「ヘルシーDo」認定体験記
蕎麦店主のひとり語り・5
食品開発には「良い筋道」があるようです
機能性成分が豊富な冷凍生麺、「千乃韃靼」(せんのだったん)。
開発を始めた2000年ごろ、ダッタンソバはあまり知られていませんでした。ただ、当時は地元産原料があったので、その点から道立工業技術センターに関わって頂くことができました。私自身も調べて行くうちに大学の研究者と繋がり、ダッタンソバの機能性、健康寄与の可能性、加工法などいくつもの研究テーマに発展しました。これから申請をお考えの方は、自分以外になるべく多くの人が関わりたいと思えるテーマ設定から始めるのが良いと感じます。
ケルセチンはポリフェノールの一種で、ダッタンソバの製麺過程で水と反応して増えます。冷凍生麺「千乃韃靼」は独自の工程によりケルセチン・ルチンを最大限に付与しています。これらの成分が血糖値上昇抑制作用を有する点において、“機能性成分を含む北海道の食品”として北海道食品機能性認証制度(ヘルシーDo) に認定されました。認定までの道筋は、研究機関と研究者の皆様のご支援によるものです。私自身がこのプロジェクトの事で胸を張れるとすれば、なかなか商売にならなかった韃靼そば製品開発を20年以上続けた事でしょうか。
「ヘルシーDo」、申請してわかったこと。
まず概要ですが、申請用の情報はこちらのサイト(北海道経済部 ヘルシーDoのページ)にまとめられています。「申請を検討する段階で必要な書類が揃えられるか確認して下さい」とあります(信頼度も高いですが、認定ハードルの高さも感じますね)。
提出書類一覧は上記サイト内 「ヘルシーDo申請マニュアル」しんせいs。
当社はこれまで研究など縁のない「町のそば屋」なので、アドバイザー的な方が必要でした。「千乃韃靼」の場合は、2001年から共同研究を行ってきた北海道工業技術センターのご協力で、必要書類を揃えることができました。
やるべき事がいっぱい! ヘルシーDo申請
申請書類は、ケースごとに要不要があります
マニュアルの中で「消費者庁⾧官に届出を行った機能性表示食品届出書一式の写し」「その他、知事が必要と認めたもの」については不要のため提出しませんでした。提出書類のうち最も肝心で、私が特に難しく感じたのが下の2つです。
査読付論文
論文は掲載されただけでなく、査読(審査)を経て受理されたものが一本、必須です。今回提出したのはセンターと栄養学研究者の方々が3年以上かけて取り組まれた論文で、2回目の投稿で受理されました。本来は安全性の試験を行う必要がありますが、今回は既存の論文があったためこれを引用することで書類を作成できました。
誓約書
申請には、提出する論文執筆者全員の使用許諾を得られていることが必須です。今回は私が共同執筆者だったのでスムーズでしたが、外部の方が関わる場合の権利関係には注意が必要です。
認定後もある、運用上のタスク
認定後に提出を求められるのが、工程表とパッケージ見本です。これらもかなり苦戦しました。
※正確には、パッケージは事後に作るのではなく、申請時に写真を添えて提出し、その後指摘を受けて修正する手順でした。
工程表
当社の商品内容が韃靼そばとつゆのセットなので、その両方について工程を書きます。様式は任意なのですが、マニュアルの作成例に沿って作りました。原材料・添加物名・添加物表示・原料原産国・配合と作業工程・管理基準のフローを書きます。そばについては原材料が韃靼そば粉と小麦粉のみ、工程もさほど難しくはありません。
一方、店で25年継ぎ足しているそばつゆは5工程になりました。専門的な言葉で順序だてて分かりやすく書くのは難しく、結果的に工業技術センターに助けて頂きました(同センターには食品製造に明るい方が特に多いのです)。
パッケージ
ヘルシーDoを表示する場合は、内容や表示方法について詳細なルールがあり、パッケージマニュアルに準じて作成します。しかし実際は商品形態がそれぞれ違うために、マニュアルの参考例だけではかなり難しいと感じました。千乃韃靼の審査通過までには、道庁担当部者とデザイナーの間で26回ものやり取りがありました。(デザインを担当してくださったBloom-A 代表の岡田暁氏には本当に感謝しています。)こうした認定制度を前提に製品開発する場合の要領として、デザイン上のルールをよく確認してからパッケージに着手すればよかったと思います。
謝辞
最後になりましたが、認定を受けるにあたり、韃靼そば開発の道筋をつけて下さった北海道立工業技術センターの大坪雅史研究員、韃靼そばをご研究テーマに取り上げて下さった田中洋子先生(藤女子大学准教授)、ご監修いただいた荒川義人先生(札幌保健医療大学教授)に、改めて感謝申し上げます。//