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夕焼けりんご⑤

その日の天気は快晴だった。「夕焼けりんご」は今日も何も変化はない。

朝から出かける準備に取り掛かった。待ち合わせ場所の名古屋駅では人もそれなりに多いだろうし、相手が自分を見つけやすいようにとぼくが持っている中で一番目立ちそうなノースフェイスの黄色マウンテンパーカーを着ていく事にした。「夕焼けりんご」は大事に新聞紙に包んで買ったときの紙袋に入れてリュックの中に入れた。

出かける準備もすっかりと終わった、時計を見るとまだ午前11時40分だ、とりあえず昼飯を食べることにした。

昼飯がおわり、テレビをみたり本を読んだりとしたが、家にいてもそわそわしてなんだか落ち着かない、午後7時に名古屋駅なら午後5時くらいに出れば十分だが、手土産を買って行かなくてはという理由を付けて午後2時に家をでた。

駅に着き、お土産屋さんに入った。手土産を買うのには30分もかからなかった。DMの相手と一応実家にも買った。

ここで時間もあるので先に実家に顔を出そうと思い立ち母親に電話するが、父も母も今日は夜まで帰らないそうだ。帰ってくならもっと事前に連絡しなさいと言われた。全くその通りなのだが、行くのを決めたのが昨日の夜中なので仕方がない。

先に実家へ行くというプランが崩れてしまってどうしようかと思ったが、とりあえず名古屋へ向かうという選択をして新幹線に乗った。

午後4時半ごろ名古屋駅前に到着した。約束の時間まではまだ時間がある。時間を持て余したぼくはある場所へ向かう事にした。

そこは、高校生の時に野球部だったぼくが毎日練習に明け暮れたグラウンドだ。名古屋駅からはバスと徒歩で20分くらいのところにある。高校を卒業して大阪に出たのもあり卒業以来そこには行っていない。つまり18年ぶりにそこに訪れることになる。そこにまだグラウンドがあるのかさえ知らないがとりあえず向かった。

そこには当時のままのグラウンドがあった、野球の練習をする高校野球部員らしき姿もあった。当時を思い出ししばらく眺めていた。

空は綺麗な夕焼けだった。

                  つづく

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