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破落戸

路肩の石ころほどにも値打ちのない
鼻つまみ者の足が、興奮し、
靴底に発汗の溜池をつくりつつ
獲物を漁ってerection
direction?——金貯め込んだクソババアの家
election?——ガチャ回すほうがまだおもしろいわ
押し入って、ぐるぐる巻きにして、縛って、
殴って、脅して、在処を吐かせて、ふんだくって逃げる
多少の傷は仕方ない、殺しちゃってもやむをえない
生きることがおれたちを急かす
そうさ、おれたち成らず者
一戸もつくれない落ちこぼれ
すべてがままならないなら、すべてままならせるまで
「路肩の石ころ、金のポルシェ、高慢ちきな他人」
これはおれ流の六根清浄
浮世をしのぐどっこいしょ

人生は不如意、心にはいつも尿意
おれには汚れたケツを拭く紙もない
それでも昔はfeedは十分、 façadeは立派だった
ゲットー暮らしも、ヤクザも、半グレも、ギャングも知らない
赤貧、ヘロイン、不衛生、銃、虐殺、ぜんぶが無縁
きっとおれは世界の中では恵まれているほう
だがそれは密度のない空洞
父母は空気、おれの意気も消沈
父は言う——負け組にはなるな
母は言う——迷惑だけはかけないで
液体窒素みたく絶望が冷えて泡ふく
風船みたいな豚、牙を抜かれたまぬけなイノシシ
学校では鼻つまみ者
だがほんとにくせえのはどっちだ
デジタル白粉まぶしたinfluencer
憂さ晴らしのWalt Empire
Tik Tok、Instagram、Short、
まるで壮大なオナニー、映像のスペルマ
老若男女、ところ構わずシミュラクルの顔射
そんな趣味はおれにはねえ
学校をさぼりあてどもなくつづら歩き
おれの人生はつまらねえ休日の午後の散歩
目的地もなく、唾液みたいにダラダラダラダラ
酒、マリファナ、LSD、どれもスペースキーの連打
chillしてる間にburn out
ケツの火は札束にこすって消すしかねえ
だからやるのさ、押し入りを
ゴロツキ冥利に尽きる悪行
「路肩の石ころ、金のポルシェ、高慢ちきな他人」
これはおれ流の六根清浄
浮世をしのぐどっこいしょ

テレグラム——おれの好きなロシア製
指示が飛ぶ、ときにはおれも指示をだす
誰かが誰かの意図で動き、誰かが誰かを監視している
身元や挙措はやつらにぜんぶお見通し
どこに逃げても袋小路
断片化された情報に細切れにされた人間
素性の知らない脅された者同士、縋り合って藁人形
AIがいるならまともなことしたっておれたちは無用
尊厳もなく、未来もない駆り立てられた窮鼠の横暴
金、金、金!
ふるえる手つき、冷え上がる汗、充血した目に乱舞する高揚感
吐き捨てられた受精卵でも、ここまで紡がれた命
そのrobustnessが、軽石みたいな良心を蹴り殺す
石潰しの年金、高度医療で永らえるやつらが、
その罪過を咎められずのうのうと暮らしているお歴々が相手なら
おれたちも下劣な方法で糊口をしのぎ薄明を繋ぐまで
「路肩の石ころ、金のポルシェ、高慢ちきな他人」
くわばらに代え、そう唱えながら、おれたちは事を済ませ
バンに乗り込んで走り去る
希望は逃げ水、だからどこまでも追いかけてやる
死に物狂いの、キチガイじみたスピードで
期待は負債、だからもう背負うのはやめた
幻想を捨ててあるところから力づくで奪い取る
盗んだダイヤで走り出す
ロレックスは自分のものにはならない
行く先は目八分豚箱
暗い人生の暗夜行路
それでもこれがおれの副業
「路肩の石ころ、金のポルシェ、高慢ちきな他人」
これはおれ流の六根清浄
浮世をしのぐどっこいしょ

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