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制約からアイデアを導く | デザインリサーチ「How Might We」

こんにちは。はじめてnoteに投稿します。
普段はモバイルアプリエンジニア/エンジニアリングマネージャーとして働いているdarquro(だーくろ)と申します。

これを読んでいる皆さんの中でもプロダクトマネジメント(サービス開発)をしていると、ある課題に対して、どのようなアプローチを取り、いくつかあるソリューションの中からどれを選択していくか、といったことをチームで話し合い、決定してくという機会が多いのではないのでしょうか?

意思決定を行う上で、何を基準とするかはとても重要で、その中の一つにデザインリサーチがあります。

一言でデザインリサーチというと、概念や領域が広がってしまうため、今回はアプリケーションサービス開発におけるデザインリサーチという意味で以降はUXリサーチとさせていただきます。

私自身は普段はエンジニアリングが専門で、UXリサーチは専門ではありませんが、チームでプロジェクトを進めるにあたっては、課題を分析したり、アイデアを考えるプロセスは職種関係なく必要なスキルであると感じてきました。
そこで今回はUXリサーチの知識をつけるため、『デザインリサーチの教科書』という本を読みました。

この『デザインリサーチの教科書』は、「なぜデザインリサーチなのか」から始まり、そもそもの「デザインリサーチとは何なのか」や、歴史的経緯、手順と運用、さらに組織マネジメント、プロダクトマネジメントまでかなり幅広く書かれています。
なので、文章量としてかなり多いのですが、読み手が必要なところを途中の章から読める構成なっているため、無理せず読める本でした。
その中で「How Might We」という手法が紹介されていましたので、本記事で紹介したいと思います。

💡How Might Weとは

「How Might We」とはリサーチプロセスの中で、分析の手法にあたり、本書ではインサイトを抽出したあとの、機械発見フェーズで登場します。
思いつくアイデアに制約を与えることで、課題を整理し、どういうアプローチを選択するかチームで意思決定するためのものです。

なぜこれが気になったのかというと、一つ一つは、実は普段から行っていることであるんですが、それをこれまでの経験などから何となく思いつくのではなく、アプローチを整理し、アイデアを手助けしてくれるツールとして丁度いいなと感じたからです。

💭基本構成

How Might Weの基本構成は、「対象となるユーザー」「ゴール」「制約」となっており、以下のような文章になります。

「どのようにすれば私たちは【対象となるユーザー】のために【制約】を考慮しながら【ゴール】を提供できるだろうか」

この「対象となるユーザー」「ゴール」「制約」の変えていくことで、ソリューションが変わってくるというわけです。

この本で紹介された例は、空港の課題で、

子どもを連れた母親は空港のゲートでまっているあいだ、子どもたちを退屈させないように楽しませる必要がある。なぜなら子どもたちは大声を出したり、走り回ったりして、他の乗客をイライラさせることがあるためだ。

という問題定義を扱っていますが、今回はより身近なサービス開発を例に考えてみたいと思います。

想定する問題定義としては、

自社で運営するECサイトで、ユーザーは商品をカートに入れるが、実際購入完了まで進まず、ドロップするユーザーが一定数いる

という例で考えてみました。

1. 良い面を伸ばす📈

「我々はどうすれば、ユーザーの購入意欲を高められるだろうか。」

ドロップするユーザーは、購入ステップの途中で購入意欲がなくなってしまったと捉え、商品をカートまで入れた意欲を伸ばす、維持するということをゴールにしてみる。

2. 悪い面を除去する👎

「我々はどうすれば、購入完了までのステップをわかりやすくできるだろうか。」

ドロップするユーザーは、購入完了までのステップで、何か迷ったり、分からなかったりしていると捉え、例えばそこの文章だったり、デザインだったりをわかりやすいものに変えられないかというゴールを考えてみる。

3. 反対を探す🌗

「我々はどうすれば、サービスの利用開始から、購入完了までユースケースの中で、新しい購入体験を提供できるだろうか。」

一般的に購入完了までは、「サービスの利用を開始する」 → 「商品を探し、カートに入れる」 → 「購入方法を選択する(クレジットカードならクレジットカードの情報を入力する)」 → 「配送先を入力する」 といったステップがあるが、例えばそれらのステップを入れ替えるなどで、新しい購入体験を提供できないかと考えてみる。

4. そもそもの質問🔰

「我々はどうすれば、購入フローをよりシンプルにできるだろうか。」

購入フローにおいて、いくつかのステップがあり、その途中でドロップするならば、そのステップを減らせないかというアプローチを考えてみる。

5. 形容詞で考える🎁

「我々はどうすれば、楽しくワクワクするような購入ステップにすることができるだろうか。」

購入ステップが面倒で苦痛なのであれば、それを「楽しい」「ワクワク」と感じてもらえる方法を考えてみる。

6. 他のリソースを活用する💰

「我々はどうすれば、購入フローの一部を、別の手段を置き換えることできるだろうか。」

例えば昨今は決済サービスはいくつかあったり、購入方法も今やクレジットカードや現金振込だけではなく、様々なプラットフォームが提供しているので、代替えできることがないか考えてみる。

7. ニーズやコンテキストから連想する🏪

「我々はどうすれば、実際の店舗で買い物しているような体験をあたえることができるだろうか。」

これは、実際の店舗での買い物でも、カートに入れた商品を棚に戻すこともあると思うが、実際に手にとって物を見ているので、ECに比べて一度カートに入れたら棚に戻すことは少ないと過程し、そういうコンテキストからアプローチを連想してみる。

8. 原因の立場になって考える👼

「我々はどうすれば、カートに入れた後、放置せず購入に進んでもらえるだろうか。」

ユーザーの立場になって、カートに入れるときのユーザーの心理だったり、自分なら途中で気が変わってしまうときはどういう場合か、などからを考えてみる。

9. 現状を変更する🌟

「我々はどうすれば、このサイトで買いたいと思えるサイトにすることができるだろうか。」

根本原因に立ち返る。もしかしたらユーザーはカートに入れたものの、別のECサイトで同じような商品を検索して、そちらで購入しているのかもしれない。自分のサービスで購入してもらうことのメリットをどうやってユーザーに感じてもらえるか考えてみる。

10. 問題を分轄する✂️

「我々はどうすれば、ユーザーが困ってるポイントを見つけることができるだろうか。」
「我々はどうすれば、ユーザーに安心感を与えることできるだろうか。」
「我々はどうすれば、ユーザーが求めている商品へたどり着かせることができるだろうか。」

購入までいかない要因として、「ある特定のステップわかりにくい」や、「購入に不安に思うことがある」、「他のサイトや商品と比較したい」などと複数あるかもしれない。
一度に解決できない場合、できる範囲で一番効果的なものは何かを考えてみる。

✅おわりに

ということで、今回はプロダクトマネジメントにおけるUXリサーチの「How Might We」の紹介と、ECサイトの購入フローを例にさせていただきました。

本書においても、一見回りくどく考えているようだが、この10個のパターンを並べてみると、考えるアプローチと導き出すソリューションの質が違うと書いてありました。
また、チームで意思統一しておくことで、より密度の濃いアイデア出しが可能になるということです。
みなさんの参考になれば幸いです。


※ このカバーはFreepik.comのリソースを使用してデザインされています。

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