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機能性冷凍そば「千乃韃靼」誕生

蕎麦店主のひとり語り・4


韃靼そばのケルセチンが血糖値上昇抑制

冷蔵生麺の開発に続いて2013年、冷凍生麺の開発がスタートした。北海道立工業技術センター大坪雅史氏(現・専門研究員)の指導を受けて進める中で、ひとつ予想外の発見があった。製造過程の温度管理によって、ケルセチンの量をコントロールできるというのだ。これを機に新たな共同研究開発が始まる。私としても、この製品は店でお出しする味にかなり近く、韃靼そばの最大の魅力である血糖値上昇を抑える働きが保たれているから、食べる人の役に立つ。

そば職人の仕事ではそばの風味を高めるのが目的だが、この場合の製法はケルセチンを高めることが目的なので、最初はとても戸惑った。まず、加水量が全く違うと気づくまでに何度も何度も試作が必要だった。そして、いくらなんでも多すぎるだろうというほど水を入れた時、ようやく韃靼そば麺の完成形を見ることができた。

ケルセチンを引き出す独自技術

一般的なそばは、ポリフェノールの一種であるルチンを含んでいる。韃靼そばは、これもポリフェノールの一種、ケルセチンが豊富だ。ケルセチンは一般のそばには含まれない成分で、食後の血糖値上昇を緩やかにする働きがある。そして、韃靼そば麺のケルセチン量は製法によって増やすことができる。そのためには製造時の温度管理がとても重要だ。千乃家の新しい厨房では工業センターの指導を受け、生地温度の管理も含め、HACCPに準じて行なっている。

田中洋子先生(藤女子大学人間生活学部食物栄養学科准教授)はこのケルセチンに着目し、研究テーマにして下さった。当社は研究材料となるそば麺の製造を担当した。

2021年には田中先生の論文「ダッタンソバ茹麺の血糖上昇抑制作用とその関与成分」が日本補完代替医療学会誌に査読付き掲載された。査読付き論文は、北海道食品機能性表示制度(ヘルシーDo )の必須条件でもある。この研究成果を活用した韃靼そば冷凍生麺「千乃韃靼」は、2022年ヘルシーDoに認定され、5月に発売となった。認定理由は、「血糖値上昇抑制作用を有する機能性成分を含む」という点だ。

味は、茹で方とタイミングで変わる

千乃韃靼は、韃靼そばを最大限に配合しながら麺の味わいを引き出した、店以外でも召し上がれる冷凍麺だ。つながりの弱い韃靼そばを最大限配合しているため、実は茹で方と食べ方にちょっとしたコツがある。ご面倒でも、どうかご家庭で最後の一手間をかけて頂ければありがたい。

ポイント1 茹で方
まず、鍋に湯を沸かして麺を静かに入れる。すると湯の沸騰がふっと静まり、麺が鍋に沈む。そこで一度だけ箸で持ち上げ、鍋底から麺を離す。火が通るまで決してかき混ぜず、熱湯の対流でぐるぐると麺が動いていたらバッチリだ。
ポイント2 茹で時間
一般的なそばは茹ですぎるとのびるが、この麺はしっかり茹でて初めてそばの味が出る。好みによっては、パッケージに表示した時間より30秒ほど長めに茹でてもよいくらいだ。茹で上がったらそば湯を取り分けてザルに取り、冷水でそっと締めればもりそばの完成だ。
ポイント3 すぐ食べる
茹でた韃靼そばは時間を置くほど苦みが出る。食べ慣れると「このほろ苦さがいい」となるのだが、最初は茹でたらすぐ召し上がるのがベスト。

千乃韃靼は、食べて体を労わって欲しくて生まれた蕎麦だ。
ご自宅で手軽に、一度お試し頂ければ嬉しい。
次回は研究者の方々とヘルシーDo(北海道機能性成分認証制度)に挑戦!

20年以上の開発研究の足取り



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