見出し画像

人工衛星データでコロナの影響を観測できるのか? 〜全球規模で温室効果ガスの増減量を可視化してみた〜

こんにちは!DATAFLUCTの大迫です。

私は2020年5月からインターン生として働いておりますが、普段は筑波大学大学院にて修士研究に励んでいます。

高校時代から漠然と環境問題に興味があり、台風・集中豪雨・豪雪といったあらゆる自然災害の基盤となっている天気を勉強してみたいと思ったのがきっかけで、大学院では気象学・気候学を専攻しています。

実際に研究をしていく過程で、ある一つの大気現象を説明するだけでも、グローバルからメソスケールまで様々な現象が複雑に絡み合っていて、それらをダブりもれなく分解したり、どの要素が一番寄与していそうかを解析したりと、非常に奥深い分野です。

DFにジョインした経緯

2020年1月頃から就活を始めて、Webマーケやデータサイエンス関連のベンチャー企業を中心に見ていました。これからの人生の大半を仕事が占めるのであれば、仕事そのものに面白みや価値・やりがいを感じられる企業が良いなという軸で探していましたが、どうも自分の心に刺さる企業があまりなく、、、

やっぱり自分がこれまで研究で扱ってきた気象や衛星データとか、あとはGPS位置情報を活用したスタートアップでのインターン経験もあったので、こういった地理空間情報を実際にビジネスの現場で利活用している企業があったら面白いのになと。

そんな時「JAXAベンチャー, 衛星データビジネス, 気象, 位置情報」といった自分にとってのパワーワードが目に飛び込んできて、、、気付けば就活そっちのけでDATAFLUCT初のインターン生として働いていましたね(笑)

改めて、DATAFLUCTにジョインしたいと思った理由を簡単に申し上げますと以下の2点です。

・衛星データビジネスが面白そう
・熱意を持って取り組めて、自己成長もできる環境

近年のリモセン業界は小型衛星の登場で、人工衛星から取得されるデータの時空間的な分解能も細かくなり、ビッグデータ化が進んでいます。それに関連して衛星データをオープンに無料で使える環境も増えていますが、実際に衛星データを使うとなると、それぞれの衛星で取得できるデータ/更新頻度/エリアが異なることだったり、ビジネスに繋がる高解像度の衛星データの容量は非常に膨大であったり、データ活用までいくには中々ハードルが高い、というのが現状です。

そんな参入障壁の高い分野でDATAFLUCTは既に複数の衛星データを活用したプロダクトを開発していて、自分も何かしらの形で関わってみたいと思いました。

2点目に関しては、自分が面白い・楽しいと思えるようなことであれば時間も忘れて没頭できるタイプなので、この会社だったら決して受け身にならずに課題意識を持って取り組めるはずだと。またDATAFLUCTは、副業やフリーランスなど圧倒的に生産性の高い方々で構成されていて、そういった優秀な方々から技術面もそうですが、0から一気通貫してプロジェクトを完結させるプロセスや考え方を学べるという点でも、非常に刺激的な環境なのではないかと思いました。

衛星データを活用したコロナ分析

DFにジョインして一番最初に取り掛かったタスクは、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき 」(GOSAT)を活用したコロナ分析です。

新型コロナウイルスの蔓延による経済活動の失速で、局地的に大気環境が改善されているという報告や都市閉鎖中の中国やイタリアでは二酸化窒素(NO2)濃度が大幅に減少したという測定結果もあります。

そこでCO2濃度についても同様に、コロナによる影響がどの程度反映されているのか、GOSATのL3全球CO2カラム平均濃度というプロダクトを用いて検証しました。

まず、GOSAT搭載の温室効果ガス観測センサによる観測原理についてですが、そもそも物体にはそれぞれ強く電磁波を反射・吸収する波長帯があります。大気中に存在する二酸化炭素(以下CO2)も固有の吸収特性をもっており、CO2量によって吸収の強さも変わってきます。つまり、地表面から跳ね返ってきたある特定の波長光が途中でどれくらい吸収されているかがわかれば観測対象の大気物質分量を測定できるというわけです。

まず、高分解能のフーリエ分光器を利用したセンサによって光を波長毎の強度に分解します。これによって得られたスペクトル強度分布から地表-上空までのカラム量を測定し、最終的には地表面の標高や気圧の影響を除去するために、乾燥空気のカラム量中のCO2カラム量の比率としてカラム平均濃度を算出、というのが大まかなデータ処理の流れです。

スクリーンショット 2020-06-11 22.28.13

図1:左図は地表で反射された太陽光の一部が温室効果ガスに吸収されて人工衛星に到達するまで概念図

右図はGOSATで利用する三つの波長帯と観測輝度スペクトル分布

衛星による観測原理をざっくり話したところで、早速2020年3月から2020年4月にかけてのCO2濃度増減量を可視化してみましょう。(図2)

前月に比べて青い陰影が減少しているメッシュ、赤い陰影が増加しているメッシュを表していますが、確かに減少している地域としては中国南部やイタリアとフランスの国境付近、あとは南米も挙げられますね。

スクリーンショット 2020-06-11 22.28.31

図2:2020年4月と3月のCO2濃度の差分。欠測のあったメッシュは黒色でマスクアウトしている

さらに、イタリア・フランスの国境付近、中国全土、武漢周辺の3エリアを対象に、過去同時期の増減幅と比較してみた結果が図3です。下段のグラフから分かるとおり、中国全土以外は過去10年間と比べて、減少幅が大きいということが分かりました。

しかし、今回用いたデータは地表付近の濃度ではなく、あくまで地表面から大気上端までの気柱に存在する量です。つまり地表濃度の影響が数ヶ月遅れで見えてくる可能性が高いため、引き続きモニタリングする必要があるかと思われます。

今回は全球規模の比較的粒度の粗い衛星データを使用しましたが、自動車を判別できるほどの細かいデータも存在します。

衛星により観測された生データをどのように料理すれば、実際のビジネスシーンで応用できそうかはこれから調査していきたいです。

スクリーンショット 2020-06-11 22.29.03

図3:解析対象エリア(上段)/ 3月→4月時期のCO2濃度増減幅に関する経年変化(下段)
各エリアに含まれるグリッドデータを平均してプロットしている。

最後に

自分は実績も経験もない身なので、とにかく今は与えられた役割で仕事を楽しみながら、期待値以上の成果を出せるように心がけています。

そして長期的な目標としては、実際に案件を受注するための提案からサービスのローンチまで、しっかりと自分が携わってプロダクトを0から作り上げる経験ができればなと思います。

DATAFLUCTが気になる方はぜひ、こちらから気軽に応募してくれると嬉しいです。


この記事が参加している募集