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【対談】 GREEN SPOON×Dawn Capital 共に歩んだM&Aまでの軌跡。

2024年6月3日、出資先であるGREEN SPOONは、江崎グリコ株式会社へのグループ入りを発表しました。2019年5月30日に、ヒトが食体験を通じて「自分を好きでいつづけられる人生を」をビジョンに設立されたGREEN SPOONは、定額制のパーソナルスムージー「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」を主軸に事業をスタート。現在ではスープやサラダ、主菜にまでラインナップを拡大し、会員数15万人を超えるウェルネスブランドに成長しています。今回は、設立から5年が経ち、M&Aという節目を迎えたGREEN SPOON代表の田邊さんとDawn Capital石倉との対談記事をお届けします。

GREEN SPOONとDawn Capitalは何処で出会い、これまでどのような道のりを共にしてきたのか、紐解いていきます。

対談者プロフィール

田邊 友則|株式会社Greenspoon 代表取締役CEO
2012年サイバーエージェント入社、CyberZ、Ameba広告事業本部、AbemaTVスポーツ局を立ち上げる。16年11月に独立。17年12月、ONE BUY ONE代表取締役就任。19年5月Greenspoonを創業し、現在に至る。

石倉 壱彦|Dawn Capital 代表パートナー
2005年KPMGあずさ監査法人に入社。2012年より株式会社サイバーエージェント等のベンチャー企業へのコンサルティング業務に従事後、2013年に株式会社アカツキに入社し、コーポレート体制の立ち上げや株式上場準備に従事。2015年より株式会社3ミニッツのCFOとして経営管理部門を統括し、資金調達・経営戦略の立案・事業の立ち上げに従事し、同社のM&Aを牽引。2018年に株式会社アカツキの執行役員及びHeart Driven Fundのパートナーに就任。2022年4月に株式会社Akatsuki Venturesを立ち上げ、同社の代表取締役社長に就任し、Dawn Capital代表パートナーとして投資事業に従事。



コロナ渦真っ只中の出会い、すぐに感じた親近感と成長性

まずはお二人の出会いについて教えてください。

田邊:最初、石倉さんとはオンラインでお話しました。コロナ真っ只中でステイホームが叫ばれていた時に、シリーズAのファイナンスでリード投資家を探していて、ご紹介で石倉さんを繋いでもらいました。
石倉:当時は完全にステイホームのタイミングでしたね。Withコロナ、Afterコロナでこれからどういう事業が伸びるのかと考えていた時でした。マクロ的な環境が変われば、新しいサービスが出てくるチャンスでもあります。そんな時、ちょうど僕は「食」の領域を注目して見ていました。個人的に、ご飯は外で食べる機会が多かったのですが、コロナ禍で家でご飯を食べる機会が増えて、普通に美味しいけど何か新しい体験がないかと考えていて…。人の胃袋の総量がコロナによって変わるわけではないじゃないですか。だからこそ、家の中での食体験は今後大きく変わるだろうなと思っていました。米国のDaily Harvestなど食のD2Cに注目しているタイミングで、初めて田邊さんとお話しました。

最初の面談で、お互いに何を感じましたか?

田邊:石倉さんとは共通項がとても多くてシンパシーを感じたんです。まず地元が一緒で、使っていたバス停まで同じだったんです!
石倉:確かに、実家が歩いて5分くらいの距離でしたよね!(笑)
田邊:そうですよね!当時、投資家の前でピッチすること自体慣れていなくてかなり緊張していたのですが、お話する中で色々な共通点が出てきて、最終的にリラックスしてお話できたのを覚えています。サイバーエージェント出身同士というのもありましたし。そしてピッチが終わって10分くらい経った時に、突然石倉さんと共通の友人からメッセージが来たんです。開いてみたら「石倉さんが、GREEN SPOONめっちゃよかったって言ってたよ」と書いてあって。それで自信がついて、これは投資受けれるかもしれないなと思いました。
石倉:ピッチを聞いてすぐ、共通の友人に思わず連絡しちゃったんですよね。そのくらい個人的には刺さっていて、その時点で投資しようとほぼ決めていました。D2Cのスタートアップへ投資を検討する際、プロダクト自体の質もそうですが、個人的には「熱狂的なユーザーコミュニティが作れるかどうか」という観点に一番注目していました。GREEN SPOONは事業への想いやコンセプトが、プロダクトとパッケージにしっかりと込められていて、それを実現するものがあるなと強く感じました。


出資の決め手は僕がGREEN SPOONの大ファンになったから

GREEN SPOONへの出資検討はどのようなものでしたか?

石倉:初回面談後にGREEN SPOONの商品をいくつか送っていただきました。箱を開けてみたら、まずパッケージがとてもおしゃれで、すぐさまSNSのストーリーに上げてみたんです。そうしたら、知り合いのインフルエンサーの人たちから「何ですかコレ!」、「気になる!」といったメッセージがたくさん届いて…!GREEN SPOONのターゲット層の人たちがしっかり反応してきたのを見て、「これは伸びそうだな」と思ったのを鮮明に覚えています
田邊:いつもこのエピソードは話してくれますよね。GREEN SPOONがターゲットとしていた人たちからのDMがすごかったと。
石倉:そう、そしてスムージー自体も予想以上に美味しかったですね。その時から今もずっとサブスクして飲んでいるんです。今朝も飲んできましたし。(笑)このようなプロダクトは、そもそも自分自身が使いたくならなければ投資はできません。GREEN SPOONはそれくらいプロダクトの質も高くて、自分が一番欲しかったものがあった!という感覚になりました。そして何よりペルソナとする人たちからの反応も非常にいい。ワクワクした瞬間でしたね!

検討が進むにつれて、アカツキや石倉への印象に変化はありましたか?

田邊:これはのちに“ハートドリブンファンド(Dawn Capitalの前身)への理解に繋がるのですが、話していく中で、石倉さんは本当に“感情”とか“人情”を大事にする方なのだなと思うようになりました。石倉さんとお話する前にプロフィールを読んでいたのですが、公認会計士という肩書きもあって数字ゴリゴリ・ロジック・固い人だと勝手に思い込んでいて…。実際に話してみたら全く逆で、むしろ直感を大事にされていたり、すごくハートフルな方だなという印象に変わりました。すごくいい意味でラフな人だなと。
石倉:それはよく言われる(笑)
田邊:そうですよね。だから石倉さんが投資しているところって、石倉さん自身が自分に嘘をつかず、本気でいいと思った会社なのだろうなと思います。まさにハートドリブンなファンドだなと。機能として合理的なものではなくて、“感情の揺れ”とか、“面白さ”の感覚を大切にされていますよね。それなのに、会計士だから数字にも強いし。そこのバランスを一人で兼ね備えている人は、それまで会ったことがなかったです。
石倉:いい話。(笑)


共に歩んだ濃密な4年間を振り返る

調達後のコミュニケーションの中で、何か印象的な出来事はありましたか?

田邊:Dawn Capitalを含め、株主の皆さんがどんな状況でも温かく見守ってくれたことが一番印象的でしたしありがたかったです。というのも、GREEN SPOONはトップライン(売上)が上がり続けていたスタートアップではなかったんです。サプライチェーンの移管などで、1年半くらい業績が停滞していた時期もあって…。通常スタートアップは、営業赤字を掘っている分トップラインだけは伸ばさないとという考えになると思うんです。そんな中でも、石倉さんをはじめ株主の皆さんが温かく見守ってくれたのは本当に大きかったです。
石倉:確かに、伸び悩んでいた時期もありましたが、GREEN SPOONは必ず今後伸びると信じていました。そもそも良いプロダクトを作っているし、良い組織も作れていた。確か社員1人も辞めていないですよね?
田邊:ゼロですね。
石倉:そうですよね。実際にオフィスに行ってメンバーと話した時も、みんな熱くて素敵なチームだなと感じていました。だから会社がどういう状況であれ、良いプロダクトを作ってそれを伸ばそうとチーム全員が信じて進んでこれたんだと思います。そのメンバーでずっと変わらずに、今日までやってこれたのが一番の財産だったのだろうなと思いますね。
田邊:定例でも石倉さんは組織のことをよく気にかけてくれましたよね。確かに良いメンバーが本当に多いですし、みんなGREEN SPOONのことを愛してくれているんです。そういう組織づくりができたことは良かったなと、個人的にも思っています。

田邊:あと石倉さんは、僕がいないところでめちゃくちゃ周りの人にGREEN SPOONを広めてくれていましたよね。投資後のバリューアップをユーザー目線でしていただけたのが印象深いです。それが結果として、色々なコラボレーション企画にも繋がったのだと思っています。
石倉:GREEN SPOONはパッケージのデザインからも“美味しそう”、“楽しそう”といった感情の種が詰まっていて、味も美味しい。純粋に良いプロダクトだから色々な人に勧めていましたね。(笑)アカツキ社内でもよく話題に挙げていたのですが、実際に社員からも「家で食べてます!」という声もよく聞いていました。
田邊:石倉さんは人との繋がりを大事にしているからこそ、実際に形になっていくのだと思います。普通、人に勧められても社交辞令的に終わることがほとんどじゃないですか。でも石倉さんに言われると、人としての信頼があるから「一回注文してみようかな」と思ってしまう。その信頼が繋がって、みんなが共鳴してくれていたと実感しています。
石倉:周りで「GREEN SPOON美味しかったよ!」と言ってくれる人が増えていくのが、素直に嬉しかったです。出資検討時に重要視していた「熱狂的なユーザーコミュニティが作られていく」のを実感できたというか。著名人の方とのコラボレーションが多々生まれましたが、みなさん自身がユーザーとして本当に好きだからプロジェクトに関わってくれていた。そんなプロダクトはなかなかないと思いますね。

▼GREEN SPOONのコラボレーション商品(一部)


スタートアップ×大企業M&Aのアイコニックな事例として、業界に与える影響とは

今回のM&Aは、今後のスタートアップ業界においてどのような意味を持つと思いますか?

石倉:前提として、現在の日本においてスタートアップと大企業のM&Aは非常に難易度の高いことだと思っています。そんな中で、今回の江崎グリコさんとのディールは、中長期的なM&Aを前提にしながらまずはマイノリティ出資という形で資本参加し、共に成長してからグループインするといったものでした。このようなケースはこれまであまりないですし、今後スタートアップと大企業の連携を加速させる、とても良い事例だと思っています。先ほどのお話でもありましたが、江崎グリコさんが最初に資本参加してからも、決して事業が順調に伸びていたわけではありません。スタートアップと向き合うことの大変さを目の当たりにしつつも、その前提で大きな意思決定をしていただけた。これは非常に印象的ですし、今後このようなディールが増えて欲しいと思っています。M&Aは、まず買収するというのが一般的ですが、今回のように、共に育てていきながら、最終的に一緒になる形の方がスムーズかつ、双方にとってより良いものが作れるのではないかと思っています。このようなケースが増えていけば、大企業側も新規事業を作っていく体制も強化されると思うので、非常にエポックメイキングなディールだと思っています。
田邊:そうですね。マイノリティ出資の段階では事業シナジーをすぐに実現するのは難しいですし、そこに頼って出資を受けたとしても、まずは自分たちの足で稼がなければいけません。そんな中でも、初回の資本参加のタイミングからずっと、江崎グリコは僕らのビジョンに共感し、支え続けていただきました。今回の事例が、今後のスタートアップ業界にとって追い風になれば嬉しいですね。

最後に、今後GREEN SPOONとはどういう関係性を築いていきたいですか?

石倉:僕はGREEN SPOONのプロダクトが大好きなので、一GREEN SPOONファンとして、応援し続けるつもりです。特にマーケティングやコラボレーションの観点で、引き続きご支援できたら嬉しいです。
田邊:江崎グリコ側にも言っていただいてますよね。(笑)
石倉:そうですね。GREEN SPOONの株主全員、GREEN SPOONのこと大好きなので、みんな同じことを思っていると思います。迷惑が掛からない程度に支援し続けます!
田邊:これからもガンガンお願いします!(笑)

今回はGREEN SPOON代表の田邊さんと、Dawn Capitalの石倉との対談記事をお届けしました。

田邊さんもアツいnoteを書かれていますので、ぜひチェックしてみてください!

Dawn Capitalでは、事業についての壁打ちから出資相談まで幅広く受け付けております。
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最後までご覧いただきありがとうございました!


文・写真:池田 龍之介
インタビュー:遠藤 蓮辛