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【怪談・怖い話】鳴り続ける玄関のブザー音


【怪談・怖い話】鳴り続ける玄関のブザー音

俺がボロアパートで一人暮らしをしていた頃の話だ。

あれは深夜の2時頃だったと思う。

急に玄関のチャイムが鳴った。

チャイムと言っても俺の家は築30年のボロアパートだ。

「ピンポーン」という音ではなく「ブーッ」という、いわゆるブザー音が鳴る。

深夜に急に「ブーッ」という独特の機械音が鳴らされ多少不機嫌になりつつも、どうせ酔っ払いが部屋を間違えたのだろうと思い無視をしていた。

そんな考えも空しく、酔っ払いか誰かわからないがソイツは何回もチャイムを鳴らし続けた。

さすがにイラっとした俺は、ソイツに「部屋が違うんだよ!」と怒鳴り散らしてやろうと思い玄関まで向かった。

チャイムを鳴らす「ソイツ」

俺の家は古いので、あるのは昔ながらののぞき穴だけ。

イラついていた俺はドタドタと荒い足音を立てのぞき穴を覗くと、そこには30代くらいの痩せた男がいた。

異常にゲッソリしており、頬がこけているのがのぞき穴ごしでもわかった。

服はハッキリと見えなかったが、恐らく上下お揃いのスウェットを着ていたと記憶している。

俺がのぞき穴を見ている時には、男は玄関のチャイムを鳴らす事を既に止めていた。

恐らく建物の壁が薄いため、俺が起き上がり玄関まで来た事を足音で察したのだろう。

ドア越しにお互いがいる事を認識し、お互いの様子を伺っている事に嫌な緊張感を覚えた。

気持ち悪くなった俺は、玄関のチェーンを「ガシャン」と音を立て荒々しくかけた。

わざと荒々しく大きめの音をたてたのは、相手に対する少しの抵抗だ。

相手もいい加減諦めるだろうと布団に戻り、眠りに付こうとしたそのとき、

またなったのだ、玄関のチャイムが。

流石に俺は腹がたった。なんなんだコイツは。

本気で怒鳴り散らしてやろう!そう考え起き上がろうと思った瞬間、俺は動けなくなった。

それでも終わらないチャイムの音

動けなくなったというのは、金縛りとかよくある話ではない。

恐ろしすぎて身体が固まってしまったのだ。

チャイムの音は鳴っているのだが、玄関で鳴っていない。今度は違う。

耳元で聞こえるのだ。玄関のチャイム音が。

それに顔のすぐ横には、今までなかった人の気配がする。

ブーーーーーーーーーーーっ・・・

ブーーーーーーーーーーーっ・・・

ブーーーーーーーーーーーっ・・・ハァ

恐怖で動けない俺はある事に気が付いた。

ブーという機械音の前後に、人の呼吸音というか、低い吐息の音が聞こえる。

チャイムの音を口から出しているのか?あの男は。

俺は顔の向きを絶対に変えず、布団を頭からかぶった。

しかし「ブーッ…スゥ…ブーッ」という声とも音ともわからないソレは、布団の中、耳元で鳴り続けている。

結局その日、俺は一睡もできなかった。朝日が差し込む頃には、あの気持ち悪いチャイムの音も消えていた。

あの男の正体

それから2日後、隣人が亡くなったという話を俺は耳にした。

何でも心臓発作らしく、玄関前で倒れているのを知人が発見したらしい。

亡くなったのは2日前、職場を無断欠勤した隣人を心配した職場の人と、合鍵を持っていた母親が第一発見者らしい。

奇しくも俺が奇妙な体験した日と、隣人の亡くなった日は一致した。

ただし、その住人の顔を俺は知らない。

果たして、そいつが俺に助けを求めにきたのか、未だに答え合わせもできていない。

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