【小説】『この学校、大丈夫なのか?』vol.2
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僕が下駄箱から靴を出して、足をトントン、として靴を履いていると、
「お、大和くーん、今帰り? 一緒に帰ろうー!」
という、声が後ろから聞こえてきた。振り返ると、通路を挟んで斜め前の席の光一だった。目が線のように細くて、顔が丸くて、いつもおだやかなえがおで親しみやすい子だ。転校して最初に仲良くなったと言っても過言じゃない。ぼくは、うん、とうなずいて、光一と並んで校庭に出る。
校庭では、サッカー部が練習をしているから、てつぼうとか、すべりだいなどの遊具が集まっているはじっこの方の道を通ってぼくらは帰り道を歩く。
「ねぇ、この学校ってなんで宿題とかテストないのー?」
ぼくは何の気なしに、光一にそう聞いてみた。光一は、不思議そうに細い目を見開いて、
「あー、いつも思うけど、大和くんって、まじめだねぇ。さては前の学校では相当な優等生だったかな?」
「う、うーん……」
「ふふ、否定しないんだねぇ」
光一はクスクスと笑う。まぁ、前の学校ではテストでほとんど100点だった……
「この学校で宿題やテストが無くなったのは、4年前、児童会選挙で、『この学校から、いじめ、宿題、テストをなくします!』ってマニフェストをかかげた人が当選して、実現してくれたからなんだよ」
光一のその言葉に、ぼくは、え! とおどろいた。
児童会、前の学校にもあったけれど、集会などでときどき代表であいさつをするくらいだった。ここの学校の児童会がそんなに活発だとは思わなかった。まさかマニフェスト(自分が選挙で当選したら、これをやります! という約束)をかかげて選挙をやって、実際に実現して、それが今まで続いているとは……
「す、すごいね」
「あはは、たしかにー、なんかもう当たり前になっちゃって、そんなにすごいと思ったことなかったけど。あ、そのときの書記の人が、作家になりたい人だったみたいで、そのときのことを記録した冊子が図書室にあるんだ。明日良かったら、見に行ってみる?」
光一はそう言ってカラッと笑った。ぼくは、うん、とうなずく。
「おっけー、じゃあ、明日一緒に昼休み、行こう。それじゃあ、また」
そう言うと光一は、じゃあ、と手を振って、マンションの入り口に消えて行った。
(つづく)
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