見出し画像

虹(幻)


君主の死!

循環器に鉛がしみこむ


彼方の国の大獅子が斃れたと聞き
影の慟哭が身に降り頻る
おれは建て上げられたものを心底尊敬していた
天よ、愍み給え!

この魂は可憐で、屈強で、抜け目なかった
渦中にあって、くじけず契約の履行をなしつづけた
バッキンガムとテムズ川に掛かる二重の虹が
彼女の威光を天へと運ぶ

しかし虹の彼方から
すれ違いにおりてくるものを見た
それは無頭の獅子
鎖を解かれた一角獣
それから転げ落ちる
一輪の菖蒲

それは病んでいて、
なかば萎み、なかば食われていた
菖蒲から黒ずんだ鉄の水が流れる
それはゆっくり牝牛の頭に変わる
虹に裁断された
血塗れのアレフ
頭でありかつ無頭の徴

首なしの獣たちがめざめる
おれはその唸り声を聞いた
主よ、苟もなお主なら、
憐れみ給え
この毒々しく、光栄にみちた
錯綜の断頭台の下にあるものすべてを
主よ、苟もなお主なら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?