暁の手記 その23

初めて、自分から好きな人ができた。その人は恋庭というマッチング兼ゲームアプリで出会った人だ。実は前にもこのアプリを使って人と出会ったことがあったのだが、あってみたいという興味だけで会って話をしたら、私の話し方が嫌いな人と一緒だから無理と言われて切られてしまったのだ。
今、会話しているのはTさん(仮)。専門学校に通っている彼と知り合って3日もしないうちにLINEを交換して電話した。
Tさんはとにかく優しかった。話したがりな私に合わせてくれるし、話を聞くのが好きだと言ってくれる、電話しようと誘ってくれる、朝のおはようも毎日してくれる。派遣に行くと言うと応援してくれる。それがとても嬉しかった。
前の男に振られた話をした時、彼は「それは俺でも(相手を)擁護できないわ」と言って味方になってくれたり色んな話を聞いてくれたし、色々喋ってもくれた。
私、また恋路に行ってもいいのかしら、と浮かれた心が思う。相手はもう自立したしっかりとした大人で、私はもう振り回されたりしないのかなと思うと、今度こそ運命を掴んだような気がしてしまう。
親には期待されてないけど、私は出産はともかく結婚はしてみたかった。父と母の様子を見ていると夫婦って楽しいことがたくさんあるんだなと思ったから。
あの日の我儘で幼い私は、きっともういない。もっと大人になれたと思っている。
付き合ってもないのにうっかり彼女ムーブをかましても許してくれたり、何度も、眠くても通話してくれたり、前の彼とは大違いだった。
小説だって機会があれば読んでみたいと言ってくれた。きっと口だけじゃないって信じられる。
彼の国試の前日、30分だけ電話した。私がしたいと言ったからしてくれたんだけど後日、国試が終わって答え合わせが終わった後、「電話のおかげやね」と言ってくれた。
ねぇ、貴方はどこまで私の心を揺さぶるの?好きにさせてくれるの。ずるいよ。
そう思っていたのに、私の好意は何も届いてなかったみたい。
ついこの間、やっと初めて会えた日。私は会えたのが嬉しくてたくさん話をした。向こうは聴いている方が好きだというから。ご飯を食べて、カラオケにもでと思ったら彼は急に用事を思い出したと言って私を最寄りの駅まで送ってくれた。用事の内容は翌日にある卒業式に着ていく為のスーツを取りに行かないと行けないということだった。
会えただけマシだと残念がる幼い私を宥めながら大人な私は今となってはただ眠いだけだったドライブを思いながらお礼のLINEを送った。
割とすぐに連絡が返ってくる人なのに1日以上返事がなかった。挙句、既読はついても返信が返って来ることはなかった。
幸せな時間が終わった。あっさりと。私の今までの善意での行動も、言動もきっと何もかも無くなった。
きっと向こうは気付いていなかっただろうが、私は貴方だったら私のこの面倒くさい体のことも、病気のことも理解してくれると思ったんだよ。
長いようで短い時間だった。一瞬たりともキュンとした私が馬鹿だった。
どうしてこんなに生き急ぐように相手を見つけようとしてしまうんだろう。それはきっと曲がりなりにも元カレの記憶が残っているからだろう。
何が悪かったすら教えられなくて、ただ一方的に無視される。誰がこんな結末を予想できただろうか。
ただでさえ最近鬱っぽかったのに逆戻りになってしまった。
眠ることしかできなくて苦しい。頭が上手く回らない。
私だって誰かに愛されたいし、愛したいよ。

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