育毛剤

待ってなくていいって言ったのに
ネクタイを緩めながらあなたは言う
だって約束したじゃない
いつも一緒にご飯を食べようねって
入籍した日に約束したじゃない
ラーメン屋に寄って来たあなたは
一杯やったらしくそのまま横になって
イビキをかき始める
おなか空いたな
何も口にしていない
でも空っぽなのは胃袋じゃない
どんなに残業だろうが
どんなに遅くなろうが
美味しいねって笑いながらあなたとご飯が食べたかった
最近使い始めてる育毛剤
薄くなってくのはそこじゃないでしょ
冷め切ったハンバーグがテーブルの上で孤独死してる
あなたの好物
子どもみたいにはしゃいで食べてくれた記憶が蘇る
もう用無しなのね
犬のように待っていた自分が情けなくて
生ごみのバケツにぶちまけた
薄れてくのはそこじゃないでしょ
不毛地帯はどんどん広がって
あの日の約束も枯らす

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