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データサイエンスを始めるのにデータサイエンティストは必ずしも必要ない

「データ活用をして事業推進をしていきたい」

そんな課題が出た時に、社内外のデータサイエンティスト人材を探そう!と考えて実行する会社は多いです。しかし、各社、各事業がDX及びデータ人材を欲しがる現在、「欲しい!」と思うから採用できるか?というとそう簡単ではありません

そもそも、「社内にDXやデータ分析が得意な人材がいないけど、データ分析や活用を始めたい」と思った時に、データサイエンティストは必須なのでしょうか?

そもそも「データサイエンティスト」が必要な分析なのか?の検討

この1~2年で、AI関連ソリューションの普及がかなり進みました。精度の問題はありますが、AIやデータ分析的アプローチを、品質管理、顧客行動の予測、在庫の最適化、などといった「よくある導入方法や技術」に対して行う際に、こうした第三者が既にリリースされているソリューションを組み合わせて初期的な検証を実施するハードルは各段に下がってきています

例えば、GoogleやAmazon, IBMなど大手は、データを送信するとAIによる分析結果が得られるAPI*を数多く提供しており、こうしたものを組み合わせることで、画像・動画解析や音声解析、自動応答のチャットボットなどを作ることもできます。

(*API: Application Programming Interface の略称で、簡単に言うと「何かデータを送信すると何か分析結果が返ってくるもの、とこの文脈では捉えてください)

「こういうデータ分析技術を自分たちのデータで検証したい」と思った時に、社内にデータサイエンティストが不在でも、外部のAIソリューションやAPIを組み合わせて検証できるシーンが増えてきました。

もちろん、そうした外部技術を活用できるエンジニアの存在や、適切に技術評価をしてテスト設計を行うことは、別途必要なケイパビリティになります。しかし、自社で実施したいことが、既存の外部ソリューションを活用して「まずは始められる」状態なのに、「データ=データサイエンティストの採用、DX人材の採用だ」と近視眼的に判断してしまう事例は多いです

いきなり社内にデータ分析チームを持つことのメリット・デメリット

データ分析人材を社内に持ち、内製化して事業推進することが必ずしも正とも限りません。
恒常的にデータ分析チームを社内に持つことには、一般的には、メリットとデメリットが存在します。

メリット
・ 専門性を持った人が事業に沿って「何を試すべきか」を考え、初期の流動的な状態でも主体性を持って試行錯誤できる
・ 社員としての役割があるため、外へ出しにくい機微情報へアクセスできたり、社内他部署との交渉や調整をしやすく、特定プロジェクトを超えた領域の課題へアプローチできる
・ 上手くいく可能性が低くてもリスクを取ってトライできる
デメリット
・ 大きな方針が変わりやすい初期段階だと、必要なスキルセットが変わる可能性がある
・ データサイエンスチームとして構築できないと、属人化リスクと離職リスクが高い
・(既存の人事制度によっては)データ分析プロジェクトの推進と、人事制度の変更等の制度設計を同時に進める必要がある

採用とチームビルドには「旗を立てる」ことが必要

データ分析やDXを行う専門チームを新たに立ち上げる場合は、「この会社・事業はこのようにAI/データを使って事業やプロダクトを進化させていくのだ」という旗が立っていると進めやすいです。特に、部署ごと大きな予算をとってシニアレベルから採用するのではなく、ミドルレベルから採用する場合は旗があったほうがより進めやすいと思います。

しかし一方で、「旗を立てる」ことは、これから新しくデータサイエンスを始める会社にとっては、なかなかハードルが高く、すぐにできることではありません。

そのため、データサイエンス の「始め方」として、「まず社内チーム」ではなく、「まず外部AIソリューションやAPI」を検討して初期仮説を検証し、資本投下するべき課題(解くとビジネス上価値が大きく、技術的にもなんとなく解ける可能性が高そう)を見つけるステップを踏むことは、特に事業や技術の新陳代謝が速くオープンソースや各種テクノロジーがどんどん出てくる今の時代にマッチした手法と言えます。

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