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レノファなスタジアムの話(10)街中スタジアム(その1)

※トップ画像は山口県のウェブサイトから拝借しています。

前回まで、維新みらいふスタジアム(みらスタ)は「公共交通の利便性は悪くない」という話をしましたが、みらスタがもう一つ他所のスタジアムに比べて優れているところがあります。
街中にある」ということです。(まあ、周囲に田畑も多いですが)

歓楽街や温泉地である湯田温泉まで歩いていけるというのは、試合前後の行動(観光だったり反省会・打ち上げだったり、前泊・後泊だったり)を考えてもなかなかの魅力だと思います。

みらスタの立地

といっても、実はみらスタは最初から街中にあったわけではなく、「スタジアムの周りに街が出来た」というのが正解なのです。

以前も書きましたが、みらスタは元々1963年の国民体育大会の主競技場「山口県営陸上競技場」として建設された陸上競技場です(2011年に全面改築)。
完成直前の航空写真が西日本新聞のサイトにあるのですが(すいません、写真の利用が有償なのでリンクだけです)、周りは見事に水田ばかりで道路も1本だけ。
現在の国道9号は影も形もありません。
※トップ画像とは上下が逆で、西から東を写した写真になっています

そもそも維新百年記念公園(維新公園)自体が「陸上競技場の出来た後で周囲を公園にした」という経緯で整備された公園なので(維新公園の開園が1973年)、維新公園が出来てから市街地(住宅地)が広がり、周りに道路が出来て商店が出来て…というわけなんですね。
もっとも、公園を拡張する前に周辺の市街地化が進んじゃったので、駐車場を広げるのもままならず…という以前話した悩ましい状態になっているというのも痛し痒しですが。

スタジアムと用地

行政(都道府県や市町村)が主体となって国体スタジアムや、その他のスポーツ施設などを作る場合に、大きなネックになるものの一つに用地の問題があります。

用地の問題は大きく分けて2つあって、一つは「土地取得費用が建設費を大きく左右する」という問題、もう一つは「用地交渉に時間がかかると事業が大きく遅れる」という問題です。前者は金を積めばどうにかなる可能性もあります(といっても基本的には税金が元手なので青天井ではない)が、後者は相手がある取引の話なので、こればかりはどうしようもない。
なので、行政が主体となって新たなスタジアムを建設する際には、そういったリスクを軽減させるために、都道府県や市町村が元々広大な敷地を持っていない限り、土地代が安くて地主の数の少ない街外れ(丘陵地とか休耕田とか)に作られる傾向が多いのです。
各クラブがシャトルバスを走らせなければならない立地になっているのも、その辺りが理由だったりします。

現在、宮崎県が2027年の国体(国民スポーツ大会)に向けて新たに競技場を整備しているのですが、これも宮崎市の隣・都城市の丘陵地というか山麓部に整備することになっています。(既存の宮崎県総合運動公園陸上競技場の改修じゃないんだ…とは正直思いましたが)

広島のエディオンスタジアムも、広島市が整備したニュータウンの「西風新都」の開発に合わせて運動公園を作ったのが始まりですし、2024年にできる新スタジアム(いずれ触れる予定です)が計画の段階で建設地が広島港(宇品)に決まりかけたのも、広大な県有地があって土地取得費用が抑えられるからというのがあったりもします(ちなみに新しいスタジアムが建つ場所は国有地で国から借地して建設)。

全国どこに行っても、国体のスタジアムなどが「街外れ」に建っていることが多いのは、大体が土地代の安さとか将来の拡張のしやすさとかが理由だったりします。

街中にスタジアムを建てる方法

では、街中にスタジアム(やアリーナ)を建てるのは難しいのかと言えば、決してそうではなくて、特に近年は街中にスタジアムやアリーナを建てようという複数の動きがあります。

既存施設の建て替え

街中にスタジアムやアリーナを建てる手法としては大きく分けて2つあって、一つは「街中にある既存施設の建て替え」によるもの。
現在のみらスタもこの例だったりしますし、県内では下関市体育館(レノファの試合も行われるセービング陸上競技場の隣)が現在建て替え事業の真っ盛りです。

サッカースタジアムで「建て替え」が行われている例で言えば、金沢の新サッカー場(金沢市民サッカー場)がこのパターンになります。
今は周りが田んぼなので「街中」とは言い難いですが、現在の石川県西部緑地公園陸上競技場よりはJRの駅にうんと近くなります。

遊休地の活用

もう一つは、「都道府県や市町村が元々持っている敷地」や「用途の決まっていない遊休地」に新たにスタジアム等を建設しよう、というもの。
街中にそんな余った土地ってあるのか?という疑問もあるでしょうが、最近では「再開発」の名の下にそういう土地が出てきたりするものです。

例えば、鳥栖の駅前不動産スタジアムは、元々旧国鉄の操車場跡地の利活用が建設事業の発端になっています。(だから駅のすぐそばなんですよね)
レノファの練習場である「おのさんサッカーパーク」も、元々は東沖ファクトリーパークという工業団地の未売却地を県が利用したものだったりしますし。

最近の動きとしては、相模原市がJR相模原駅前にある米軍相模総合補給廠が一部返還されたことを受けて、この土地をどのように生かすかの検討を行っています。
これを受けて、相模原市にホームタウンを置く4つのスポーツチーム(三菱重工相模原ダイナボアーズ、ノジマ相模原ライズ、SC相模原、ノジマステラ神奈川相模原)が共同で、多機能複合型スタジアム整備を要望する署名を提出する、などの動きもあるようです。

こういう土地というのは、活用方法において「賑わいの創出」みたいなキーワードがついて、人が集まれる施設を整備する、というのが最近のトレンドになっていたりするのですが、次回ではそういう動きを国が後押ししている、という話をしたいと思います。


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