障害特性はやっぱり理解され難いし、本人もその特殊さを理解しづらいよね。

今回は、自己分析というより、障害特性の理解をテーマにした話をする。
私は、障害特性が周囲の人と比べてどう違うのか、という相対的な観点でも理解しておくことが大事だと思っている。
というか、周囲の人とは違うという特殊さを実感できていることが大事だと思う。

最近、知人から相談を受けて、辛かったエピソードを伺う機会があった。

知人は、どの職場でも辛い目にあってきたらしい。
パワハラまがいなことは当然のように起きてしまう。
何故か、いつも同僚や上司との関係作りに失敗してしまい、邪険にされてしまうのだとか。

ポイントは、”何故か”、と言っている点だ。
本人には理由が分からない。
おそらく、感覚的には、周囲の人が豹変したように見えているんだろう。
実際、彼は人に嫌がらせをしたり、悪意を持って何かをするようなタイプじゃないし、どちらかというと大人しくて聞き上手な方だ。
だからこそ、余計に本人も分からないのかもしれない。

ただ、彼の障害特性の話を聞いて、もしや?と思うことがあった。

彼は、聴覚情報で入ってきた情報を覚えることが苦手らしく、話を聞いていてもすぐに忘れてしまう、という特徴があるらしい。
もちろん、本人は悪気があるわけではないし、むしろメモをとるようにするなどして対策を頑張ったこともある。
でも、後から読み返しても理解できないメモになってしまうのだとか。
読み返せるようなメモをとろうにも、話を聞きながらそこまでの事はできないらしい。

ただ、彼はそういう特徴があると言いながらも、一般的にそれが珍しい事であるということが理解できていないように感じた。
これがとても怖い事であると思う。
あえて大袈裟に書くが、特殊だという認識があるかないかという、その前提の違いで生まれる悲劇は、単に仕事で支障があるとかそう言う次元を超えてしまい、人間関係の問題にまで発展しうることだと思うからだ。

普通、(仕事上の会話であるならなおさらだと思うが、)話し手がしっかり説明すれば、理解して覚えてくれるもの、と思うだろう。
たまに忘れることがあっても、メモを取るなど本人の努力次第でカバーできる程度の問題だ、と解釈しているのが一般的な認識なのではなかろうか。
しかし、良くも悪くも、彼は理解力はあるし、論理的に物事を考えられるので、会話自体はスムーズに進んでしまう。
だから、話し手はよもや忘れてしまっているとは思わないだろう。それどころか、分かってくれた=覚えてくれた、と思うに違いない。

実際には、どんなにしっかり説明されても、知人は覚えられない。
それを知らない人が見たら、なぜ覚え”よう”としないんだろう、やる気がないのか、などと悪いように捉えかねない。

両者の間で起きているのはすれ違い。
知人は覚えられないのが日常ではあるが、おおくの人の目線では覚えられるのが日常である。その前提の違いからくるお互いの不信感は計り知れない。それが悲劇だと思うのだ。
もしかしたら、知人も、こういった日常の積み重ねによって不信感が重なり、知人の人間関係が悪くなってしまっていたのかもしれないと思った。

誤解を解くには、違いを分かって貰うしかない。
そして、違いを分かって貰おうという発想に至るには、自分の特殊さを自覚していないと始まらない。

私自身は、他人の感じ方を聞いて回り、比較することで自分だけの独特な感じ方を理解するようにした。
もしご自身の障害特性上の感覚と、他人の感覚を比較してない方がいらしたら、ぜひインタビューして回ってみてほしいと思う。
驚くような答えが返ってくるはずだし、自分の障害特性への理解も深まるはずだ。

注意したいのは、自分もそう、誰でもそう、などといった返しが返ってくるケースがあること。
そんな時は、実際に具体例をあげて話してみると良い。
私で言ったら、何でもない日常会話をするだけでも結構疲れたりする。
それをそのまま話しても、そうだよね、疲れるよね、と言われてしまう。疲れ具合が伝わっていないのだ。
なので、どれだけ疲れてしまうのか、その程度が伝わるようなエピソードも付け加えるようにする。例えば、会話した後30分くら無気力になってしまう、横にならないと作業が手につかないほど疲れてしまう、などだ。
そこまで話すと、いや流石にそこまでは疲れないけど…というような反応が返ってきたりして、ようやく聞きたかった他の人の疲れの程度を教えて貰えたりする。

もし、知人が、周囲には理解し難い特殊な性質を持っていることを理解し、それをお伝えすることの重要性を理解していたらどうか。
知人の障害特性を理解して貰えたら、覚え”よう”としない、と邪推されることはないだろう。
むしろ、まっとうな人なら、文章にして伝えるようにするなど、効果のある対策をとるように行動するはずだ。

もちろん、これは人間関係が悪化した要因かもしれない、という仮説の1つでしかない。でも、一応、彼に話してみようと思う。それによって、彼の人間関係における悩みが解消するなら何よりだし、自己理解も進むならそれに越したことはない。

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