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ちぇりまほの「好きになってごめん」の破壊力にやられた

「好きになってごめん。」
PC画面を前に衝撃を受けた。このセリフって、こんなに切ないものだっけか。
ドラマで一度は聞いたことがあって、もしかしたら、恋した人間なら一度は脳裏をよぎる言葉で、失礼だけど「お決まりの」台詞だと、思っていたのに。
でも、今日初めて、こんなに悲しいセリフだったのかと胸が締め付けられられた。すごいよちぇりまほ。
これは、私が「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)」のドラマを見た感想である。

結論から言うと、凄い良かった。なんか最高におしゃれでシンプルイズザベストな令和BLドラマですね。おっさんズラブは平成ドラマの概念をぶち壊してくれた革命的BLラブコメですが、ちぇりまほは令和シンプルシャレオツBLドラマです、すっごいよちぇりまほ。
まあ、雑多に言ってしまえば人間力強い人間が地味普通人間を可愛がり倒すテンプレ格差ラブコメではある。だがしかしだ!だがしかし、そこに一方だけが心を読めるファンタジースパイス、原作にないイベントを出してきたのに違和感も嫌悪感もない味の整いよう、ストレスフリーを徹底した上での甘さ全面保障。なんだろう、バランス取れた体にいい栄養素でキュン死させて来るのやめてもらっていいですか。
あと、このドラマ、「ロマンティック」へのたゆまぬ努力がすごい。キスシーンの画質と寸止めとスローモーション、台詞、ビジュアル、ロケーション、完璧ですよ。いつもなら、自分はキスシーン書くのも見るのも苦手なんですけど、(見てらんなくて何食わぬ顔で飲み物を取りに逃げるか心を無にする)ちぇりまほの!キスシーンは!ちゃんと見てられたんです!キュン!かわいい~!むり~!と叫んだよね、かわいいが鳴き声のどうぶつになっていた。
これは婦女子(漢字変換ミスではない)だからこそ湧き上がる感情なのか、ついに発酵を終えて完全に腐ったからなのか、というか男性は男性同士のちゅーを見たらどう思うんですかねえねえ…とめっちゃわからない坊やしてしまうので黙ろうねそうしよう。最後にこれだけ言わせてもらうと、私は女性同士のちゅーが一番安心して見てられます。男女・男性同士のキスは見てて照れてくるんですけど、美女同士のちゅーは美麗横顔やば…とガン見します、リップなに使ってるんだろうとか毛穴なくて羨ましいとかいろいろ考えます、みんなAKBの「ヘビーローテーション」大島優子パイセンのちゅーを忘れるんじゃねえ。

そんなのはどうでもね、いいんですけどね、ラブシーンをどうやって嫌味なくロマンティックに描くかってめちゃくちゃ難しいんだよ、ちぇりまほがどんだけ凄い事をやってるかわかりますか?
ラブコメなんて簡単に略すけどな、ラブでコメディな面白い話書くのに人がどれだけ苦労してるか、ラブコメにしてしまいたい欲求と照れにたえつつロマンティックなふたりをどうやって作るか、めちゃめちゃあーでもないこーでもないして展開とキャラクターをこねくり回してるうちに「こいつはこんなこと言わねえ」と解釈違いをおこしていくんだよ収集なんてつかないよコンニャロウ…私は常にそこで物語を描くのをやめてしまうので、なんだろうね苦手分野をできる人間をひたすら尊敬する気持ち(個人の感想です)

キスの話ばっかりする人間、気色悪いだろうなと思うので、真面目な話をすると、ちぇりまほって、「人とわかり合おうとする物語」なんですよね。コミュニケーション苦手で人に理解されることを諦めていた主人公が、エスパー能力という魔法をきっかけにして、自分を知りたいと言ってくれる人に出会い、自分も相手を理解しよう・相手に自分を理解させる努力をしよう、と踏み出す成長物語なんですよね。

これって、いつの時代も刺さるテーマじゃないですか。そして恋愛ものでの一番大事な話だと思うんですよね。きちんと話す、話を聞く。これができる恋愛物語を、私は尊敬している。

大人になると、他人は自分に興味なんてない、という真理を悟るじゃないですか。だから、人はいろんな選択をするんだよね。
目立たないようにする人、興味を引くために頑張る人、他人に興味を持とうとする人、好き勝手やる人。どれが良い悪いはない、そのはずなんだよ本当は。

でも、現実では「他者の関心」へどう対処すべきなのか、グラデーション的に良しあしが存在するんですね、私だけですかそうですか、少なくとも私は、自分に興味を持ってほしいと相手に要求するのは無礼と思っていますし、相手に関心を持っているという意思表示をする事は必要最低限の礼儀であるが、嫌いな相手に希望を持たせるのはNGで、好きな相手には迷惑をかけない程度に好意を伝えるのはギリOKみたいな、好意と嫌悪の正誤表みたいなのが社会には存在すると感じてます。きっとこれを人は価値観と呼ぶのだろうな、個人の感想です。

あらゆる暗黙ルールとその場の空気と、「努力で何とかなる」という理想が交差する自由の利益と弊害にもまれる日々の中では結構忘れがちなんですけど、「好きな人間に、自分の思っている事を伝えて、そして相手の事も分かろうとする」ってめちゃくちゃ大事で難しい。親愛・恋愛の基本のきなんですけど、それができない、上手くいかないから人は悩むわけだ。ああ難しいな人生。

ちぇりまほは、コミュ力激よわの主人公が「相手の気持ちが分かる」というお助けスキルを使いながら、人と関わる事を頑張る話なんですよね。人を好きになる覚悟と人に好かれる覚悟、どっちもやってる。そしてこれはパートナーの黒沢だけじゃなくて、会社の周囲の人に対してもそう。そして、そうやって頑張ってるのは自分だけじゃないってことも知っていくわけなんですね。あの完璧イケメンの黒沢でさえ、「好きになってごめん」と思っている。容姿能力性格何もかも持っている黒沢が、好意を向けてしまったそのこと自体を申し訳ないと気に病んで、自分の感情を伝えられずにいるわけです。
人に好意を向けちゃダメなんて事はないのに!好きになるのだけは自由なはずなのに!自分が好きである事が相手に迷惑をかけていると思って感情を秘匿している!せ、せつねえ~!まあ、チート的にその感情を読み取った主人公の安達くんは、そのアドバンテージを存分に生かして自分の気持ちに向き合い覚悟を決めるわけですけど、とにかく完璧人間が発する「好きになってごめん」の破壊力がヤバイ。
ここに、今の時代の悩みが詰まっている。そう悶えながらアマプラで一気に最後まで見ました。

映画、見に行っちゃおっかな。お母さん、見てますか。娘は立派に、BL作品読むように、見るように、課金するようになりました。

ちぇりまほ、好きになって、ごめん。


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