見出し画像

最近noteで読みがいのあった小説2024.8

「便りの先に」(島本葉 さん)
創作大賞2024の応募作です。
第一話は期間中に読んでスキしたのですが、時間を取れず、続きは最近読みました。
郵便碁を通して 遠くの人との交流を描いた作品です。
肉体系のゲームでは、特にクライミングやボード、卓球などで競った人たちがお互いの技を楽しんでいる、心の底から健闘を称えあう様子が見られます。連歌、碁や将棋、ポーカーなどの思考重視のゲームでは、昔からお互いの知識や発想、精神力などを認め、楽しみ、喜び合っていたのでしょう。そんなことが思われる物語でした。
江戸期には、青森の弟子が、京にいる師匠に俳句を習ったりということもあったようですし、「距離」の遠さを飛脚、もとい郵便といった 「時」に変えて感じられるつながり方というのは素敵だなと思いました。紙の年賀状に近い風情でしょうか。
上村は碁をほとんど知らないので、専門用語を目にするたびに、こういう表現をするんだなあと面白く読むことができました。

「新淀川橋梁」(きなこ さん)
大阪を舞台に、スミレさんと桐子さんの営む居酒屋に足を向ける僕としーちゃんの長い時間の物語。表面的ではないけれど、深入りもしないスミレさんや桐子さんとの会話、それは僕としーちゃんの関係にも当てはまっている。核心の部分というのは相手の心に土足で踏み込むことになるので訊けないし、自分との関係を名前の付く関係にしてしまうのではないかという怖れもあるし、そんな難しい人間関係を描いた物語です。


「ブーケと抜け殻」(野やぎ さん)
会社で仕事のできる気遣ってくれる先輩と私の特別な関係 いくつかのエピソードが、この二人の関係と、各々の人間性を表していて巧いなと思いました。こういう先輩いたらいいな。
上村も つぶあん よりは こしあんの方が好きです。

「信」(ヤ さん)
とにかく怖いです。
ホラー苦手なのに、小説の前の文章を読んで、そのまま本編も読んでしまいました。
二日、三日、ソレがちらついてよく眠れなかった。
行動力のある女性に誘われて山に出かけていくのですが、
ふとしたことからソレに出くわしてしまい、
阿鼻叫喚という物語です。
山のルールは守らないといけませんね。
蔵王、行きたくなくなりました。

https://note.com/ya_nowaki/n/n8608033401c0


「左手旅行」(久々原仁介@大阪文学フリマう-51 さん)
タイトルを読んだ時には、想像しなかった世界がありました。
本来は怖い話のはずなんですが、主人公は怖いというよりも誇らしい優しい気持ちになっているんです。それがすごい。


「First Love」(橘 実来 さん)
まだまだ続く物語で、上村も読んでいる途中なのですが、とても丁寧且つ緻密に恋の心情が綴られているのです。本人はうわーとぐるぐるして 一瞬でめまぐるしくいろいろな想念がわきあがっているのでしょうけれど、その心の襞を一枚一枚きちんと書くとこうなるのだなあと思います。
作者さんは 心の中を観察して掬い取る能力が高いのだなとわかります。
一見平凡そうな大学四年生の女性と、ある世界でトップに上り詰めようとしている強い気持ちを持った大学一年生の男性との物語です。 二人の年齢と軸足を置く世界が違うだけに、予想される妨げがいろいろあって これからどうなるんだろうと気になります。文体が重くないので、長さを感じさせません。これからも読み継ぎしていきます。

上村は 本編から読んだ方がこの物語に没入できると思いますが、あらすじや人物紹介から読みたい方はこちらです。


みなさん、お米は手に入っていますか?
お米屋さんに行けばだいたいあります。
安いお米は売り切れていたけれど、
他のは うずたかく積まれてありましたとさ。
上村も(朝食はパンですが)白米や玄米を食べて、心も体も元気になって、物語を紡いでいきますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?