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オープンデータ活用研究vol5(京都市オープンデータ編) 京都市おける旅館業の現状、2021年を振り返る。

お疲れ様です。ムロイです。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
冬の厳しさはだいぶ収まってきて、日差しの暖かい日には春の訪れを感じるようになりました。別れの季節、出会いの季節、個人的にはなんだか不思議な感覚になる時期でもあります。4月からまた新たなチャレンジをされるという方は、気持ちのいい日は散歩をするなど体を動かすことで気持ちがリラックスできますので、高ぶる気持ちを一旦落ち着かせ、冷静且つ大胆に勇気ある一歩を踏み出してください。

さて、前回は京都市オープンデータポータルより、飲食店の営業許可一覧から分析データセットを作成して、コロナ禍でも前向きに新規出店や事業継続を判断された事業者の思いを巡らせてきました。今回は前回同様に京都市オープンデータポータルサイトから、旅館業に関するデータセットをダウンロードして、また分析していこうと思います。


旅館業法に基づく許可施設及び施設外玄関帳場一覧

まずはじめに京都市が運営されている"京都市オープンデータポータルサイト"にアクセスしましょう。

京都市オープンデータポータルサイト

観光・産業のカテゴリから、旅館業法に基づく許可施設及び施設外玄関帳場一覧をダウンロードします。

旅館業法に基づく許可施設一覧(令和2年3月以降)

今回はデータセットがたくさん用意されています。
ざっとデータの中身を確認したところ今回のデータセットは更新データだと思われますので、ある時点からある時点までの期間から特徴を見ていくアプローチをしてみようと思います。
提供データセットのうち、最も古い2020年3月のデータ、一年後の2021年3月のデータ、この記事の執筆時点では最新の2021年12月のデータ、をピックアップします。


京都市における旅館業の状況(2020年3月時点)

2020年3月のデータセットを見ていきます。

2020年3月時点における京都市の旅館業許可状況

全体で113件の施設が許可を受けています。
この当時を振り返ってみると、2020年2月25日に政府の「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置され、そのあとすぐにパンデミックが発生、私たちの社会生活・経済活動が一変する直前もしくは真っ只中のタイミングです。申請時点はさらに前でしょうから、まさか近い将来いまのような事態になるとは想像もできなかったことと思います。

2020年3月時点における京都市の旅館業許可状況(旅館業種別)

このデータセットはコロナ前の状況を示唆しているということになりますが、簡易宿所が104件、旅館・ホテルが7件、施設外玄関帳場が1件となっています。
業界素人の私には名称が少し聞き慣れないので調べてみたのですが、簡易宿所とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業場所ということで、さらに詳細が気になる方はこちらの確認をお願いします。
参考:旅館業法概要(厚生労働省ホームページより)

京都市で簡易民泊が多い理由は何なのでしょうか。
いわゆるAirbnbの民泊サービスのような宿泊場所もこれらに該当するようです。京都を訪れる観光客、特に海外からの観光客向けに便利で安価な宿泊サービスが活況だったということかと推測します。
このあと訪れる人類未曽有の危機を経て、京都の宿泊業界がその後どうなったのか見ていきましょう。


京都市における旅館業の状況(2021年3月時点)

前回より1年の時を経てどうなったのか見ていきます。

2021年3月時点における京都市の旅館業許可状況

全体で102件の施設が許可を受けています。
コロナ急拡大から約1年、この当時を振り返ってみると、アルファ株が流行し年末年始にかけて旅行や帰省が制限されていたと記憶しています。申請時点では全く先行きの見えない経営環境であったと思われます。

2021年3月時点における京都市の旅館業許可状況(旅館業種別)

そのような状況下で、簡易宿所が93件、旅館・ホテルが7件、施設外玄関帳場が2件という許可状況となっています。
コロナで観光客が激減する中で簡易宿所は1年で11件減ってしまっています。事業継続を断念された事業者の気持ちを考えるとなんともつらい思いでいっぱいです。
ポジティブな要素として、施設外玄関帳場が1件増えています。
あまり耳慣れない施設外玄関帳場とは何なのでしょうか。これも調べてみましたがこれも業界人ではない私にはなかなか理解が難しく、簡単に言うと施設外玄関帳場とは、宿泊施設とフロントを分離した状態で営業する宿泊施設のようです。
私のフィールドでIT業界の言葉で言い換えると、共通クラスを再利用可能なオブジェクト指向、もしくはAPIと同様の考え方かなと思います。実際に宿泊可能な部屋として提供可能なキャパシティをスケールしても、お客様の受付業務や清算業務を行うフロントをそれと切り分けることで事業者メリットがあるということかと思います。
経営戦略分析におけるバリューチェーン分析にもプロセス中の特定部分だけ共通化してビジネスを行うなどの戦略もあります。施設外玄関帳場の検討は事業拡大手法の一つなのかもしれないなぁとも思います。この記事を見ている旅館業界のビジネスに詳しい人がいれば、本件メリットや導入背景など是非いろいろ教えてください。


京都市における旅館業の状況(2021年12月時点)

さらにもう1年経過した2021年12月当時を振り返ります。

2021年12月時点における京都市の旅館業許可状況

全体で98件の施設が許可を受けています。
この申請当時はデルタ株が流行して日本の医療提供体制がひっ迫し、社会生活上の行動制限も厳格適用されていたと記憶しています。事業者にとってしてみれば、ますます先行き不透明感が色濃い経営環境であったと思われます。

2021年12月時点における京都市の旅館業許可状況(旅館業種別)

簡易宿泊所が88件、旅館・ホテルが8件、施設外玄関帳場が2件という許可状況になっています。簡易宿泊所はさらに5件減少しており、京都における旅館業経営で事業継続を諦めた方がおられたということです。
これも胸が痛くなる話ではありますが、簡易宿泊所ではない形態の新たな事業を始める、複数経営している事業者であれば既存施設を整理統合して事業効率化を高めるという話もあるので我慢の時を迎えたということかもしれません。


今回は以上です。

心が沈むような話が続きましたが、事実を捉えて前に進むためにも現状分析が必要でデータ分析が必要だと思ってください。一方で新規参入組にはビジネスチャンスも広がったと捉えることもできるかもしれません。例えば簡易宿泊所は約2年で16件減少しているので、もともと京都の観光産業のポテンシャルは高く、時期の見極めは難しいですが、京都における簡易宿泊所の運営で新たな事業機会を模索する事業者も出てくるのではないでしょうか。
もちろん一度状況の見極めで事業継続を諦めた方にとっても事業再チャレンジの機会でもあります。これは前回お伝えした飲食産業も含め共通する話でもあります。

次回のテーマですがどこに行こうかいろいろ悩んでいます。。個人的興味も含め調べてみたいこともあるので少しお待ちください。リクエストもありましたら是非お願いします。

ではまた次の機会に!


(おまけ)地方事業者向け気になるニュース紹介

今回も私が個人的に気になるニュースをピックアップしています。
地方事業者の目線で役に立つ情報を中心にご紹介です。

抽出期間:2022/3/13~2022/3/26
ニュース転載元:EnterpriseZine(エンタープライズジン)

日本の「デジタル化」7割は2025年まで停滞か ガートナーが展望を発表

もう何度目にしたか分からないほど見慣れたデジタル化の遅れを指摘する記事になります。ほとんどの大企業でもデジタル化は進んでいないのが現状です。ただこの記事を見た地方の事業者がいて、大企業が出来ないのに自分たちでできるわけない、とかお考えでしたら、それは少し違うと思います。
デジタル化が進まない理由は大企業だから、という事もまた事実です。
デジタル化を進めないと、この不確実性の高い事業環境で成果を上げていくのは難しく、いわゆるITの恩恵も受けられない、強い経営をするにはデジタル化にチャレンジしないといけない、とお考えいただけると嬉しいです。

企業の7割以上がテレワークと電子契約を導入 JIPDECとITRが調査結果を発表

みなさまの仕事環境はいかがでしょうか。IT業界という職業柄ですが私はもうほぼ100%テレワークになりました。たまの出社で人に会うと嬉しくなります。さてデジタル化のヒントとして、この記事にあるようなテレワークや電子契約のような営業活動を中心とした行動改革から始める手は一つあります。トップの意思決定が必要ですが、ハイスペックPCも10万/台で買える時代ですし、無料のコミュニケーションツールもありますし、自宅にネット環境がない方もいないでしょうから少ない投資でデジタル化にいけると思っています。国や自治体の補助金活用も手です。またケースによってですが電子契約は節税効果もありますので、頻繁に契約を行っている事業者はぜひ一度ご検討ください。

三井化学、専門人材165名の社内育成を目指す NECとアビームコンサルティングが支援

この記事に象徴されるのは大企業もデジタル人材の確保に苦労しているという点です。地方の事業者にとってもデジタル活用でビジネスを伸ばすところまで施策実行を任せられる人材の確保は課題になります。ITスキルは一旦外に置いておくと、データを集められる、データを分析できる、この2つのスキルであれば育てることが可能だと思っています。特にいわゆるデジタルネイティブなZ世代と呼ばれる若年層は、この領域のポテンシャル層だと思っています。育成プロセスやデジタル化ロードマップなど興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。可能な限り支援させていただきます。

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