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データエンジニアリング組織の生存戦略

この記事は datatech-jp Advent Calendar 2023の16日目の記事となります。

はじめに

データエンジニアリング組織はデータ基盤の管理と構築を主たる業務として従事していると思いますが、どうしても業務内容の幅が狭くなりがちです。

立ち上げ時は整っていないデータ基盤を整備して文化を根付かせていくという志の基、勢いもやりがいもあるのですが、整備されるにしたがって、業務が安定的になってきて、周りのデータ職種からの問い合わせ対応などの対応が増えてきて、下働き感が強くなってしまうことがあります。

その結果、立ち上げ時の時のようなやりがいを求めて他の会社に転職してしまうことも起きるといった、組織としての課題があります。

上記のような組織的課題があるので、組織側から考える生存戦略、すなわち生き残れる組織を作るためにはどのようなことを行っていけばいいのかという個人的な考えを書きます。

本記事のポイントとしては、データ職のキャリア論という個人から見たキャリア戦略ではなく、データエンジニアリング組織から見た人材定着戦略となります。

なお、データエンジニアとしてスペシャリストやマネージャーとなるという選択ももちろんありますが、そこは既存組織の延長戦でなし得るため、本記事では割愛します。

また、本記事の内容は過去、現在に所属している企業とは全く関係なく、各種セミナーや著者の経験を持って感じたことを書いてます。

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狙い、目指す像

「はじめに」に書いた課題をまとめると、同じことをやっていたら閉塞感が出てきてしまうよねということで、組織として閉塞感がでないためにはどういう状況になっていると良いか目指す像を考えます。

自分の構想では閉塞感が出ないためには、領域を広げるというのが手段となりますが、データエンジニアリング組織が広げられるのは、以下の2択になります。

  • 開発領域へ広げる

  • データ領域へ広げる

このキャリアの領域を広げる仕込みを、立ち上げ時など早いタイミングにしておくことが重要です。
安定してから領域の拡大を行うと実現までにリードタイムができてしまうため、泥棒を捕らえて縄をなうということになってしまいます。

データエンジニアのキャリア

また、データエンジニアリング組織としてのままキャリアパスとしての領域を広げることももちろん対策として必要です。

  • マネジメントへ広げる

  • スペシャリストとして深められる

この辺りははじめにでも書きましたが、意識せずともデータエンジニアリング組織として考えている事なので、本記事では触れません。

開発領域へ広げる

エンジニアバブルという表現をされているように、近年はDXを行いたい企業が多く、システムの内製化のためどこの会社もエンジニアを欲しがっている状況です。

そのような状況ですので、どんな企業も開発は人足りてないはずです。
ですので、開発領域へ広げるのはそんなに難しくないと考えられます。

データエンジニアはデータ基盤を構築しているはずなので、データを知っているという事を武器にして開発を担うのが良いでしょう。

データ領域へ広げる

データエンジニア組織があるという事は、データサイエンス組織などの活用を主としている組織も存在しているはずです。
データ活用組織へキャリアを広げていくというのも、選択肢として存在させると良いでしょう。

突然データサイエンス組織に異動するというパスもありですが、データエンジニアとしての知識を活かせるアナリティクスエンジニアを経由できるようにするというパスを作っておくと当人にとっても領域が広げやすいでしょう。

開発領域とデータ領域へ広げた結果

目指す像として見据えた組織が、どういう業務分掌にするかは組織によると思いますが、開発領域とデータ領域の両面を伸ばすことで、単体の組織としてビジネス側と向き合って簡単なPDCAを回すことができれば、かなり強力な武器になります。

イメージとしてはデータエンジニアリング組織だけで、開発、データ格納、分析を行い、シームレスにPDCAを回すことができて、成果にコミットするような組織です。
コミュニケーションコストが低くて成果が出る組織が作れるとなると、会社としても構築しやすいと考えられます。

冒頭に書いた閉塞感ですが、自ら成果を出す側に着くことで、下働き感が薄くなってくるという対策にもなります。

領域を広げるための体制

どうやって広げればいいのかというと、組織として課題を感じている人が誰でも主体的にやればいいという事になりますが、組織構築となると社内政治的な技術も必要となってきます。

既存組織との業務分担をどうするのか、責任分界点といった事もキーになります。

今回データエンジニアリング”組織”をテーマにしましたが、組織にはプロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャーなど構想を考えていくことを得意とする人がいると思います。

企画職の人が、生存戦略について課題感を持って進めてくれていればいいですが、そうではなくエンジニア発の時は企画職を巻き込んで体制を作り考えていくと上手くいくでしょう。

ロードマップ

開発もデータ分析もやる組織が目指すゴール像として定めたとき、どのようにしてそこにたどり着くか、ロードマップを考える必要があります。

よく、未来のことなんてわからないからロードマップなんて作らなくてその時々に判断すればいいのでは?という話も聞きます。

自分の回答としては、ロードマップの作成はロードマップ通りに進めることが目的なのではなく、あらかじめ構想しておくことで場当たり的な対応となることを防ぎ、成功の確率を上げることが目的だと考えてます。

ここではどのようなロードマップを作ったのかではなく、どのように考えてロードマップを作っていけばよいかを説明します。

伸ばしやすい領域を特定する

組織の状況によって開発方向に伸ばすのか、データ方向に伸ばすのかは難易度が変わってくるでしょう。
競合するような領域ではなく、まずはブルーオーシャンの新規領域を見つけましょう。

キーパーソンとの信頼関係を構築する

領域を決めたら、その領域のキーパーソンとデータエンジニアリング業務を通して信頼関係を構築します。

この領域については、戦略に沿って行うというよりも通常の業務を行っていたらデータエンジニアリング業務の特性上いろんな領域のキーパーソンとつながることができるため、あまり意識せずとも達成できる、もしくはすでに達成できているでしょう。

提案する機会を待ち提案する

データエンジニアリング業務を通して新規領域への提案する機会を待ちます。
最初に特定した領域がブルーオーシャンであるのであれば、待っていればチャンスは訪れます。

提案はタイミングが重要なので、状況を探りながら機会を待ちます。予算のタイミングやプロジェクトのタイミングがあると思いますが、ここで機会を待てるのが、早く動いた意味の一つでもあります。

提案するときは企業によっては営業フローなどを知っているほうが良い提案ができることもあるため、そのためにも体制面で企画職の人を仲間に入れましょう。

最初からゴールとしているような大きい提案を行うと、失敗するリスクも上がってしまうため、最初は小さな提案が良いでしょう。

成功事例を作る

提案が通れば、データエンジニアリング業務以外のデータ領域なのか開発領域なのかを行っています。

提案したことを行うのですが、ここでは小さな事を全力で行うことが重要です。大きな事をやると全力で行うと組織として疲弊するので、小さなことを全力でやりましょう。

そして、この組織に任せれば成功できるという事例を作りましょう。

取り組みの中で、先方に既存の組織とは違う良さを感じてもらって、今後もあえてデータエンジニアリング組織に頼む気になるというくらいまで関係性を構築できたらミッションコンプリートです。

拡大する

成功事例を作ると、先方のキーパーソンから噂が広がり案件が入ってくるようになってきます。

ここまで持ってこれたら成功です。あとはデータエンジニアリング業務とメンバーのモチベーションなどを考えながら新しい領域へ業務を拡大していきます。

ロードマップの最後の工程になりましたが、ポイントは領域を拡大したい側が拡大したいからといって広げられるわけはなく、組む側が既存組織や外部組織と比較して成果を出せると思われているから広げられるという事を理解しましょう。

データエンジニアリング組織は下地が整っているので、うまく進めれば優位性を感じてもらえるので、領域を広げやすいと思ってます。

まとめ

今回はデータエンジニアリング組織として、組織側の生存戦略を書きました。
データ界隈は全然成熟していない業界なので、キャリアとして違和感を感じたらすぐに動いていく業界です。

転職は出ていく側も、出ていかれる側も少なからず疲弊することなので、場が提供できていないことによる転職を少しでも減らせればいいなと思って書きました。

また来年会いましょう。ハッピーメリークリスマス♪♪

おわりに

自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。
モチベーションのために役にたったという人はぜひ、フォロー&スキをお願いします。
ツイッターでもデータマネジメントに係る情報をつぶやいてますので、よろしくお願いします。

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