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Transformation of the Mobility Industry パネル登壇メモ

11/17にイスラエル日本商工会議所主催のWebinar(モビリティ産業の今後テーマ)に登壇しました。当日は時間の制約で話せなかった内容含め、予め用意した論点を以下公開します。Webinar自体はオール英語でしたが、以下論点は日本語で書きました。

自動車産業を取り巻く変化

・短期的に取り組むべきことは明確。自動車自身の高度化。安全装備や自動運転、電動化、ネットとの接続など。関連技術を求めて、既に多くの自動車メーカや部品メーカがイスラエル企業との協業に取り組んでいる。

・問題はこの先。大きなトレンドとしては、自動車の自律性が徐々に失われ、交通全体最適を考えた何らかの主体が存在するようになり、個々の自動車が何らかの形でその影響下に入って行く方向性。自動車がPrivateからPublicな存在に徐々に変わって行く。自動運転、Sharing、信号機制御、V2X技術等、支える技術も次第に見えて来ている。この中で、自動車メーカのビジネスモデルも変容を迫られていく。

・Startupから見れば、自動車メーカ自身が自社のアイデンティティを再考している状況下、上記のような将来像を先取りして開発を進め、自動車メーカを始めとしたMobility産業に属する企業のTransformationへの触媒(及びこれら企業から見たM&A候補)になる、という立ち位置になる。

日本企業へのPitch時留意点

・百聞一見、現地現物的発想。粗削りでも動くものを見せる。コンセプトに共感して話が進む、というよりは、動くものをベースに具体的に議論した方が有効。材料系であればサンプル、デバイス系であれば試作品、ソフトウェアであればプロトタイプ。

・Startupとして具体的に取り組んでいる課題、問題点を明確化する。TAMやSAMといった市場規模マクロ分析は全く響かない。解決しようと考えている顧客課題を解像度高く見せ、そこへの共感を得ることを重視。そしてそれを自社が解決するストーリーを見せる。これは日本企業へのPitchに限らず、VC含め投資家へのピッチ時にも同様。

・半分冗談だが、日本企業と面談する時には「他の日本企業も最近色々来ている」と言うと有効なことがある。特に、来訪した日本企業の競合と思われる他日本企業名を挙げる。日本企業側の検討速度が高まったり、Startupへの評価を上げる効果がたまにある。

COVID-19影響と心構え

(COVID-19の影響は色々な所で議論されているのでここでは割愛)
・柔軟性とレジリエンス。COVID-19によって変質した市場ニーズにマッチするよう、ビジネスモデルや商品を柔軟に変更・修正して、キャッシュを確保し売上を伸ばす方策をタイムリーに打ち出して行く柔軟性とレジリエンス大事。

・Magentaの投資先でも、3月のイスラエル国内ロックダウン開始時にいち早く新製品・新サービスをの企画を開始し、3カ月後にサービスを作り上げて新サービスのパートナーと提携し、7-8月から売上計上を始めた企業が複数ある。加えて、これは全てイスラエル国外での売り上げ計上開始であり、国境をまたいでこれを短期で実現している。いずれもBtoB。

・これが可能なのは、柔軟性・レジリエンスに加えて、顧客のリアルなニーズや本当の需要を平時から意識して押さえているから。結果、マーケティング労力最小限で、売上が立ち始める。マーケティングコストがかかるのは本来悪。差し迫ったニーズに正しくアドレスすれば、モノは売れる。

投資家役割

・従前から、本来モビリティ分野はVCがあまり投資をしたくない分野。顧客(自動車メーカ)へのコンタクトから売上計上まで長い時間がかかり、毎月Cashを燃やしているStartupには厳しい環境。加えて、顧客からの性能・品質要求がとても厳しい。そして、毎年のように大変厳しい原価低減要求があり儲からない。COVID-19によって自動車メーカの対応は遅くなり、この傾向に更に拍車がかかっている。一方で、市場規模や継続的な取引等、うまく行った場合の恩恵が大きいのも事実ではある。

・このような状況下、投資家が果たす役割は、Startupが短中期と長期の両方の目線をバランスよく実行して行けるよう、各種支援を行うこと。短中期ではStartupが足元の資金調達や足の速い売上確保をして資金繰りを成り立たせることが重要であり、長期的には自動車メーカ攻略の戦略策定と着実な実行が求められる。イスラエルのセンサー系Startup等でよくあるのが、複数の産業分野に製品・技術を供給し、自動車分野もその1つと位置付けるパターン。短期で売上貢献が出来そうな他産業分野でCashを確保しつつ、中長期的目線で自動車産業を攻めてバランスを取る。Startupは特化すべし、というセオリーとは少し異なる方向感。

・Startup目線では、Mobility分野に特化するとしても短中期の目標にFocusして事業推進するのも選択肢。そして、その事業成果(顧客資産やデータ資産等)を活用して次世代Mobility Serviceに取り組むのは自動車メーカやその他大手IT関連企業である、と割り切る(自社のM&Aにより売却先としてそれら大手企業を認識する)。言い換えると、Startup自身の事業として成立する内容でありながら、その事業資産が次世代モビリティサービスの中核機能・データ資産として別途活用可能な形を目指す。例えば、今年Intelが960億円出して買収したイスラエルStartupのMoovitは、Smart Phone上でのマルチモーダルサービス(複数移動手段を組み合わせた移動経路提案)を提供。Intelは2017年に買収したMobilEyeと組み合わせて、Moovitの事業資産を活用した次世代MaaS/自動運転関連サービスを計画している。

日本とイスラエルの文化的な差異

・文化的差異は色々なところにある。例えば、上下関係無くはっきりモノを言うイスラエル人と、場の空気を読んで発言を控えたりマイルドな表現をする日本人との違いは大きい。日本人は、イスラエル人の率直な物言いや空気を読まずにとことん議論を尽くそうとする姿勢に時には面くらい、礼節の問題と誤解することもある。イスラエル人から見ると、日本人の意思が良く見えないとかコミュニケーションをする気が無いとか、誤解することもある。

・日本企業が出張でイスラエルに来て、イスラエルStartupと面談する際にも問題がよく起きる。はるばる日本から来ているのだからStartup側は日本企業の意思決定者が来ること期待するが、大抵はそうではなく、日本企業はその場で決めずに持ち帰ろうとする。日本帰国後も中々日本企業の意思がわからず進まないことにStartup側が困ることも多い。Startup側は日本に行って企業のトップに会おうとするが、大抵の場合それは叶わず、且つ会ったとしてもその場で決定的なコミットを得らえることはあまりない。日本企業の意思決定が時にはミドルマネジメントに委ねられていること、そしてトップはそれを承認する立場で関与していることもよくある。更に、ミドルの意思決定も特定個人ではなく組織のコンセンサス醸成を経てなされることもある。シンプルに「この人を説得すればOK、それは大抵トップ」とうイスラエル人側の想定とは異なる状況に、イスラエル人側が戸惑う構図。

・イスラエルStartup側が考えるべきは、このような日本企業の意思決定プロセスに対する理解をまずは持つこと。そして、日本企業の意思決定を特定個人に帰着させられない以上、その日本企業との面談は中間管理職レベルであろうが担当レベルであろうが、一見無駄に見える面談も含めて全て必要な面談と捉えて取り組むこと。Be patientであること。

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