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「タレンタイム」ヤスミン・アフマド監督

2009年マレーシア映画。
製作されたのは8年前でようやく今年劇場公開になり、<単館系映画館でロングラン>となれば観るしかない…ということで劇場に駆けつけた。

純愛ものという前触れにやや興味が半減していたものの、群像劇ならではの人間模様の描写、今まで知らなかったマレーシア文化の様子に魅了された2時間だった。恋愛部分はどうも最後まで乗れなかったが。

監督・脚本 ヤスミン・アフマド
出演 パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィップ、ハワード・ホン・カーホウ
撮影 キョン・ロウ   音楽 ピート・テオ

あらすじ
ある高校で“タレンタイム” (マレーシア英語=学生の芸能コンテストのこと)が開催される。ピアノの上手な女子学生ムルーは、耳の聞こえないマヘシュと恋に落ちる。二胡を演奏する優等生カーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転校生ハフィズにわだかまりを感じている。マヘシュを襲う悲劇、闘病を続けるハフィズの母…。マレー系、インド系、中国系…民族や宗教の違いによる葛藤も抱えながら、彼らはいよいよコンクール当日を迎える……。�−オフィシャルページ参照

物語について
群像劇はあらすじにするとどうも魅力に欠けてしまう。
上記のあらすじも「まあそういうこと」なのだが、この映画は物語そのものより、登場人物たちの想いの交差具合、日々の選択に共感でき、そして何よりも彼らの美しいハートに心を動かされる。

観ている間、自分にとって愛おしい者をとにかく大切にしようという想いがふつふつと湧き上がるようだった。

脚本も秀逸だった。全体に流れるまったりした空気感は一見、淡々とした物語に感じさせるものの、構成に抜かりがない。一見どうでも良さそうな会話が後々に効いてくる。ほぼ無駄がなかったのではないか。

群像劇について
…群像劇といえば自分にとって「ショートカッツ」や「ナッシュビル」のアルトマン監督だ。毒や皮肉が散りばめられた、グダグダで残酷じみたエンディング。

「群像劇ってこうじゃなくっちゃね!」と鼻息を荒くし、三谷幸喜作品の底抜けの明るさを敵視してしまう自分がいるのだが、この映画もアルトマン的な毒は皆無。三谷幸喜を凌駕する明るさを放っている。

上記のあらすじに習っていえば「純愛もの」「親子もの」「友情もの」というにもおこがましいほど聖愛に近い愛が散りばめられている。毒好みの自分には物足りなさを感じる部分もあるが、奥底に眠るポジティブ好きな一面を掘り起こし、心を震わせてくれる作品だった。

−今"心震わせるポジディブ系映画”に「となりのトトロ」がパッと浮かんでしまったが、まあある意味「となりのトトロ」に近い読後感があると言っても良い。世界を少し信じたくなる映画なのだ。

監督について
監督のことはこのブログを書く際に調べて知ったのだが、この作品を発表して間も無く亡くなってしまった…とのこと。そして女性であることに、何となく納得してしまった所がある。こんなにも世界を優しく見つめられるのは女性だけだろうし、男性にあんな純愛は描けないだろうと思うのだ。…と差別的な発言をしてしまいたくなるほど、ポジティブなんだよこの映画は。本当に。

他にもまだ5作あるようなので、もし機会があれば他の作品も見て心を洗いたい。

ちなみに鑑賞後の道すがら、すっかりポジティブ熱にやられた夫と息子に盛大なハグをしようと決心していたのだが、帰宅後1分ほどで夫と喧嘩した。

今回学んだこと
映画とはこういうものなのだ。

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