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新作映画『フリー・ガイ』レビュー

何度も公開が延期され、ようやくこの夏に劇場公開がされた映画『フリーガイ』。しかも宣伝では"劇場でのみ公開"という点が強調され、最近のディズニーの劇場公開と同時配信というスタイルを暗に皮肉っている。予告編である程度のストーリーと作品のテーマが見えてしまいそうだが、実際に鑑賞してみると予想のさらに一歩先を突いた、ただの娯楽では終わらないなかなかよくできた作品だった。


【ストーリー】

毎日変わらないモーニング・ルーティーン、いつものブルーシャツとネクタイを締めて出勤するガイは、フリーシティーという街にある銀行に勤めている。そこは1日に何度も銀行強盗が襲ってくるような物騒な場所だが、ガイと警備員の親友バディは慣れっこ。窓口に並んでいるおじさんなんて、銀行強盗が現れる前からもう両手を上げて降参のポーズをしているくらいだ。

実はフリーシティーは、ただの街ではない。世界中で大人気のオンラインVRゲーム「フリー・シティー」の中に存在する作り物の世界。そこでは「サングラス族」と呼ばれるゲームのプレイヤーたちが好き勝手暴れ回ることが許され、その中でガイはサングラス族にただ殴られたり被害を被るためだけにプログラミングされたモブキャラ(雑魚キャラ/背景キャラ)なのだ。本人にはそのような自覚はなく、同じ毎日を当たり前のように生きている。

ある日、ガイはサングラス族のクールで魅力的な女性と出会い、一目惚れする。なんとか彼女の気を引こうと奮闘しながら、ゲームのプログラムでしかないガイの中に特殊な感情が芽生えていく。それはゲームの中の世界、そしてゲームの外の現実世界をも巻き込む大騒動の始まりだった。


【レビュー】

オープニングから数分の主演ライアン・レイノルズの演技を見ていて、思わず「ジム・キャリーにそっくりだ!」と心の中で叫んでしまった。1998年に制作された映画『トゥルーマン・ショー』にて、ジム・キャリーはリアリティ番組内の架空の世界で全世界に24時間放送されながら、そうとは知らずに生きる主人公の男を演じている。脚本家も完全に意識してのことだろう。ライアン・レイノルズに"良い1日ではなく、素晴らしい1日を"という決め台詞を与えているが、『トゥルーマン・ショー』の主人公にも"おはよう。会えなかった時のために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみも一緒にね"という名台詞がある。そしてそれを言う時のジム・キャリーの作り込まれた笑顔まで、ライアン・レイノルズはコピーしているのだ。

過去作品へのオマージュ、豪華なカメオ出演、そして人気シリーズを引用して茶化してしまうようなギャグの数々。『デッドプール』のような下品さと過激さはないが、まさにライアン・レイノルズ印の作品であり、映画ファンとしては全編に笑いどころが散りばめられた爽快なエンタメ作品に仕上がっている。特にクライマックスにかけての怒涛のギャグと、超豪華なカメオ出演に関しては心の中で拍手喝采、大爆笑の嵐。

日本での宣伝キャッチコピーは、「主人公になりたい、すべての人へ」。モブキャラでしかないガイが、ゲームの世界に変化をもたらし自らヒーローになっていく様は、まさに誰にでも主人公になれるチャンスがあるんだという前向きなメッセージを与えてくれる。だが、それ以上のドラマがこの作品には隠されており、筆者はそこに感動を覚えた。詳しい言及は避けるが、真っ直ぐな想いはいつか伝わる、というものである。ゲームの世界さえも飛び抜けるガイの大活躍を、ぜひ楽しんでいただきたい。

同日に公開された『ザ・スーサイドスクワッド/"極"悪党、集結』と同じ日に本作を鑑賞したので、タイカ・ワイティティの役者としての幅広さにやられた。そういう視点でも、ぜひ両作品はお見逃しなく。


【おすすめしたい人】

ザ・ハリウッド大作を楽しみたい

前向きな気持ちになりたい

ゲームや映画などのサブカルヲタク

何も考えずに楽しめる娯楽作品が観たい

デップー的な悪ノリが好き



トップ画像引用:<a href="https://pixabay.com/ja/users/weinstock-25534/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=93205">Uwe Baumann</a>による<a href="https://pixabay.com/ja/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=93205">Pixabay</a>からの画像

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