象である従業員に配慮しながら経営をしていかざるを得ないということです。これは人的資源管理特有の特徴と言っていいでしょう。

イノベーションが起こりにくい

人的資源管理はこうした特徴を持っているが所以、イノベーションが起こりずく、これといった決定方法に欠けているという特徴があります。品質管理では、QCC、TQMなど10年に一回は新たなマネジメント方法が開発されています。カネや情報にも同じようなことが言えます。
人的資源管理には、収益を優先すると従業員が窮屈に感じて離職率が高くなってしまうこと、反対に緩く管理してしまうと作業効率が落ち、収益が落ちてしまうというトレードオフが存在しています。このバランスをうまくとっていくことが人的資源管理の要なのです。

人的資源管理の移り変わり

人的資源管理の歴史はとても浅く、1990年代から人的資源管理という言葉がよく使われるようになりました。それ以前は人的労務管理(Personal/Labor Management)が呼ばれていました。それでは人的資源管理と人的労務管理の違いを見ていきましょう。

企業戦略と人事とのつながりの強化

人的資源管理は人的労務管理と比べて、全社的な経営戦略との結びつきが強く見られるようになっています。人的資源管理のもとでは、中長期にわたる人員の採用、削減計画など、人的関連の問題とリンクされながら計画が建てられるようになりました。

能動的・主体的な活動

人的資源管理は、経営戦略と強い結びつきがあることから、能動的・主体的な活動として管理されています。人的労務管理では、給与計算や保険業務の定例業務を行なったり、職場でのコンフリクトや労務紛争を解決する業務に従事するといった後追い的な業務が大半でした。受身的なマネジメントから能動的なマネジメントへ発想法が変化したと言えるでしょう。

心理的契約の重視

人的資源管理では、経済的な側面での契約ではなく心理的な契約の重要性が強調されるようになりました。人的労務管理の時代では、法的な契約による発想のみでした。人的資源管理では、経営者と従業員間には心理的な暗黙の相互期待があることが前提とされています。

職場学習の重視

人的資源管理では、職場における従業員の学習の重要性が認識されている点が大きく異なります。人的労務管理の時代では、単に与えられた仕事をこなすだけの存在であり、企業がその仕事をこなしたという事実に対し賃金を支払わなければならないからコストとして考えられていました。人的資源管理では、従業員は、学習と成長を通じて、企業にとって将来的な富をもたらしうる存在であると認識されるようになりました。いわば、従業員を企業にとってコストとしてではなく持続的競争優位の源泉として捉えるようになりました。

集団全体より個々人の動機づけ

人的資源管理では、従業員個々人にフォーカスを当て、個々人の動機付けを考慮しながら組織目的の達成が志向されます。したがって、労働組合と経営者の対立というもの希薄になりました。

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