吉野家×Ideinの「牛丼テック」で未来のサムサンテックは生まれるか?

DataStrategyもパートナーである、IoTプラットフォームサービスActcastの開発元であるIdein社が、吉野家とオープンイノベーションプログラム「牛丼テック」を共同開催し、共創パートナーを募集しています。12/4(この原稿を書いている日)が締め切りで、今後12月-1月に向けて審査が進んでいくようです。

IT・デジタルのイメージがない吉野家が、最近20億円の大型調達を発表したスタートアップIdein社と組んでテックイベントを行うだけでも非常に面白いのですが、画像認識技術の描写やソフトウェア開発場面がリアルだと話題のNetfrixの『スタートアップ -夢の扉-』を彷彿とさせる、大企業×スタートアップ×画像IoT技術 の組合せがタイムリーで興味を引きます。

Idein社CEO中村晃一がこのようなツイートをしており、ドラマが技術者の興味を惹くテーマで描かれていることがわかります。

エッジIoT技術の活用とマネタイズの難しさ

『スタートアップ -夢の扉-』で、天才ソフトウェアエンジニアで創業者のドサン率いるAIスタートアップ企業のサムサンテックは、高い技術を持つ3名で構成されています。しかし、多くのテクノロジードリブンのスタートアップが陥るように、「高い技術力」と「マネタイズできる事業計画」を両立させることが出来ず、投資家から思うような支援を受けられません。ドラマでは、独創的な着眼点を持つ主人公ダルミがメンバーに加わることで、技術とアイデアの両輪でビジネスが加速していく様が描かれています。

これは、現実のビジネス現場でも起こるリアリティのある筋書きです。

カメラやセンシングを利用した画像解析による属性分析や、そのデータを活用したマーケティング利用は非常に注目度の高い分野で、リアル店舗でPoCが実施されてきました。POS等の購買データは実績に基づく過去のデータですが、カメラやセンサーで人の意思決定前の行動データはこれから起こる未来のデータであり新規データとして注目されているからです。

「何をしたいか」が明確でなければ、優れた技術も片手落ちに

人口増加に合わせた市場シェア獲得戦略が取れなくなった現在、自社の顧客を正確に捉え、紋切型ではない「顧客満足度向上施策」や「サービス品質改善」が求められています。そのため、様々な角度で顧客を可視化したいというニーズは強いです。

しかし、技術ありきでPoCをしてみても、「何かできそうなのはわかったけど、このデータや技術をどう事業に活かしていくの?」という事業企画になかなか繋がらず、PoCが片手落ちで終わったという悩みはよく聞きます。

「何を実現するか?」というゴール設定(企画)を立てることが DX / AI では重要ですが、同時に最も難しい点です。先に述べたように、間違った企画だと技術的に実現できてもPL効果がなく、「すごい技術だね」で終わってしまいます。しかし、その技術で何がどう実現できるか?を理解できていないと企画が立てられず、実現不可能な「妄想」になってしまいます。

これらの課題をクリアするには、技術がわかる人と一緒に「スピーディに筋の良い企画をたてる」ことですが、「筋のいい企画」がどんどん生み出される魔法は残念ながらなく、どうすればよい企画を作り出せるのかのレシピは誰も知りません。

しかし、牛丼テックはこの問題の解決策になる可能性が非常に高いです。多くの事業会社が抱える悩みである「筋のいい企画」を集める装置として、なぜ牛丼テックが有効に機能するかを読み解きます。

吉野家×Ideinの「牛丼テック」が ”うまい”点

リリースを見た時は、思わず「うまい!」と唸ってしまいました。目新しさ、面白さはもちろんですが、このイベントを通して「吉野家及び小売店舗に活かせるエッジコンピューティング技術の活用アイデア」を大量に集めることができるからです。

吉野家ブランドでのキャッチ―なイベントを開催により、最も難しく重要な「企画」を広く集めることができ、実現のための技術提供はIdein社がフォローする仕組みです。企画をコンペ形式で集めることで「筋の良い企画」を抽出でき、技術力が非常に高いプラットフォーム企業が開発サポートすることで、成功確率・効率を上げて実現性を担保することができます。

また、利用テーマソリューションであるActcastが、IoTプラットフォームサービスである点も多様な参加者の提案を募れる観点からプラスに働きます。例えばプラットフォームではなくAIソリューション提供者だった場合、指定AIソリューションを利用するという「縛り」ができてしまいます。

これでは課題解決手段が制限されてしまうことで最適な企画にならない恐れがありますが、プラットフォームサービスであることで「課題を解決するためには、何が最適か?」という手段の深堀も叶えられます。

吉野家とIdeinのプラットフォーム活用で、パートナーも成長するプログラム

吉野家とIdeinのメリットばかりがなのか?というと、もちろんそうではなく、参加パートナー側にも主に6つのメリットがあります。

1.PoCの実施
吉野家の実店舗でのPoC機会が得られ、事例は共創パートナーの実績として広報活動に活用可能

2.ビックデータ活用
吉野家の店舗でセンシングしたビックデータを、共創パートナーの分析ソリューション・コンサルティングに活用可能

3. 本導入検討
プログラムの結果を踏まえ、主催企業における実運用に向けた協議の機会を提供

4. ソリューション拡販が可能
開発ソリューションは吉野家との独占契約ではなく、その他の企業向けに販売することも可能

5. 牛丼券(365日分)
共創パートナーのソリューションが導入された実店舗における食事券の贈呈

6. 社名入り特製吉野家どんぶり(上位3社)
共創パートナーの社名が入ったどんぶりを贈呈(各社1個)

牛丼件や社名入りの特性吉野家どんぶりも魅力的ですが、大きなメリットはやはり1~4にあげられたビジネス上のメリットでしょう。

吉野家の資金力とIdeinの技術力を活用してアイデアを実現できる上、このイベントを通してリリースしたソリューションサービスは吉野家に限らない他社を含めたパッケージ販売が可能のため、スケールメリットを得ることができるのです。吉野家に限らず展開できるという点は参加者にとって非常に魅力的なのではないでしょうか。

このように、「牛丼テック」は先進性やビジネス拡張の面からも、吉野家×idein×パートナーが「三方よし!」になる素晴らしいオープンイノベーションプログラムと言えます。どのようなソリューションが受賞するのか、今から楽しみです。

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