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「データガバナンス」データマネジメント知識体系(DMBOK)第3章の解説

はじめに

データガバナンスというと、データを正しく扱おうというデータプライバシーの文脈だと思うかもしれないけど、そうではない。

データマネジメント活動を効果ある活動にするために正しく管理・監督することをデータガバナンスと呼んでおり、この章ではそのためにやるべきことが書かれている。

データガバナンスのための体制構築としては、第16章「データマネジメント組織と役割期待」にも類似したことが書かれており、実際取り組むときは合わせて読むとよい。

DMBOKの各章の要約・解説

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データマネジメント知識体系(DMBOK)第3章「データガバナンス」について

データガバナンスとは

データガバナンスとはデータ資産の管理に対して職務権限を通し統制する。
そして、統制とは計画を立て、実行を監視し、徹底させること。

データマネジメントの各所の軸に対して、統制を効かせること。
ガバナンスなしに実行すると、計画に沿っていないことをやってしまう。
なので、DMBOKホイール図の中心に位置づけられており各所の軸に対して計画を徹底させることが意図されている。

データマネジメントとデータガバナンス

データマネジメントとデータガバナンスの関係性は以下の通りである。
データマネジメントは「データを資産として管理する」ことの実行すること。データガバナンスはデータマネジメントが正しく行われているのか管理・監督すること。

すなわち、データガバナンスとはデータマネジメントを継続的に改善しながら続けていくプログラム活動。
データ環境を構築するためにDWHを導入することなどは一時的に行うプロジェクト活動として位置づけられるが、データガバナンスはデータマネジメント活動が続く限り終わりなく継続されるプログラム活動とされている。

データガバナンスをするための組織

組織はデータとITを1つと見なす傾向があるが、データドリブンな企業になるためにはこの考え方を改め、データの管理とITの管理は異なることを認識しなければならない。

データガバナンスの実効にはチーフデータオフィサー(CDO)とチーフインフォメーションオフィサー(CIO)の2つの観点が必要。

データから価値を多く引き出すためにはIT戦略とは別にデータ戦略が必要であり、CDOはデータ戦略の実現のために必要なITをCIOに要求する必要がある。

チーフデータオフィサー(CDO)

データに関する立法と司法の視点。データに関する戦略を策定し、IT部門が正しく実行しているのか監督する。

チーフインフォメーションオフィサー(CIO)

データに関する行政の視点。データ戦略の実現に必要なIT基盤の構築を行う。
※現状の日本の会社のチーフインフォメーションオフィサーとは違いそう。

データガバナンスオペレーティングモデルタイプ

データガバナンスの組織体制について説明する。
どのような体制を作るのかは会社の事業形態によって適している形態が違うため、自社にあったものを選別する必要がある。

集中型

1つの専業事業をもっている会社はこの形態をとるとよい。
事業が1つしかないため、中央のデータガバナンス組織が横断的に監督することができる。

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DAMA DMBOK第3章 データガバナンスより

複製型

複数の事業を持っている会社はこの形態をとるケースもある。
事業単位ごとのデータガバナンス組織が監督するため、横串で見ると冗長になってしまうという欠点がある。

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DAMA DMBOK第3章 データガバナンスより

連邦型

中央型と複製型のハイブリッド型で、複数の事業を持っている会社で複製型のデメリットが目立つようになればこの形態をとるとよい。
データガバナンス組織は複数の事業にまたがって監督する必要があるため、難易度は高くなる。回避策として事業単位ごとにサブのデータガバナンス組織を設置し全社的な取り組みだけ横断的なデータガバナンス組織が監督するといった構成にすることもできる。

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DAMA DMBOK第3章 データガバナンスより

データスチュワードの任命

データスチュワードとは

データマネジメントを勉強すると必ず出てくる役割であり、データを管理する人のこと。
職務名や職務規定を通じて正式な役職とすることもできるが、それほど形式ばらずに担当者とすることもできる。

チーフデータオフィサー(CDO)とチーフインフォメーションオフィサー(CIO)はデータについて会社全体の統括をしているが、現場のデータについて隅々まで詳しいわけではない、そのため現場のデータを具体的に理解している人をデータスチュワードとして任命し、データガバナンスの活動の実行責任と結果責任を担ってもらう。

アサインはどうするのか

現場のデータについて具体的に詳しい人にアサインするべきであり、組織には既にその様な人は存在しておりデータガバナンス活動を契機にデータスチュワードが「発見」されることが多い
そういう人を見つけて「データスチュワード」として任命し、権限を与えることが大事である。
今まではボランティアとして行っていたデータガバナンス活動から、データスチュワードとして任命し明示的に、データマネジメント活動を行うことを職務とするとよい。

「データガバナンス」のゴール

データマネジメントの活動について計画を立て、実行を監視し、徹底させることがゴールとなる

  1. 組織が自身のデータを資産として管理できている

  2. データマネジメントに関する原則、ポリシー、手続き、評価指標、ツール、責任について定義し、承認し、伝達し、実施されている

  3. ポリシーの遵守、データの利用、管理活動を監視に導く

「データガバナンス」の進め方

データガバナンス活動も現状把握、戦略の策定、導入と一般的な活動と同じ手順で行われる。

データガバナンス活動はデータマネジメントのために非常に重要な活動であるが、最初からデータガバナンスが全社導入されることはほとんどない。

まずは、ビジネス上価値が高いところから行い、データガバナンスが会社として価値のあるものだと認められることが重要である。データガバナンスが認められて、データガバナンスプログラムが計測時手持続させるためには企業の文化の変革が必要である。

データガバナンスの価値を評価して、ビジネスへ貢献していることを測定する必要がある。

現状把握

・準備状況の評価
・現状調査
・組織との連携ポイントの策定

戦略の定義をする

・データガバナンスオペレーティングフレームワークの定義
・ゴール、原則、ポリシーの策定
・データマネジメントプロジェクトの支援
・チェンジマネジメントへの関与
・課題管理への関与
・規制遵守要件の評価
・データガバナンスの導入
・データ標準と手順の奨励

導入

・業務用語集の作成
・アーキテクチャグループとの調整
・データ資産評価の支援
・データガバナンスの組み込み

「データガバナンス」の成果物

データガバナンスの成果物は以下の通り。認められたデータの値や、成熟したデータマネジメント業務といった文化に関する内容も成果物として定められている。

  • データガバナンス戦略、ロードマップ

  • データ戦略、ロードマップ

  • データ原則、データポリシー

  • 運用フレームワーク

  • データガバナンス実行体制

  • 実行計画

  • 業務用語集

  • データガバナンス・ウェブサイト

  • 認められたデータの値

  • 成熟したデータマネジメント業務

データガバナンスの解説動画

AI事務員宮西さんでおなじみの宮西さんと松田さんの解説動画となります。
データガバナンスについて解説しているので、動画で学びたい人は是非ご覧ください。

おわりに

自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。

モチベーションのために役にたったという人はぜひ、フォロー&スキをお願いします。

ツイッターでもデータマネジメントに係る情報をつぶやいてますので、よろしくお願いします。

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著者もDMBOKを読むためには非常にボリュームが多く読み解くには苦労するので、かみ砕いた解説書をまとめたと書いてある通り、DMBOKを独自解釈してわかりやすく書かれている。
DMBOKを技術者目線で読み解いた内容になっているので、実践的データ基盤への処方箋と同様データ技術に係る人におすすめする。


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