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書物の帝国(購書日記2020.10.29)

購入

星新一他『猫は神さまの贈り物』(実業之日本社文庫)
小川一水『不全世界の創造手』(朝日文庫)#買っているかもしれない。

アマゾンマケプレ
ジェイン・マクゴニガル『スーパーベターになろう!』(早川書房)

読了本

川端裕人『リョウ&ナオ』(光村図書)

川端さんの作品を読んでいると、自分の中にいる少年性がよみがえってくる。本書も、主人公のリョウが、心臓病で夭折した従妹のナオの面影をもつナオミと出会い、次世代のリーダーを育成する「ジーコーズ」で一緒に活動していくうちに、自分の進むべく道を定めていく。様々な試練をこなしながら、仲間たちとの絆を深める。リョウの成長の儀式の物語だ。

ナオの死、ジーコーズとの個性的なメンバーとの出会い、日本以外の世界の人たちとの心温まる交流。壮大な大自然の中で、それぞれのメンバーが個性や能力を生かしながら、試練をこなしていく。その中で現地の問題に悩んだり、自分の力不足を嘆いたりと様々な心の葛藤がありながらも、リョウは自分の信念の赴くままに、ナオのためにひたむきに突き進んでいく。ナオに似たナオミの存在はリョウに様々な意識の変化をもたらし、リョウ自身の成長に不可欠な要素になっていく。ナオミとの行動は、死んだはずのナオの存在をまるでゴーストのようによみがえらせてくれる。次世代のリーダーを育成するための人材発掘プログラムというのはすごくユニーク。なんだか勇気をもらえる。グローバル化を念頭に、どう異なる信条や思想の人々と問題解決するのか、友情と協力の大切さを物語を通じて理解することができよう。

壮大な自然の描写は、目をつぶるとそのまま脳裏に浮かびあがってくる。これは川端さんのこれまでの科学知識に裏付けされているため。自然から匂いがそそり立つような描写に、映像のような没入感を感じることができる。リョウの視点を通じて、前向きに生きる力を与えてくれる物語だった。

渡邉秀徳『データを紡いで社会につなぐ』(講談社現代新書)

2013年に新刊で買っていたのにも関わらず、7年後の今になって読むという。先日職場の積読山脈から、帯の解説を読んで面白そうだと思って読んだらあたり。渡邉先生というと、光文社新書から出ている最新刊『「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」 』で、モノクロの写真をAIを使ってカラー写真にするというプロジェクトで有名。本書はその仕事の前に行われていたグーグルアースを利用して、広島、長崎、そして東日本大震災等の情報をどのような形で、「記憶のデジタルアーカイヴ」としていくのかを自身の経験を踏まえて考察している。

収集された写真、インタビュー等の多元的な情報をグーグルアースを利用して公開するための実践知を具体例を踏まえて展開。以前アップルのマッキントッシュにあったハイパーカードを彷彿させる。サイトにアクセスすれば、インタビューであったり、実際に被災・被ばくをした場所と紐づかれて、アーカイヴとして非常に効果的になる。体験したことのある人たちからの、経験の伝承が、ネットを通じて第三者に行われる。若者から当事者まで様々な人たちを巻き込んで、協働することでより正確な情報が収集され、デジタルアーカイヴが作成される。これまではなかなか得られなかった多元的な情報がデジタルアーカイヴに集約され、可視化されることによって、ミクロからマクロの視点に切り替えることが可能となる。これにより、問題の全体像をとらえることができる。実際のサイトをいくつか見てみると、体験者の生き様を我々は体験することができるだろう。

データの応用利用と社会への有効性について、大変示唆的な一冊でした。なお著者の渡邉先生はSFMの表紙絵描いていたのを知ってびっくり。あの作品もかー。




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