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読書備忘録

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読んだ本の感想を気が向いた時に記します〜
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救いがないとしても

久しぶりの読書記録。 最近「世界の小説大百科 死ぬまでに読むべき1001冊の本」という分厚くて重い辞典のような本を手に入れ、その1001冊を読むことを人生の目標にしようかしらと考えている(ちなみに恥ずかしながらまだ14冊目)。 でもそこに載っていない本だって読みたいし、昔読んだ本を再読したくなることもある。 そこで手に取った「ノルウェイの森」。 高校生の時にはじめて手に取った村上春樹の作品が、「ノルウェイの森」だった。 それは随分昔のことだし、当時の私にはこの作品の

名言揃いの「ふふふ」青春小説

〜好きポイント〜 ・どんなタイプの人でも、柄にもなく「ふふふ」と笑ってしまう(たぶん) ・とにかく名言揃い 〜出逢い〜 「なぜ人生に勉強は必要なのか?太宰治が解決済み!」という帯を見て、「どれどれ解決してもらおうじゃないの」と思った 「健康道場」という風変わりな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧みに表現した『

不貞は誰も幸せにしない、それでも共に生きていくための闘い

〜好きポイント〜 ・奥さんの気持ち、わかる ・ひとつの愛の形を垣間見れる 〜出逢い〜 北大路公子さんが、「すべて忘れて生きていく」の中で挙げていらっしゃった本の中の1冊。 思いやりの深かった妻が、夫の<情事>のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻。ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか? ーぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か

もがきながら、自分と誰かを大切にすること

〜好きポイント〜 ・「やさしい太陽」、所構わず泣いてしまう 〜出逢い〜 北大路公子さんが、「すべて忘れて生きていく」の中で挙げていらっしゃった本の中の1冊。 「こ、こ、これ一応誘拐だから」中学生の美希は部活帰りに突然車に連れ込まれた。犯人は西小原さん。若くして美希を生んだ母の恋人だ。痴話げんかの腹いせらしい。呆れた美希はいつも自由奔放な母を心配させるため、動揺する西小原さんをドライブへ誘い出し......。(「西小原さんの誘拐計画」より)好きなのにうまく言えない!? 不

思春期懐古 with シンガポール風情

〜好きポイント〜 ・シンガポールを感じられる ・思春期の記憶が蘇ってくる 〜出逢い〜 シンガポールに行くことになった時にシンガポールの作品を探していて(「自己紹介」参照)、出逢いました。そういう時には割と、表紙の感じで選んだりする。あと女性が主人公の本は選びがちかもしれない。 It is 2003, and in the sweltering heat of Singapore sixteen-year-olds Szu and Circe develop and int

清い気持ちだけでは、望みをかけられないことがある

〜好きポイント〜 ・好きとか嫌いとか、そういう本ではないです。とても重い話だけれど、  読んで良かった。誰もが持っている、人間の美しいところと醜いところ  を、鮮明に暴き出した小説だと思います。 〜出逢い〜 母が買ってきた。 思春期の息子と娘を育てながら平穏に暮らしていた石川一登・貴代美夫妻。9月のある週末、息子の規士が帰宅せず連絡が途絶えてしまう。警察に相談した矢先、規士の友人が殺害されたと聞き、一登は胸騒ぎを覚える。逃走中の少年は2人だが、行方不明は3人。息子は犯人か

「絵画ってなんかよくわかんない美術館疲れる」という人にも

〜好きポイント〜 ・17つも異なる作家が書いた物語が入っているのはお得すぎる! ・美術鑑賞という行為が苦手、美術館疲れるだけ、という私のような人で  も、美術への造詣を深める良いきっかけになる!! ・この絵からこの物語...?となるのもまた一興。 〜出逢い〜 ネットニュース?に出ていたのをたまたま見て、面白そう!と即買い。 こちら、日本語版も「短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション)」として翻訳・出版されている。 簡単に言うと、画家Edwa

「恵まれた人」の痛みには、誰が寄り添うのか

〜好きポイント〜 ・小説の醍醐味、人の痛みの疑似体験 ・映画化とかしたらとても美しいと思う(最後のシーンとか) 〜出逢い〜 久しぶりに西加奈子さん読みたいな〜と思い、表紙が可愛いのと巻末に又吉さんとの対談があったので購入。(読みたい作家&表紙可愛かったら内容を見ずに買ってしまう)  「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる、ある「奇跡」が

こんな時こそ、猫のように

〜好きポイント〜 ・村上春樹さんの人としての魅力が詰まっている、と思う ・時に優しい、時に「大人なんだからそんなこと自分で考えなさい」、  時に「にゃあ」、時に質問に答えないところが良い ・笑いあり涙あり 〜出逢い〜 かわいい子がオススメしていたから。 春樹さん、こんなことも聞いていいですか?世界中から集まった質問は何と3万7465通。恋愛・人間関係・仕事など悩ましい人生のモンダイから小説の書き方、音楽や映画、社会問題、猫やスワローズまで、怒涛のメール問答は119日間、閲

捨てる神あれば拾う神あり

又吉さんが、東京の百の景色をテーマに書いた自伝的エッセイ。 私は又吉さんの作品がけっこう好きで、「東京百景」は中でも1番好きな作品かもしれない。 又吉さんは作品も好きだけれど、普通にタイプ(不純)。 私にはやかましくない関西人を好む性癖がある(やかましい関西人の方が嫌いなわけではないですごめんなさい)。大学生の時もやかましくない関西人だった先輩が「なんて?」と聞き返すのが好き過ぎて、それだけで彼を好きになった(ちょろい)。常軌を逸した不潔な方で、半年後くらいに目が覚めた

守りたいものがある人は、最強だ

去年、そろそろ韓国に行くし韓国人作家の本を買おう〜と立ち寄った本屋の海外書籍コーナーで、全く関係ない本を買った。この本です。 帯を見たところ、どうやら強い女性たちが出てくるらしいし、表紙も素敵だ。即決。 私は強い女性の話が好きだと言い続けているけど、はて強い女性とは? 私が考える彼女たちの共通点は、こんな感じだろうか。 ①賢い ②一人でほとんどのことができるし、一人でも楽しい ③機転が利く ④強い意志と実行力がある ⑤守りたいものがある 中でもこの本に出てくる3人の女

かわいいおじいちゃん(おじさん)は正義だ

昨年、ポルトガルに行く前にポルトガル本を探していて、出逢った。 この時フェルナンド・ペソアという人をはじめて知った。ポルトガルの有名な詩人らしい。 表紙を見た時は「かわいいおじいちゃんだ」と思った。 そして帯の「ヨーロッパの西端の小国を世界に知らしめたいという"切なる想い"で書いた未刊のガイドブック」という言葉に、「読まなくては」と思った。 なんだか、どこに送るわけでもないのに市の紋章をこっそりこつこつ考えたり、いつか商品化するつもりなのか、孫の手などを自主制作したり

1番怖いのは人間だと思って生きている

小池真理子さんが著書の中で話していたので、読んでみたRuth Rendell。 表紙の感じで選びがちな私が選んだこの1冊は、おそらく1番最近の?短編集で、あんまり有名どころではなかったのかな?でも面白かった〜! 洋書あるあるなのか、本のタイトルよりも著者の名前が大きいってすごいですよね。 なんと1作目の"Never Sleep in a Bed Facing a Mirror"は、たった5行のホラーストーリー。たった5行なのにしっかり怖い。え、たった5行ですよ? 私は

1番には、たぶんなれない

題名と可愛らしい表紙からわかる通り、「一生懸命頑張らなくてもいいじゃん」というメッセージが詰まった一冊。 この間ちらっとAmazonのランキングを見たら、50位くらいだった。 みんなけっこう疲れているのかしら。 私はけっこうな負けず嫌いで、人生の半分以上「1番じゃないと嫌だ!!!」という気持ちを原動力に爆走してきたように思う。 自分よりできる人、あるいは自分と同じレベルの人がいれば、真正面から正当な方法で蹴落として上に行きたいと思っていた。 それで1番になったことも