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かなしみの脈打つのをきいて

 年齢で区別されることが多くなった。自分の年齢より下の人たちが増えて、年上扱いされることが多くなった。私は年齢に拘泥せずに働きたいし、若い人の方がたくさん知っていることもあるだろうから、隔たりなく色々な人と話したい。
 でも、若手会という飲み会に誘われなくて、ちょっとぼうぜんとしてしまった。若手かと言われるとそうではないし、行っても場違いだからそこはあんまりいいし、若い人に気を遣われるのも、気を遣うのも、あんまり意味ない時間だし、どうでもいいはずなのに、ぼうぜんとした。
 なんでやけにぼうぜんとしたか。結論からいうと、なんかこう、私はいまたぶん、心細いんだろうと思う。日常が根底から覆ってしまうような出来事があったのだけれど、誰にでも相談できるようなことではなくて、なんだか胸の奥に拳一個分ぐらいの石を抱えているみたいで苦しい。苦しいことや辛いことを吐き出しながら生きてきたから、抱えてなきゃいけないのは初めてで困っている。一人になったら、そのことと向き合わなくちゃいけない。一人になったら、ずんとした静かな重みが脈打つのを聞かなきゃいけない。ひとりじゃなければ、時間の檻から逃げ出せるような気がするので。だからできるだけひとりにしないでほしい。
 たぶんうっすらそういう不安な気持ちを抱えていたときに、飲み会一つ呼ばれないと聞いただけでぼうぜんとしてしまったんだと思う。年齢がどうのこうのも、まあ多少あったかもしれないけれど、切り離されたような気がして、辛かったのだ。見放されたような気がして、行き場のない気持ちになったのだ。
 でも飲み会がどうとかじゃなくて、もっとちゃんと向き合わなきゃいけない。ひとりでも。私は私にできることを探すために、もっとちゃんと、胸の奥のかなしみが脈打つのに耳を澄まさなきゃいけない。
 そうじゃないと、私自身がとても無意味だ。

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