真夜中は女優

真夜中は女優
そうでない女はいないだろう
愛情ゆえか献身ゆえか惰性ゆえか
理由は女の数だけあるけれども
その演技をいつどこで磨いたのかは
ぶ厚い恋の歴史書の中に書いてある
処女だったあの夜
どうすればいいのか何故だか全部分かった
知らないはずのことをすべて知っていた
どう振舞えばいいかどう声を漏らせばいいか
元来備わっていた演技力で
私は男を喜ばせることについて
素人だったことが一度もない
わざと初心なふりをしたり
娼婦のように誘っってみたり
バリエーションが無限にあることに
誰より私自身が驚いた
夜の帳が下りると女は皆女優たる自分を覚醒させる
男はそれに比べてなんて可愛い生きものだろう
正直で私たちを疑う事も知らず
必死に汗をかくいたいけな動物
だからそれに応えてあげる
快楽など微塵もなかったとしても
体は燃えているふりをする
真夜中の女優たち
今夜はおもちゃで遊ぼうかと囁いただけで
屹立したペニスをゆうるりと撫でながら
また私の舞台の幕が上がる

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